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㉞「Cold Spring」
車の窓に視線を移した
冷たい山際に掛かる靄
深い緑の木々 同じ色のはずなのに
何故か少し 靄を被った山が優しくに見えた
季節は移り変わるのに
まだ何も変わらない日々
穏やかな時は来るけど まだ寒さは残る
スピーカーから流れる音楽は
私の想いを素通りして行く
まだ行ってしまわないで
焼け付く陽射しに身を焦がされる前に
もっと近くに居てと誘うかのように
終ったはずの冬の白い涙が降り積もる
帰り道 駅の階段をゆっくり降りる
平日の代わり映えのない景色
道端の幾つもの塵 有害な煙が頬触れる
何処か不条理だね 掲示板の中 その理想図がこの目を脅かす
もう行ってしまうだろうか
凍て付く鉄路に吸い込まれる 儚い泡沫の夢
ずっとそこに居て構わないのに
初めから存在しないかのように 僅かに陰を零す
それでもその陰さえ静かに姿を消してゆく
人の温かさにはちゃんと触れれたのだろうか
まだ行ってしまわないで
焼け付く陽射しに身を焦がされる前に
もっと近くに居てと誘うかのように
終ったはずの寒波の鍵爪が背中を食い止める
立ち去ったはずの去年の冬の涙がまだ降り積もる




