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第25話 突入(後編)

第25話「突入」(後編)


階段を降りるにつれて。


音が聞こえてきた。


ドンッ!!


何かを殴る音。


ガンッ!!


金属音。


何人もの男たちの声。


「……いるな」


和臣が呟く。


「ああ」


久我先生が答えた。


そして。


B1Fへ続く扉の前。


俺たちは立ち止まった。


――ザザッ。


『その扉で合ってるよ』


みつきの声が無線機から聞こえる。


『そこを抜ければ訓練ホール。地下2階へ続く扉は、その奥にあるから』


「了解」


『みんな、気をつけてね!』


「この先だな」


和臣が指を鳴らす。


パキッ。


ポキッ。


「いっちょ暴れてやるか」


「油断するなよ」


「分かってるって」


その横。


透花が右手に電撃警棒を構える。


――バチッ。


そして左手。


淡い光が灯った。


「朔」


「ん?」


「《反転》お願い」


「お……おう」


俺は透花へ手を向ける。


「反転」


ヴゥゥゥゥゥン――。


淡い光が。


ゆっくりと色を変えていく。


濃い紫の光。


《治癒》の反転。


《罹患》。


「でっ、出たぁ……!」


和臣が露骨に一歩引いた。


「お前、やる気満々じゃねぇか」


「ここまで来た以上、私だってできることはやるわ」


透花は紫色に光る左手を見る。


「あまり戦闘は好きじゃないけど」


「戦闘苦手な奴の形じゃねぇだろ」


「うるさいわね」


透花が左手を和臣へ向けた。


「……あんたに触れてやってもいいのよ?」


「すみませんでした」


和臣が秒で謝る。


久我先生が扉へ手を掛ける。


「無駄話はそこまでだ」


「そろそろ突入するぞ」


扉が開いた。


◇


――B1F。


広大な訓練ホール。


そこにいた35人の戦闘員が。


一斉にこちらを見た。


「侵入者だ!!」


次の瞬間。


銃口が一斉にこちらへ向く。


「危ないっ!」


鈴音が前へ飛び出す。


両手を広げた。


「《防壁》!」


透明なドームが。


俺たち六人を包み込む。


直後。


ダダダダダダダダダッ!!


一斉射撃。


キンッ!


キンッ!


キンッ!


キンッキンッキンッ!!


無数の銃弾が透明な防壁に弾かれる。


「鈴音!」


「大丈夫だよぉ!」


その横。


紬が戦闘員たちへ両手を向けた。


「援護します」


ふわり。


戦闘員たちが手にしていた銃が浮き始める。


「武器よ浮け〜……」


さらに。


「えいっ!」


グンッ!!


「うおっ!?」


「なんだ!?」


銃。


ライフル。


マシンガン。


次々と空中へ浮かび上がる。


中には。


武器を握ったまま、その身体ごと持ち上げられる者までいた。


「わわっ!?」


「なんだこれ!?」


二メートル。


三メートル。


「能力解除」


ドサッ!!


ドゴッ!!


「ガハッ!」


武器ごと浮かんでいた男たちが、床へ叩きつけられる。


「みんな、今です!」


「やるじゃねぇか、紬!」


和臣が飛び出す。


ボォォォッ!!


炎の噴射。


「うわぁぁぁっ!!」


数人がまとめて吹き飛ばされた。


久我先生も前へ出る。


「《固定》」


一人の足が止まる。


ドッ!!


別の男が振り下ろした武器を固定。


そのまま懐へ入り込む。


ドゴッ!!


次々と。


無駄のない動きで戦闘員を沈めていく。


そして。


その少し離れた場所。


――バチッ!!


「ぐっ!」


透花が電撃警棒を一人へ叩き込む。


背後。


「透花! 後ろだ!」


男が殴りかかる。


透花が振り向きざまに。


ペシッ。


紫に光る左手が。


男の腕へ軽く触れた。


「……え?」


ガクッ。


「何だ……? 力が入らない……?」


そのまま倒れる。


さらに一人。


ペシッ。


「な、なんだ……真っ直ぐ立てねぇ……!」


また一人。


バチッ!!


そして。


ペシッ。


ペシペシッ。


バチッ!!


ペシッ。


電撃警棒と罹患の手の二刀流で、向かってくる戦闘員を次々と倒していく。


「…………」


俺は戦いながら、思わず透花を見る。


(あれ……?)


電撃警棒。


紫色に光る罹患の手。


次々に倒れていく戦闘員。


(透花ってヒーラーだよな?)


その時。


一人の男が透花の前で後ずさった。


「く……来るな……!」


透花が微笑む。


紫色に光る罹患の手を差し出した。


「ねぇ」


一歩。


「私と握手でもする?」


「ひっ……」


もう一歩。


「ひいいいいっ!!」


ペシッ。


「何だ……? 急に気持ち悪――」


「オェェェェェェェッッ!!」


バタッ。


「…………」


遠くでそれを見ていた和臣の顔が引きつる。


(……敵に回したくねぇな、こいつ)


その頃。


鈴音も数人の戦闘員に囲まれていた。


透明な防壁を張ったまま。


「朔くん!」


「ん?」


「この前みたいに――」


鈴音がニコッと笑う。


「ドォォォォォンってやりたい」


「……よし」


俺も笑った。


「やるか!」


鈴音へ手を向ける。


「反転!」


ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥン――!!


鈴音を包んでいた透明な防壁が。


青白い波動へ変わっていく。


「ウルトラスーパースペシャルミラクルギャラクシーハイパーアルティメット………」


ギュンギュンギュンギュンギュン――!!


青白い波動が。


鈴音を中心に激しく収束していく。


そして――。


「全方位ドォォォォォン!!」


ドォォォォォォォォォォォォォォン!!


「うわぁぁぁぁぁっ!!」


反転された防壁から。


全方位へ青白い光の波動が弾け飛ぶ。


鈴音を囲んでいた戦闘員たちが。


まとめて吹き飛ばされた。


「ん〜〜」


鈴音が満足そうに頬へ手を当てる。


「やっぱり気持ちいい〜」


「快感覚えるなよ……」


その時。


――パンッ!!


「ぐっ!?」


左腕に熱が走った。


銃弾が掠めた。


「朔!?」


透花がこちらを見る。


「大丈夫だ!」


左腕を見る。


血が滲んでいる。


「掠っただけだ。これくらいなんてこと――」


「ダメ」


透花が即座に俺の前へ来た。


「治してあげるから、反転解いて」


「……分かった」


手を下ろす。


「反転解除」


透花の左手を覆っていた紫色の光が消える。


代わりに。


いつもの淡い光。


「動かないで」


傷へ手を当てる。


じんわりと。


痛みが消えていく。


その向こう。


俺を撃った男が再び銃を構えた。


「オラァ!!」


ゴウゥッ!!


「ぎゃああ!!」


和臣が放った火球が、男を吹き飛ばした。


「治療中の奴狙ってんじゃねぇ!!」


「助かった!」


「貸し一つな!」


「はいはい!」


それから。


数分。


最後の一人が倒れた。


静寂。


「ハァ……ハァ……」


和臣が肩で息をする。


「全部……片付いたな」


「ああ」


俺も息を整える。


「さすがに多かったな……」


「疲れたぁ……」


鈴音がその場にしゃがみ込む。


「私も疲れました……」


紬も大きく息を吐いた。


「怪我してる人、いる?」


透花が周囲を見る。


「俺は平気だ」


「和臣」


「あ?」


透花の視線が、和臣の右手へ向く。


「……何よ、その傷」


「こんなの擦り傷程度――」


「ダメ」


「え?」


「ほら。傷見せなさい」


「今、反転してないよな?」


「してないわよっ!」


「…………」


和臣が黙って右手を差し出した。


透花が傷へ手を当てる。


淡い光。


「……はい」


傷が消える。


「ありがとよ」


「最初から素直に見せなさいよ」


その横。


久我先生だけは、ほとんど息を乱していなかった。


「まだ終わりじゃない」


全員が久我先生を見る。


「少し休め」


そして。


地下2階へ続く扉へ視線を向けた。


「次は――」


「あの男のいる階だ」


――ザザッ。


『B1F制圧確認』


澪の声。


『みんな、大丈夫?』


俺は辺りを見回した。


和臣。


久我先生。


鈴音。


紬。


透花。


全員いる。


「ああ」


無線機へ答える。


「さすがに疲れてるけど、みんな無事だ」


「少し休んだら、下の階へ突入する」


『分かった』


澪が少し安堵したように答える。


『無理しないで。十分休んでから行って』


「了解」


通信が切れる。


俺は壁へ背を預けた。


その先。


地下2階には――。


荒城岳を殺した男がいる。


まだ。


能力すら分からない相手。


それでも。


ここまで来た。


俺は仲間たちを見る。


そして。


地下へ続く扉を見た。


次は――。


奴だ。


第25話 後編 END

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