32 クラスメート
あれこれあったが、アンナが持って来てくれた朝食を頂いた後、私たちは登校した。
私とレイスは仲良しなので、一緒におしゃべりしながらの登校である。
「おはようございます、ゴルドバール様」
「おはようございます、レイス様」
一緒に登校していると、レイスが何人かの女生徒から挨拶される。
まだ顔見知りもいない初登校だよね? という疑問が顔に出てしまったのか、レイスが説明してくれた。
「君みたいな田舎者と違って僕のうちは王都にあるし、昨日も説明したようにゴルドバール家は特別だから、国王主催のパーティに招かれることも多いし、知り合いも多いんだよ」
なるほど。
……って。
「もしかしてずっと女装なの?」
挨拶してくる誰ひとりとして、女の恰好をしているレイスを不審に思うものはいない。これは、前々からレイスが女の恰好をしていた、ということではないだろうか。
「僕の家は王族の側仕え、言わば護衛の役目を担っているから、女子であってもドレスを着たりしないんだ。だから女装はしてないよ」
女装は……だね。
「大抵の場合、女性だと思わせておいた方が油断してくれるから、性別がはっきりする年齢になるまでは、男だと言いふらしたりしないんだ」
なんていうか、聞けば聞くほど、ゴルドバールって変な家だよね。
ここで、王立魔法学園に通う生徒のことを説明しよう。
この学校に通うのは貴族の子女と、裕福な家庭の子供、そして魔法の才ありと判断された優秀な子供が奨学制度で入学する。
庶民とはいえ、この学校に入学するような生徒は将来有望なので、大事に扱われるが、寮は追加金を払わない限り6人部屋なので、奨学制度で入った生徒は、ほとんどが6人部屋のようだ。
しかし、学習の方は、何よりも勉強の効率を重んじるため、ABCのクラス分けは、入学前に受けた試験の成績を元に分けられる。
つまり、貴族も、裕福な家の子も、才能溢れる庶民も、区別することなく、クラスメートとして隣の席に座ったりすることになるのだ。
しかも、優秀な者が奨学制度で入学する以上、優秀な者が集まるAクラスには、庶民が多いことになり、さらにそれが女子となると、賢い女が好まれる社会でもないので……、Aクラスに貴族の女の子は非常に少ない。
そんな状況の中、私はAクラスにいたりする。ミラのおかげでいい成績を残せたからだが、アウェー感がハンパない。
ちなみにレイスは、目立ちたくなかったので、無難なBクラスに入っていた。
うん、試験を受けた時の自分をしばいてやりたい。
万が一にでも落ちて、家から脱出できなくなった時のことを考えると、ついつい必死になってしまったわけだが、もっとちゃんと入学した後のことも考えるべきだった。
まあ別に、全体のトップにたつほど悪目立ちしたわけではないし、貴族がだからって冷たくされるとかもないんだけど……。
さっきも説明したように、奨学生のほとんどは6人部屋なのだ。
昨夜は寮の同室で一緒に寝て、この時点ですでにグループが出来ているのが当り前で、そこに割り込むには微妙に勇気を必要とする。
だからといって、ボッチというのもどうかと思うのだが、どうしようか……。
「なあ」
途方に暮れている私に、横ちょから声が掛けられた。
向くと、好奇心いっぱいの、煎茶色の瞳をした男の子。明るいオレンジがかった金髪と、健康的な肌の色とソバカスが、暖かい印象を与える。
「聞いてもいいよな。その髪どうしたんだ?」
ビシ!
「昨日の入学式では長かったよな? そういや知ってるか。昨日入学式の後、貴族の女子が髪を切られる事件があったんだと。でもその被害者の中に、お前いなかったよな?」
な、なななな……。
「話変わるけど、さっき、王族の番犬とも言われるゴルドバールの姫と一緒に登校したよな? それって事件と何か関係あったりする? あの事件を起こしたのが上級生のグール王子だって噂知ってる? これらの事柄は全部ひとつに繋がるんじゃね?」
その無駄にいい記憶力、その身を滅ぼしたいとしか思えない好奇心、口の軽さ、無責任な情報の流し方、
「あれ? 俺もしかしてスルドくね?」
その、いかにもアホな自己評価!
お前、絶対蛇だろーーーーーーー!!!
思わず叫びたくなるのを、全身全霊を持って押さえこんだ。
マブダチ登場です。




