37 放課後
普通に予想のついたことだけれど、放課後、ユウシャが私の元にやってきた。
普通に予想のついたことなので、レイスとはすでに打ち合わせ済である。
それはいいんだが……
「おい、あれディーン先輩だろ? クゼインさんて何者なんだ!」
「マジかよ。超やべえ」
「イヤーン、ユウシャ様ぁ、こっち向いてぇ」
「オ、オレはまだ何も悪いことしてない、ですから、ほんとに!」
最後のはともかく、ユウシャはやっぱり有名人なようで、ユウシャに呼ばれて教室を出た私の背後では、ヒソヒソ話や、黄色い悲鳴が飛んでいた。
「ちょっといいだろうか?」
「ああー、はい」
覚悟を決めていた私は、素直に従うことにした。ふと気になって振り向くと、蛇は私たちの様子を、ニヤニヤ笑って眺めていた。
所変わって、学校裏の森の中。
私たちはそれぞれ飲み物を購入して、人目を避けるように切り株に腰かけた。
「昨日は、すまなかったな」
ユウシャが最初に言ったのは、不可解な一言。
「昨日?」
「いや、君がこの学校に来るということは母から聞いていたから、昨日のうちに挨拶をしようと思っていたのだが、野暮用が入ってな……」
ああ。たしかに昨日は野暮用で、グール王子に向かって剣を振り回してたよね。
というか、ユウシャはちょっと、軽々しく魔剣を使いすぎだと思う。
「昨日のうちに会っていれば、今日のようなことには……」
「待って。違うのよ」
私はユウシャの言葉を遮った。
「今日のことは、私と同室のレイスが、私のためにお膳立てしてくれたことなの」
私の言葉の意味を理解できずに片眉を上げるユウシャに、私は続けた。
「レイスは王子様の側仕えの家系の子らしくて、王子様に目をかけてもらっているらしいんだけど、あの……王子様っていろいろ問題あるんでしょう?」
「ああ。信じられないくらいにな」
ユウシャは吐き捨てるよう。
私は思わず、苦く笑って、
「だから、レイスが言うには敵も多いらしいの。それで、王子様の関係者である自分も目を付けられるだろうし、自分と仲よくしていたら、私も目を付けられるかもしれないと心配してくれて」
まるきり嘘というわけでもない。
「自分は王子様の関係者で、危害を加えれば明確なペナルティがあるから、滅多なことをしてくるものはいないけれど、そうじゃない私は何かされるかもしれないって」
というかまあ、あの犯罪者集団の一味と思われたら、平穏なんて程遠いだろう。
「だから私が安全でいるためには、王子様の庇護下にあるということを学校中に知らしめたほうがいい、ってそう言ってくれたの」
「リオナは騙されている!」
「どうして?」
「アイツは、グールはそんなマシな存在じゃない。アイツの庇護下になんか入ったら、何をされるか……」
「何をされるの?」
「う……だから、その……」
まあ、口に出すのは嫌だよね。
私はわかってはいるけれど、わかっていないふりをして、その上でフォローを入れる。
「王子様が素行に問題があるのはレイスから聞いて知ってる。でも王子様は、レイスにとても甘いらしいのよ」
これはうん、最初は半信半疑だったけど、今では結構確信している。
だって早朝の会話や、王子のクラスまで会いに行った時の、レイスの遠慮ない態度。王子に対してあんなのが許されるなんて、どう考えても特別だ。
「だから大丈夫」
自信たっぷりに言い切った私を、ユウシャはなんとも言えない表情で見つめていた。
ユウシャの名字、たぶんここで初めて出たと思うんですが、既出だったら変わっている可能性が……。後日チェックする予定です。




