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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第2章 初等部
19/59

18 ヒーロー

 …………びちゃ。

 うう。


 絶体絶命のピンチ。咄嗟の判断で死んだフリを決行した私は、予想した通りの尿の洗礼を受けて、眉をしかめないよう苦労した。


 あの時、アンモニア臭がして、恐怖による『おもらし』というクリーンヒットを誰かが飛ばしたのを悟って、自分もいち早く戦線離脱せねばならないと思った。


 とはいっても『おもらし』はもろ刃だ。

 相手の性癖によっては余計興奮されるし、匂いが雄を引きつける可能性もある。


 だから私の選択は失神だった。

 下手な演技でバレると面倒だが、扉からの光を背にする私の表情は逆光で隠れるであろうし、自分から汚物にダイブするのは結構勇気のいることなので、今のタイミングならバレにくいと判断したのだ。


 状況に焦ってテンパっていたにしては、少しは考えた行動と言えるだろう。


「ああ……う、お、お前なんなんだよ!!」


 傍にいた女の子の一人が、ひっくり返りそうな声で噛みついた。


「こ、こんなことして、ボクのお父様が知ったら、お前、た、ただじゃ済まないんだからな!」


 きゃー、素敵。最高! 犠牲打ありがとう! ありがとう!


「へえ、どう、ただじゃ済まないんだ?」


「うぉ……お、おまえなんか、おわりだ! お父様に斬られておしまいっ、だ、んだよ」


『だんだよ』、って……。緊張で舌が回ってないらしい。


「それはいいが、そんなことをしたらお前の親父も反逆罪で死ぬぜ?」


「なっ……」


「自己紹介がまだだったな。この国の第3王子グールだ。お前の親父が何者か知らないが、この国の国民は王を崇め、王のために生きる義務がある。王の子に不敬を働いて、ただで済むとは思わないほうがいい」


 詰んだ。

 ある程度予想はしてたけど、よりによってなんで『野獣』に権力がいくかな。

 いや、まだ『野獣』と決まったわけじゃないけど、でもこの感じ、たぶんそうでしょ。


「そん……な……」


 女の子は茫然自失だ。


「安心しろ。俺は寛大だ。自分為すべきことを察して、正しくできれば、先程の無礼は見逃してやろう」


「えぅ……なす……べき?」


 当然だが、女の子は何を要求されているか分からない。

 王子はにやりと笑って、


「奉仕しろ。そのつまらぬ言葉を吐いた口で」


「え、奉……?」


「来い」


 まだ意味が理解できないでいる女の子を呼び寄せて、跪かせ……、



 ……最低の行為が始まった。


 は……は……は……。

 これで3人目。

 途中でやめることは期待薄だ。

 このままでは、私の順番はいずれくる。


 とはいえ、私の場合、ヤラれた時点で人生がゲームオーバーになるのだから、諦めるという選択肢はない。

 最悪挑んで、王子殺しのお尋ね者になるほうがまだマシだ。


 ただ、やる以上確実に仕留めなければならないわけで……。


 私は息を殺し、奇襲に最適な、絶好のタイミングが来るのを待つことにした。


 しかし、


 ガキィィィィィxン!!!


 背後で金属が砕け散る音がする。


 さらに、ゴゴゴゴゴ……、と重い扉が動く音がして、


「そこまでだ!」


 ああ、この時ほど彼が輝いて見えたことはない。


 ユウシャ。

 死罪確定になる行為を一瞬の躊躇もなく行える、正義の人ユウシャ。


「こんな無法は、王が許しても俺の正義が許さん。覚悟しろ」

ヒーロー登場です。

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