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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第2章 初等部
35/59

34 その感情の色は緑(ボア視点)

ボア=コートの視点です。

 小学生の頃、うちの学校にはプリンスと称えられる男子がいた。


 そいつは成績優秀でスポーツも何をやらせても上手く、見た目も整っていて、立ち居振る舞いまで別格にスマートだった。


 女子の多くは彼に憧れ、男子のほとんどは、憧れながらも妬んだ。

 俺もそんな中の一人だ。


 アイツに会うまで俺は優秀な方だったから、少し天狗になっていた。それが、何をやっても敵わない相手に会って……。


 見返してやろうと頑張れるのは、精々1年くらいだ。


 その1年の間もアイツはきっと俺の存在なんかに気付きもせず、いや、それどころか、アイツとっては周りすべてがどうでもいいことのようで……。


 なぜアイツがあんなにクールでスマートなのか。

 1年アイツを目で追っていた俺には、その理由がわかった。


 アイツにとって俺たちのすべてである世界は、どうでもいいものだったんだ。


 だから感情が動くこともなく、いつでも最善を選択する。

 そんなヤツに敵うわけがない。

 俺がアイツを気にすること自体、いらぬ感情が発露だ。


 そして俺は諦めた。

 いろんなことが、虚しくなった。


 だけどあの時、俺は気付いたんだ。


 アイツが、何事もどうでもいいようにあしらっているアイツが、唯一執着する存在があるということ。

 アイツはそのためなら、他の何もかもを捨てるだろうということ。


 ある日の運動会、一人の少女が転んで、いつもはクールなアイツが、競技を無視して駆け付けた。

 そして周囲が茫然とする中、その少女をお姫様のように抱きあげて、いくら先生が任せろと言っても聞かず、自分で救急ブースに運んだ。


 男子は呆気に取られて、女子は助けられた少女を妬んだ。

 アイツは多くの女子に憧れられていたから、誰かの者になることが受け入れられるわけがなかった。


 俺は思った。

 その少女をアイツから奪ってやれば、俺はアイツに敗北を突きつけることができるんじゃないか、と。

 そしてそのための材料はすでに揃っている。


 アイツに嫉妬する男子たちと、アイツが大事にしている少女に嫉妬する女子たち。


 優れた人間は大変だ。何の落ち度もないのに、妬まれ恨まれる。


 俺は噂を操作することにした。

 アイツの耳に届かないように、女子たちがあの少女を苛めるように。

 あの少女に『姫』というあだ名をつけたのも俺だ。

 体育祭での出来事が、このあだ名のせいで風化せず、何度も話題にのぼる。


 その度に女子たちは彼女、『姫』に嫉妬するだろう。


 そしてそれとなく、俺は『姫』の友人の女『番長』に囁いた。


『あの子が苛められてるのはアイツが原因なんだよな? アイツ、それがわかってて、あの子の傍にずっといるのか? あの子がそれを望んでるならいいけど、女子は集団になると怖いし、なんか心配だな?』


 番長は姫を守ろうとしてはいたが、力で解決できない女子の陰惨ないじめに手を焼いていたから、自分が守れなくなることも考えたのだろう。


 そして姫は、残念なことに王子を必要とはしていなかった。


 俺の見えない場所で話は進み、中学に上がる前にひと悶着あったようで、中学に上がってすぐ、アイツは姫以外の彼女を作った。

 それが隠れ蓑であることは、アイツをずっと観察していた俺にはすぐわかったが、周りはそうでもないようだ。


 正直なところ、もっと決定的な亀裂が入ってくれてもよかったのだが、そこまで都合よくはいかないらしい。


 ただし、うれしいこともあった。

 俺と姫が同じクラスになって、アイツは別のクラスだった。


 なんという幸運。


 これで、俺がアイツから姫を奪ってやったら、アイツはどんな顔をするだろう。


 きっともう、俺を無視したりなんかできなくなるはずだ。


 俺は初対面から馴れ馴れしく、姫に話しかけた。

長くなったので、本日ここまで。

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