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第二十七、五話「瞳の中だけの岐路」
「…ここに来るのは最後だと…いいな」
実家に帰ってきた私、新田芽ひとみは、窓が天井よりも遠くなってしまった部屋で、クローゼットの中をただ静かに覗き込んでいた。
「……」
今まで、ずっと大切にしていた私物。
……いや、捨てることを考える余裕すらない日々に流されて、流されて、ここまで漂ったただ残留物。
「……」
海の藻屑となんら変わりはないのかも…しれない。
「必要なものは…もう、ないかな」
「……」
ガタガタ、ガタガタ。
早く、去ろうと思ったのに…
「……」
この教科書類の山を戻したら、今度こそ行こ。
どうせここにはなにもない…
「……」
「懐かしいな、これ」
きれいに見開かれた英語の教科書の一ページ。
愛、米、ミー、マイン。
「愛と米(食事)は私を私だけのものにする、か。」
ばかばかしいな~、この覚え方。
愛と食事がって、世界平和でも考えてたのかな、この時期の私。
「……」
「ふふふ」
この教科書も持って行こ。
「……」
墓まで一緒に添い遂げますよ、教科書さん。
「レッツラゴー」
なんだか、気分もいい気がするし、今日は金欠だけど、あれいきます。そうそうあれあれ、
グキッ。
「痛い痛い、本当に…」
ばかなことをして、へまをするのは昔も今もたいして変わっていない私を、俯瞰視点の私がけなすことがちょっぴり聞こえた。




