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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第2章 初等部
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30 訪問者

 ヒュ。


 夢の中にあった私は、隣の部屋に気配を感じて、目覚めるとともに息を呑んだ。


 私の気配察知能力は、エルスのおかげで大変優秀だ。


 ちょっとしたことでも、すぐに覚醒して身構えることができないと、起きた瞬間にどんな悲劇が待っているかわからない。そんな生物は、自然とこの条件反射を手に入れるのだろう。


 それはともかく、今はすぐ傍にある危機に神経を集中させよう。


 この部屋は2人部屋でレイスと同室なのであるから、隣の応接室に気配がしても不思議はない気はするが、油断は禁物だ。


 私はベッドに耳を押し付けて、隣の物音を探った。


 スッ。スッ。

 という静かな足音。


 これはレイスだろうか。


 コトリ。

 お盆をテーブルに置いたような音がして、


 カチャリ。


「どうぞ」


「ああ」


 ドギュルルルルルルルル!!!!

 私の心臓が縮こまり、嫌な汗が吹き出した。


 会話。それもこの相手は……。


「王子、いくら貴方でも困ります。一応この女子寮は男子禁制なんですよ」


「お前がそれを言うか」


「王子と違って、僕は性別がバレるようなことをする必要がありませんから」


「……どうだかな」


 どうだかな?


「聞いたぞ。この部屋に女を連れ込んだらしいな」


 ヒッ。

 自分の話題が出て、思わず身を固くする。


「何のつもりだ?」


「…………友達になりました」


「ほう?」


「親友になりたいと思っています」


 まあたしかに、そんな話だったよね。


「おかしなことを言う。昨日お前は忙しかったはずだが、いつ知り合った?」


「昨日は……たくさんの女生徒と接触を持つことになりましたので」


「その中の一人ってことか?」


「はい、そうです」


「なら、俺好みの女なんだな?」


「はい」


 おおい! そこは否定しておこうよ。


「差し出せ」


「いやです」


 間髪いれず要求する王子はむしろ爽やかだが、それよりも即座に断ったレイスに驚いた。

 レイスがそうする動機はわかるけど、あの王子にそんな態度で大丈夫なの?


「俺に逆らうのか?」


「はい」


 これまた即答。

 でも王子が大きな動きを見せる気配はない。


「……どんな女なんだ?」


 その声はとても穏やかで……。


「すごく、変です。おそらく彼女は、自分のためだったら、何をしても、誰を犠牲にしてもいいと思っているクズです。あんなクズは初めて見ました」


「ほう」


「さらに、警戒心を全く解いていないクセに、まるで当たり前のように懐に滑り込んでくる不気味さを持っています。正直、気持ち悪いです」


 ううん、えーと、これはそう、きっと、王子の興味を逸らすために言ってるんだよね。

 所々思い当たらないこともないような気がしないでもないけど、それはきっと気のせいだ。気のせいにしておこう。


「そうとう気にいっているようだな」


 王子が楽しそうに笑う。

 って、さっきの言葉のどこに気にいってる要素が?


「わかった。昼にでも俺の元へ連れてこい」


「え……」


「その女も俺の傘下に入れてやる」


「それは……」


「俺から守りたいその女を、他に取られたのでは意味がなかろう?」


「そう……ですね」


「では俺は戻る」


 カツカツ、靴音がして、応接間の窓が開いた。

 そしてバサッと布がひるがえる音がする。


 はぁ。

 とりあえず、脅威は去ったようだ。


 今何時だろう?


 外は真っ暗だし、まだ夜は明けてないだろうな。


 今の話の流れでは、きっと問題は山積みだろうけれど、充分な休養を取らないと、思わぬ失敗をするものだ。


 私は日々の鍛錬で習得した寝付きの良さを生かして、即座に夢の中へ戻ることにした。

デレ?

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