45 帰還
「じゃ、後はお姫様のご希望の場所に案内しましょう、的な? どこか行きたいところとか、あったりする感じ」
ボアに聞かれて即答した。
「食料品店!」
ここまでの流れで、食文化が充分に充実していることはわかった。さらに、あのミラ(番長)の性格を考えれば、和食系統も自重せずに流通ルートを確保しているはず。
味噌や醤油や米や豆腐が、食料品店に売っていないはずがない。
「ちょっ、即答で食べ物とか食い気優先すぎじゃない? 服とかアクセサリーとか、女子力的なものはガン無視?」
「どうせ平日は制服だし、ほとんどの子が寮に籠もるような状況で、自分だけ着飾るとか虚しいだけだよ」
それよりは食生活の充実、絶対だ。
調理器具どうするの、とかないではないが、レイスに頼めばなんでもどうとでもなるという気がして仕方がない。
「それもそうかも? んじゃ、ちょっくら行ってみる?」
食料品店はここからさほど遠くはないらしい。徒歩の移動でたどり着いたのは……。
『ディーン商会』
はは……。
「まずはここが揃ってる感じ? 値段高めだけど、買えない値段ではない的な?」
「……ありがと」
『ディーン商会』ってどう考えても、ミラ関係だよね。ミラの名字、ディーンだったわけだし。
店内に入るとそれは確信に変わった。
味噌や醤油や米や豆腐、納豆、ウニ瓶、ちりめん山椒。
めざしにだし昆布に鰹節。
ミラの好物が、間違えることなく並んでいる。
肉や野菜といった新鮮食材はなかったけれど、その辺りまで買っていたらとても持ち帰れる量に収まらないし、学園に帰ってから、レイスのコネでなんとかした方が要領がいいだろう。
私は調味料関係を中心にゲットして、お買い物を終了した。
ほくほくだ。
「満足しちゃった感じ?」
「うん、満足しちゃった感じ」
「ほんじゃま、帰りますか」
私たちは学園行きの巡回馬車に乗って、街道を進み、あの坂を上って、学園に帰還した。
行きのようにあっという間というわけにはいかなかったが、日が暮れる前に帰ってこれたのだから、恩の字だろう。
私たちはここを出た時と同じように身分証明をして、外出名簿に名前があることを確認してもらってから、学園の中に戻った。
「今日はありがとう」
「ああ、オレも楽しかったみたいな? また行く感じ?」
「うんそうだね、蛇」
「…………えー、それここでバラしちゃう感じ?」
ボア(蛇)は不満げだ。
しかし最中、前世記憶の持ち主が喜ぶようなパン屋にピンポイントで案内したり、アリゲーターガーとか、この世界では名前も聞いたことがないような生物の名前をワッザと出したり、よりによってミラ(番長)関係の店に連れていったり、しらばっくれて欲しいにしては、分かってるアピールが酷すぎる。
「チッ」
私は軽く舌打ちだけして、それを返事とした。
「あっはっはー、お互い親友同士だから、しょーがないよねーみたいな」
「うん、親友というのだけは全否定させていただこう」
そうは言っても蛇と裏なくやり取りできるのは気が楽で、認めたくなくてもやっぱり一応不本意ながら、かけがえのない友達ではあるんだろうな、と諦めるのだった。
リオナが途中から猫かぶってなかったのは、いろいろバレバレなのがわかって、ばかばかしくなってきていたからのようです。




