26 ティータイム
待合室は調度品の揃った落ちついた空間で、中央にあるソファセットは、六人が腰掛けられるようになっていた。
重い木の色合いが落ちつく食器棚には、ガラス戸が使われており、部屋隅の高そうな花柄の花瓶には、ピンクの可愛らしい薔薇が飾られている。
そして運ばれてきたお茶は、明るいオレンジ……柑橘系果物の滴を落とされた紅茶の色だ。
「どうぞ! まずはお寛ぎください」
微妙にくつろぎにくくなりそうなハキハキした声でアンナにすすめられて、反応に困っているとレイスが吹き出した。
「アンナ、緊張しなくてもいいよ。彼女は同じ穴のムジナだ」
え? 同じ穴の……何?
「え、あ、ええ!?」
意味を計りかねている私とは違い、アンナ=モリエッティは驚きの声を上げる。
「え、で、でも、そんな……ほんとでありますか!?」
「うん。彼女は『姫』だよ」
「うっへええええええええ!!!」
アンナが殺人モンスターにでも会ったかのように、青ざめて飛び上がる。いや、それ、ひどいよ。
ちなみに『姫』というのは私の、黒歴史な前世のあだ名だ。
「声が大きい」
「う…ふぅ、申し訳ありませんであります。でででででででででも」
アンナは膝をガクガク震わせながら、キョロキョロと辺りを見回して。
どうでもいいけど、せっかくカッコイイ騎士服をきているのに、いろいろ台無しだ。
「大丈夫、ストーカーは今遠くに行っているらしい」
「そんな常識が通用すれば苦労はしないであります!」
「声が大きい」
「う……ふぅ」
うーん、わからん。
これまでの流れから、前世記憶所持者なのは間違いないと思うんだけど……。
「えーと、誰?」
レイスに聞くと、彼はコロコロと笑った。
「アンナは見張りだけで犯罪行為には加担してなかったから、君は会ったこともないと思うよ。今もそうだけど、前世は身体も弱かったし、もっと怖がりだったから」
見張り……?
「臆病で危険察知能力が高いから、こんなだけど、いろいろ重宝するんだ」
あー、そういえば、友達がたしか……。
「チキン?」
確認すると、アンナはビクリと硬直した。
代わりにレイスが、不快そうに聞き咎める。
「そんな非人道的なあだ名で呼ばれてもわからないんだけど?」
「あー、あはははははははは」
笑って誤魔化すことにした。
しかしレイスは誤魔化されてくれないようで、さらに目つきが鋭く危険になった。
「う、ごめん。本名知らないし、友達がそう呼んでたから」
「そう、それ」
それ?
「実行犯ばかり警戒して、そいつのことを忘れていた。どこにいるの? いや……」
レイスは考えて、言い直した。
「あの『蛇』と呼ばれた君の友達も、ストーカーに殺されてこの世界にいるの?」
蛇。
イブに囁いて、アダムとイブが楽園を追い出されるきっかけをつくった、悪魔の化身。
そういえば私の友達は、いつのまにか皆からそんな風に呼ばれていた、噂好きの男だった。
ようやく『蛇』の名前が出てきました




