46 テリヤキ
春はさくらテリたま
寮の部屋に戻った私を、レイスはあきれ顔で迎えた。
「何買ってきてるの?」
呆れられたのは、私が両手いっぱいに抱えている大荷物だ。
「主に調味料なんだけど、味噌とか醤油とか、学食の食事には使われてないでしょ」
料理は確かに美味しいのだけれど、お国柄なのか内容は洋食に近い。なぜかカレーはメニューにも載っていたが、味噌汁や醤油には、お会いできなかったので、あると確信することもなかった。
「ああ。確かに、生産量が低いだけではなく、野菜やフルーツで作った調味料が充分美味しいから、需要的にも供給的にも広まってないよね」
それで困るとも思えないけど。
当たり前みたいに付けたしたレイスは、非国民だと思う。
「そんなことないですとも!!!」
私の味方になってくれたのは……予想外だったけどとくに意外ではないかもしれない、部屋付の騎士、アンナ(前世はチキン)だった。
「王子もレイスも全然わかってないから諦めていたんですが、こんなところに同士がいたとは!!! テリヤキは正義ですよね!!」
は? テリヤキ?
「ハンバーガー屋にいけば迷わずテリヤキバーガーを注文する、これが日本人でありますよね!!!」
「あ、いや……」
私はエッグマフィンや月見バーガーの派閥に属しているとか、言いにくい雰囲気だ。
「アンナはテリヤキファンなんだ。ボクも王子もとても同意する気にはならないし、とても付き合っていられないから、醤油を取り寄せたりはしてないけど」
「騎士の給料で常備するには、醤油は高いでありますので! たまにしか食べられないであります!」
んー、
「じゃあテリヤキチキンでもする?」
なんとなく言った言葉に、アンナは瞳を輝かせる。
これなら……。
「鳥肉がないんだけど、手に入るかな?」
「大丈夫であります! 生徒はともかく騎士の多くは自炊をしておりますので! 私も生協で頼んだ肉が、まだ余っているでありますので!」
生協……。
まあ生活協同組合の略だから、固有名詞でもない……のか?
「えーと、私みそ汁も食べたいんだけど、ネギとかある?」
「乾燥わかめも常備してるであります!! みそ汁も自分、食べるの得意であります」
食べるの得意って……。
まあいちいち突っ込まないけど。
後は……。
「アンナは自炊だって言ってたけど、どこで料理してるの?」
「騎士舎にはキッチンがあるであります! でも……リオナさんを連れていくわけには行きませんね……」
アンナが目に見えて落ち込む。
いや、私は食べたいだけだから、料理はアンナに任せてもいいんだけど、という前に、レイスが苦笑した。
「この寮にも生徒用の調理場はあるよ。特別な日に特別な料理を食べたい人のためのものだけど、許可をとって上げるから、そこを使うといい」
おおう。権力とか言わなくても、そんな便利なものがあったのか。
「まあ、あまり利用者が増えたら困る程度の規模だから、一部の生徒にしか知らせてないんだ。リオナもアンナも、他言無用に頼むよ」
ああ、やっぱりちょっと権力だったと納得するも、こんなにスムーズに話が進んだのは、アンナがテリヤキファンだったおかげだと思って、テリヤキに少し感謝する私だった。
アンナはテリヤキファンで、リオナは目玉焼き系バーガーのファンです。




