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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第2章 初等部
43/59

42 身の上話

 ふう。


 少し気力が回復した私は、ついとあたりを見渡した。


 目の前に広がるのは、麦畑と少し離れたところに野菜畑、その向こうに見える丈高い並木は、街道脇の並木だろう。


 そこから北へ向かうと、わがクゼイン家の領地に向かうはずだ。


「あのサ……」


 うん?

 声を掛けられてボアを見上げると、ボアはニヤニヤ笑って、


「スカート超まくれてるよ。誘っちゃってる感じ」


 んな!?


 指摘されて確認するとたしかに、ひざ丈スカートがまくれて太ももがベロンと向きだしになっている。


「っ!」


 咄嗟に立ちあがって捲れをなおすが、どれほどの間私はあんな格好でへたっていたのか……。


「あれ、もういいの? 襲わなかったけど、がっかりしてない? ドンカン男のクソボケ、イヤンバカンって感じじゃない?」


 感じじゃないです。

 それで、襲うとかいう話がでてきたのか。


 チッ。

 だったらはっきりいえや、ゴラァ。


 ……なんてことは言わずに(もちろん舌うちもしてないよ)、


「教えてくれてありがとう。なんとか回復した」


 ウザイ言葉は全部スルーだ!


「それじゃ行こうか? あっちだよね?」


 歩き出す。


「ふふーん」


 ボアは鼻で流すように笑って、ついてきた。





 それから、10分ほど歩くと、見えていた並木の街道に着いた。

 街道の道はほぼまっすぐ延びていて、遠くには、こちらに向かう馬車の姿や、休んでいる旅人、遠ざかって行く荷馬車の姿も見えた。


「ねえ、レオナの家ってどっち? 遠かったりする?」


 ボアに聞かれて、頷いた。


「かなり辺境だよ。ここにくるのに馬車で二日ほどかかったし、学園のこともほとんど知らなかったしね」


 たぶんうちの領地の子供は、奨学制度なんてものがあることすら知らないんじゃないだろうか。


「ふぅん。じゃ、ちょっと御両親に挨拶を、ってわけにはいかないか。ザンネンザンネン」


 なんだそりゃ。


「近くても挨拶なんかする必要ないと……」


 そこまで言って、ふと気がついた。


「ボアは近所なんだよね。一旦家に帰るの?」


「あ、俺帰れるような家ないから」


 え?


 ボアが歩きだす。

 そして街道を横断しながら、続けた。


「母親は浮浪者だったし、死んだし、父親は誰かわからないし、町の人はよくしてくれたけど、犬猫みたいに人間ひとり軽く育てるとか無理だから、その場その場で手伝いとかして寝る場所貸してもらってたんだ」


 なんですと!


「まあ、寒い夜は泊めてくれる家もあったし、貸本屋の親父なんか無料で本を読ませてくれて、役所の人なんか、奨学試験を受けるための試験料を貸してくれたり、筆記用具も用意してくれたから、俺はたぶんツイている方だと思う」


「……大変だったんだね」


 レッツ自制心。

 私はツッコミたいのを自制心総動員で押しとどめた。


 ボアの話したことは、一見、けなげな苦労話に聞こえる。

 しかしボア……いや蛇が普通に話す時は、大抵嘘を織り交ぜて、悲劇の主人公を演じたかったりとか、ツマランことを考えている時なのだ。


 本当のことも言っているだろうが、普通に考えて、ボアに力を貸してくれた人の半数は、なんらかの秘密を握られて、強制された人だろう。


 世の中そんなにスイートじゃない。


「……まぁね」


 ボアはもっと何か欲しそうな顔をしたが、これ以上は過剰サービスだ。

 私はあっさり話題を変えた。


「ねえ、あんまりノンビリしてると、明るいうちに帰れないんじゃない。急ごう」


 そしてボアを追い抜く勢いで走りだす。

 ボアも走り出して、私たちは街道を横断し、王都への道を駆けて、王都のおひざ元の市街地にたどり着いた。

ちょっと不在にするので更新は23日までお休みします。


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