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そして僕らは楽園で出会った。  作者: 北上 柊助


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第二章‐夜中の夕焼け‐【第八話】

 暖かな陽光が目蓋へと差し込む。

 耳障りなカーテンレールの音が耳元へ流れ込む。


「うぅ」


 きっともう、そんな時間なのだろうと身体が不意に寝返りを打つ。


「いつまで寝てるつもりよー、ソイルー」

「うるさぁい。母さん」

「うるさいって、そうやって学校に遅刻したのはアンタでしょ? まーた二の舞になるわよ」

「うーん……」

「はぁ。せっかくソフィアちゃんが待ってるのに」

「………………え!?」


 その名前に身体が飛び起きた。


「先輩、来てくれたの?!」

「約束したんでしょう、昨日。夕飯の時に言ってたじゃない?」

「いやでも、冗談のつもりで言ってるのかと────」

「いいから起きる」

「あっ、はい!」


 焦って部屋を飛び出した僕は、真っ先に洗面所へと向かった。その道中、その様を見たのが先輩では無く、妹で本当に良かった。


「何焦ってるのー?」

「ふるひゃい! ほにかくいほいでるの!」


 歯を磨きながら妹の質問へ答える。


「そうそう。さっきソフィアお姉ちゃん来てたよー!」

「わはっへる!」


 歯磨きを済ませた後、早足で居間へと向かう。きっと先輩は居間で待機してくれているだろうが、着替える為の制服が居間に置いてある故、先輩へパジャマ姿を見せてしまうことに恥を忍んで、致し方なく、僕はリビングへと突入した。


「……あっ、起きたのだな。ソイル」

「先輩! 来るなら来るって行ってくださいよぉ!」

「よもや、昨日の家に来る話しを、冗談だと思っていたのか?」

「そりゃそうですよ! 先輩、あんまり友達の家に行きたがらないのに、僕の家に行くって言うもんだから……!」

「それは……思われても仕方がないが。しかし、オディギアちゃんにも、顔を合わせたくてな。つい来てしまった」


 いくら母さんや妹が居るからとは言え、『つい』で男の家に来るのはいかがなものかとツッコミたくなったが、先輩の事だ。なんら違和感すら覚えていないのだろう。


「悪かったわね、ソフィアちゃん。ソイルが寝坊助で」

「いいえ、バチェラさん。寝起きのソイルも、存外に悪いものでは無かったからな」

「どういう意味です、それ」

「さぁな、どう捉えるもソイルに委ねるとしよう」


 突然にして投げやりにされた回答に、僕は溜め息を吐きながらも、制服を取ってはドレッシングルームへと向かった。

 部屋はカーテンで閉ざされていて真っ暗で、熱が籠もっているのか暑さすら覚える。カーテンと一緒に窓を開けようと、部屋奥に一つだけあるカーテンへと近付く。


「ん? あれ、開けられない……」


 カーテンレールに接着剤を付けられた如く、カーテンはびくともしない。


「オディギアの奴が悪戯でもしたか」


 カーテンを無視して、窓を先に開けようとするが、こちらも同様だ。

 ……いいや、そもそも。ここの窓は開けたところで、向こう側に建物が建っているために風が吹き込むどころか日光すら射し込まないのだった。


「どうせ、仕方ないっか」


 ドレッシングルームの扉を閉めて、制服へと袖を通していき、最後にスラックスを履いた────その時だった。

 

「いてっ!?」


 真っ暗な部屋で何か硬い物を踏んだらしい。


「いてててて」


 足裏を押さえながら、何を踏んだのか確認する。

 ───そこには。

 左手に包帯を巻いて。擦り減った靴を履いていて。

 まるで死んでいるのかのように目を瞑って、壁にもたれかかっているメディカロイドが居た。

 その様は、まるで投げ棄てられたかのようだ。

 家にアンドロイドなど在ったかと、ふと疑問に思うが……そんな事は大した問題では無い。今すぐ、学校に向かわなければ、再び遅刻してしまう。加えて、先輩も待っているのだ。


「よし!」


 着替え終わるままに、ドレッシングルームを後にしようとのノブへと手をかける。


『────ん』

「なんだ?」


 何か声が聞こえた気がした。しかし、この部屋には僕しか居ないはずだ。何だかゾクりとして早くリビングへ行こうと扉を開けた。


「……あれ」


 起きてから室温の変化を感じて居なかったからか、今にして気付いた。

 この部屋以外から通ずる空気が、やけに冷たかったのだ。それも凍えそうなくらいに。だが、見るからに日はきっかりと射し込んでいる。


「風邪でも引いたかな」


 廊下へと足を跨ぐ。

『─願──す……っ! 死なないでっ……!』


 またもや、どこからともなく声が響いてきた。


「っ!」


 しかし、まるで本能がその声主を理解しているかのように、僕の身体は咄嗟に後ろへと振り返る。

 僕の視界、その中央に映ったのは壊れかけたアンドロイドだった。

 そのメディカロイドは何も言わない。


「あれ……なんで僕は、知っている。君が、メディカロイドだと言う事を」


 そうか、僕は理解しているのだろう。

 恐らくはここが────運命のターニングポイントであると言う事を。

 そうだ。


「病院……。君を連れて行かないと」


 ありもするはずの無い使命感が頭を走る。


『分かり……た。事……は……が目覚め……ら聞……とにします。…………らどうか、まだ死なないでください……!』


 カノジョが、僕を連れ戻そうとしている。

 だけど、戻るべき場所、それがはっきりしない。


「君の、見たいものがある世界だろう? ソイル」


 リビングのドアが開いていた。そこには、ソフィア先輩が立っている。


「でもソフィア先輩、僕、見れましたよ」

「それが全てか? 100ある1を見ただけのはずだぞ、ソイル」


『ソ……さん! ……少し、辛抱…………さいっ! あとちょっと……から!』


 その声が、薄っすらと聞き覚えのあるものに変わっていっている気がした。


「そうだアンタ。約束はどうしたのよ? あのコ、泣かしてないでしょうね?」


 先程、先輩の立っていた位置にバチェラが立っている。


「あぁ……そうだ。僕は何にも……約束を────」

「果たしてないとか言わないでよね。全力で生きろって、自分のしたいことをしなさいって、言ったじゃない!」


『そうですか…………が……不安………………ね』


 カノジョが不安を感じている?

 アンドロイドであるカノジョが?

 いいや、例えカノジョが人であろうとアンドロイドであろうと、共に歩くと決めた仲間に先逝かれたとなれば、それは悲しくて、不安になって当然のはずだ。


「……メディ。ごめん」


 不意に発した名前、それでようやく思い出した。このメディカロイドが何者なのか、僕の居るべき場所がどこなのか、僕のやるべき事を。


「ごめんじゃなくて! 『ありがとう』の方が良いよー! ソイル!」


 先輩と代わるようにバチェラが立っていたさっきのように、リビングのドアの先にオディギアが立っている。


「────そうだな…………違うな。ありがとうか、伝えるなら」

「うん! 絶対にその方が良いよっ!」


 一分間、目を瞑る。

 25秒、先輩が言う。


「君を……本当に羨ましく思うよ。そんな君は、私の誇りだな」


 25秒、バチェラが言う。


「ただ全力で生きて…………自分のしたいことを………………して」


 10秒、オディギアが言う。


「うん! ずっと一緒が良い!」


 目を開けて、ドレッシングルームへと足を向ける。

 振り向けば、死んだように壁にもたれかかっていたはずメディが、いつの間にか立ち上がってはこちらへと手を差し伸ばしていた。

 そうして、メディが言う。


「貴方が生きてくれなきゃ……私にも、分からない事があるみたいです。だから……絶対に────死なせませんから!」


 そうだ……。僕はまだ、死ねない。死んでたまるものか。

 くすんだ天蓋越しに見つめていた、あの青空と星空。それを一目見ただけで……そう、見た『だけ』で終わるのなんて認めない。

 この世界にはまだまだ僕の知らない、シャングリラからは見えなかった景色が広がっているはずなんだ。

 それを────

 その全てを────

 肌で感じるまでは──────


◆ ◆ ◆


「っ!!」


 身体を急激に起こしたせいか、胸の奥には痛みが広がった。


「ここは……」


 辺りを見渡すと、薄汚れたシーツの敷かれたベッドが複数置いてあり、壁や天井は住宅と呼ぶには余りにも質素だ。その様相から、ここがどんな場所なのか、ある程度の予想はできた。それもこれも、この廃都市の建造物の多くが、シャングリラで見てきた建造物に近かったからだろう。


「……あっ」


 病室の入り口、そこにはメディが立っていた。

 何やらこちらを見つめては、口を開けたまま静止したかと思えば、頭を少し振ってからこちらへと歩み寄ってきた。


「えっと、メディ────どれくらい経った?」


 外から射し込む光はまだ月光であった。長い時間が経ってはいないのは分かる。


「私も倒れていた時間があるので、正確には分かりませんが……おおよそ30分程度────じゃなくて!」


 メディは僕の両肩に手を置いて、こちらを見つめてくる。


「お身体、どこかに違和感は感じませんか?」

「まぁ、胸が苦しいのと……身体の随所がぼちぼち痛い。けど、そんなの今は大した問題じゃなくて────」

「そんなに、カイさんらが心配ですか?」

「当たり前だよ。僕の命の恩人なんだぞ」

「私も外の状況は屋上から確認しました。それを理解した上で、敢えて言いますが……私は、彼へ助力するの事を得策ではないと考えます」

「カイさんは、僕らを逃がす為に囮になったんだ……それなのに僕らが────」

「駄目なものは駄目なんですっ!!」

「っ?!」

 

 メディはまるで、本当の感情を押し殺す人間のように、そう言った。更にそれを示すように、メディは目を瞑り、声は大きく張られていた。


「…………すみません。私……は、ソイルさんが、私の知らない間に倒れてしまっていたのに対して……きっと『不安』と呼ばれるそれを、感じていたんです」

「メディ。僕は、カイさんだけを心配しているわけじゃないんだ」

「オディギアさんですね。彼女は……?」

「あぁ、変わり果てたよ。向こうで土煙を上げている『アレ』に」

「そんな────いえ、そう、なんですね」


 オディギアをあんなに可愛がっていたはずのメディが、僕を疑ったり、否定したりするような発言をしなかった。

 オディギアの変容が根拠の分からぬものであったとしても、同郷の僕の言葉だからと呑み込んだのだろう。

 外の世界では何が起こるか分からない、そう認識していたカノジョだからこそ出来る賢い判断なのだ。


「僕は、オディギアに向き合えず逃げた……。でも例え、ああなるのが決まっていた事だとしても、オディギアを永眠(ねむ)らせてあげるのが、旅を共にするか判断しようとした僕らの責任だと思うんだ」

「その責任には大きく賛成します。ですが、ここはしっかりと取捨選択をするべきです」

「メディ、カイさんとの取引を忘れたわけじゃないだろう? あの人が居れば、食料や水だって手に入るんだ。彼を助けるのは、きっと不利益な事だけじゃないと思うよ。なんなら、借りだって作れるかも」

「そうじゃないんです。私は、ソイルさんに────」


 メディがそう言いかけて、病院が揺れる。恐らくは、未だにカイさんが戦闘をしている証左だ。


「もし、もしも彼を助けるとして、(すべ)は……あるんですか? なければ、やはり逃げるべきです」

「……それは────」


 はっきり言って、カイさんを助けると言いながら、術は何一つ無い。否、思い付いたとて、命のリスクを背負う物だ。メディに到底提案出来るものなどでは無い。

 しかし────


「きっと、術が有ろうと無かろうと、キミを泣かしたりなんかしたら、僕はバチェラに怒られてしまうんだろうけど……。それ以前に、僕はしたんだ。バチェラと約束を」


 その僕の言葉に、メディもバチェラを思い浮かべたのか、目を大きく見開いた後に俯く。


「それは……ソイルさんにとって、『全力で生きる事』で、『自分のやりたい事』に繋がるんですか?」

「あぁ、胸を張ってそうだって言える」


 暫くの沈黙が病院を包む。だがしかし、相も変わらずに振動は響き渡るばかりだ。それが僕に、多少の焦りを植え付ける。

 かと言って、この焦りに身を任せて動いてしまえば、今後に旅を続けていく僕らの関係にヒビを入れかねない。しっかりと、自分へ冷静になるよう言い聞かせながら、メディの口が開くのを待った。


「分かりました……。それが本当にソイルさんのやりたい事で、そして私の協力が必要不可欠な術であるのなら、私もそれに賛成します。但し、『私の協力が必要不可欠』である必要がありますから、私を除けた助力なら賛成しませんからね……!」

「分かった」


 一つ返事をして身体を起こす。胸には未だに異物感が残るが、気にしてはいられない。

 それと、バチェラを説得の出汁にした事へ罪悪感はあるが、天国のバチェラへは後で謝るとしよう。


「んっ……と。ケホッ!」

「あっ……!」

「なに?」

「……っ。いえ、何でもありません」


 軽くを息を切らして起き上がった僕を、メディは心配するように声を漏らす。そんなカノジョを尻目にして、僕は屋上へと向かう。

 正直、階段を上るだけでも若干身体にキツかったが辛抱だ。


「チャンスだな」


 上りきった先で、カイさんが進んだ北方面を見やる。

 土煙が舞い上がる居住区、その中に見覚えある巨躯の影が見えた。しかし、その全容が見えぬ程土煙は充満しており、影は乱雑に廃屋を破壊している。


「あれが……オディギアさんなんですね」

「『だった』だよ。僕らの知ってるオディギアと、あの怪物は別物だ」

 怪物が暴れ、再び土煙が巻き上がった。

 ────ふと、そこで疑問が生まれた。


「ケホッ! しかしアイツ、なんであんなにも『乱雑』に破壊してるんだ?」


 奴は、先程までカイさんを追いかけていた。もしもその追いかけっこが続いているならば、もっと集中的に攻撃していても良いはずだ。


「怪物がどのようにして私達を認識しているのか分かりませんが、カイさんを見失ったからではないですか?」

「見失った、か……。────そうかアイツ。『見えて』ないんだ」

「え? どうしてそう思ったんです?」

「アイツが『見て』僕らを判断しているのなら、土煙で見えなくなって探しにくくなる無粋な行動しないはずだ」

「見失ったからこそ、本能的に破壊しているのではないですか?」

「アイツには少なからず、『知能』がある。アイツから逃げている時に感じたんだ。そんな知能があるのに、自分の視界を塞ぐような事しないと思う」


 仮に視覚でこちらを判断できていなかったとして、何でこちらを判断しているのだろう。

 ────真っ先に上がるとすれば聴覚。聴覚に優れているのならば、こちらを執拗に追いかけて来られたのも、銃声を出していたカイさんを狙ったのにも納得がいく。

 だが一度、ビル群から距離を離せたのにも関わらず、奴はこちらを追いかけて来られていた。

 ────まさか、嗅覚などではあるまい。

 ……いいや。でも、もしもそうならば、銃の硝煙臭は明らか僕の持っていたハンドガンよりも、カイさんのライフルの方が強いだろう。

 カイさんだけを追いかけていった理由としては考えられなくもない。


「何か、閃きました?」

「えっ?」

「いいえ、ハッとしていた気がしたので」

「そんなにまじまじと僕を見ている暇があるなら、一緒にカイさんを助ける方法を考えてよ」

「んなっ……! 別に、ソイルさんの顔を見ていただけではありませんよ」

「じゃあ何かしら閃いた?」

「一応、あの怪物を倒す方法ぐらいは」

「どんな方法?」

「私がバーッと行って、ソイルさんのその銃でバンバンって撃って────」

「……何も考えてない事は分かった。アイツ、銃弾の一つや二つどころか、五十発あっても怪しいぐらいにはタフいよ」

「そう……なんですね。考え直します……」


 そうだ、奴には銃弾が通らなかった。通ったとしても一つの触手を破壊するのに二発の、それもライフルの銃弾を要したのだ。

 一先ずは奴が嗅覚と聴覚でこちらを判断しているとして、次は奴の弱点を考える必要がある。


「アイツの弱点────」


 銃が効かないのなら、何で斃せるというのだろう。銃はシャングリラの中でも最も優れた武器であった。

 それを超える武器があれば、可能なのだろうが……少なくとも、カイさんがそんな物を身に着けていたようには思えなかった。


「火、はどうでしょうか」

「火……」


 確かに、文字通りの火達磨(ひだるま)にしてやれば息絶えるだろうか。

 火は人間どころでなく、植物やアンドロイドでさえ破壊できてしまうのだ。瞬殺は出来なくとも、奴を撃破するには十分な方法である気がする。


「仮に火で殺るとしよう。どうやってアイツに火を付ける? 単に燃やすだけじゃ駄目だと思うから、全身に燃え広がらせないと」

「それこそ、私が燃料を奴にかけるのでどうでしょうか」

「いくらメディが人間よりかは機敏に動けるからって、それは危険過ぎるよ。それに、そんな大量の燃料、この都市に残ってる訳無いし」

「うーん、だとするなら……」

 

 燃料。奴を燃やす程の燃料────


「あっ」

「また何か閃きました?」

「……ある、あそこに」


 僕は『そこ』に指を指す。


「怪物の居る方向ですが。何か?」

「そう、だからこそちょうど良いんだ。確かあの『館』、木造だったはずだ」

「館…………ですか」


 幸運な事にも、怪物は館のある位置を通り過ぎていて、その館は破壊されずに済んでいた。


「確かにあのサイズのお館なら、壊れ切った残骸や、小さい家屋よりかは燃えた際の火種としてちょうど良さそうですね」


 火で奴を仕留める事が確定的になる目前、更なる問題がそびえ立つ。


「館を燃やすとして、火種自体を燃え広がらせるのに時間がかかるな……」

「それこそ、館を燃やすだけなら少量の燃料で足りますよ」

「燃料って、何を使うのさ」

「ここは病院です。医薬品管理室、無数のアルコールがありましたよ」

「……決まりだね」


 ここまで決まれば、次は誰が館に火を付け、そこまで怪物を誘導するかだ。ここは胸を張って、「僕が囮役をやろう」なんて言えれば良いものだが、如何せん身体が限界を迎えてるのを理解できないほど、僕は馬鹿でもなければ無謀でもない。


「メディ、全体の見通しが思い付いた。とってもシンプルだけど、当然、キミがいないと成り立たない計画だ」

「お願いします」

「まず、心許ないけれど……このハンドガンを用いて、館へと怪物を誘導する。その時にカイさんと一緒に誘導できればめっけもんだね」

「はい」

「僕はその間、館にアルコールとか薬品を撒いてから火を放つ」

「心配です。そもそも危険だと分かっている事を、覚悟してやっているはずなので、その覚悟をわざわざ踏みにじりたくはないのですが……」

「大丈夫だよ。ただアルコールとかを撒きに撒いて、怪物が近寄ってきたら点火するだけの簡単な作業だし」


 口ではそう言うものの、僕の役割も重々危険であるのは予想できる。

 そもそも、奴が嗅覚を用いているのなら、物の焼ける臭いなどというものをすんなりと把握できてもおかしくはない。当然、その臭いの発生源からは距離を取ろうとするだろう。

 つまりは、点火タイミングを怪物が館に近付いたギリギリに合わせなければいけない。だが、怪物と館の距離が近くなければならないのなら、すんなりと館から脱出できたとしても、脱出したすぐそこに怪物が居るという状況を切り抜けなければならないのだ。

 しかし、メディがその可能性に気付くまでは敢えて言わないでおく。

 ……きっと、バレた時には本当に怒られるのだろうが、怒られる時というのは僕が生きているうちということだ。速戦即決が必要な今の場で、考え直す時間が発生してしまった場合の後先が恐ろしい。


「よし、早速実行開始だ。僕は早急に管理室からありったけの薬品を集めてくる。メディはこれを持って、怪物を誘導するための準備をしといて」


 そう言って僕はカイさんから預かったハンドガンをメディへと渡す。


「メディカロイドが銃を握る……。到底予測していなかった事態ですが、カイさんを、ソイルさんを守る事に繋がるのなら、それも仕方のない事なのでしょうね」

「それは……うん、謝るよ。キミも不本意だろうから」


 メディは首を横に振った。


「さっきの『不安』を味わうぐらいなら、マシな方です。…………長い時間も話してはいられませんね」

「うん、そうだね。僕もさっさと取ってくる」

「────いってらっしゃい、ソイルさん。……死なないでくださいね」

「お互い様だろう? そっちも、カイさんは生きたのにメディはぶっ壊れるなんて洒落にならない状況、作らないようにお願いね」

「……はい!」


 そうして僕らは各々の持ち場へと向かった。本廃都市地帯において二度目の別行動。一度目とは違う志が、僕らにはあった。


◆ ◆ ◆


 メディに示された薬品を持って館に到着した。相変わらず巨大な館は、こうして目の前に立つと、暗闇の中でさえもその存在感を隠しきれてはいなかった。


「……ふぅ」


 一息吐いてから館へと入る。

 中は昼間に比べて暗闇が支配する空間になっていた。少しでも光を取り入れる為に、玄関の扉は開けっ放しにしておく。


「よし……」


 まずは容器の蓋を開けたままの薬品を館の各所に置かなければ。理想なのは館の一階、その中心と、中心から四つ角までの中間地点に置けるのが理想だろう。しかし、それはあくまでも理想だ。火起こしから始めなければならない事を考えると、モタモタしている暇はない。

 種火は敢えて小さくして、燃え広がるまでの時間を稼ぐ。メディへと伝える為の狼煙も上げなければならないからだ。

 暗がりの中で躓きそうになりながらも、大体の位置に薬品を軽く撒いてから設置する。

 そうして問題の火起こしを始める。メディと火起こし役を取り合っていた日はすんなりとできたそれが、地響きが身体を走っていく度に湧いて出る緊張感でこうも難しく感じるとは。


「メディとカイさん……」


 無事だろうか。この地響きが起こる度に潰されてなどいないだろうかと心配になる。

 しかし、地響きが連続していると言う事は怪物が未だ暴れている証拠で、きっとメディやカイさんが死んでいない証左だろう。


「────なんで……っ!」

 

 ……何故か、こういう時に限って火が付かない。

 汗が床へと滴り落ちる。胸が痛い。様々な不安が頭を過る。

 残されている時間は少なく、焦りが体感時間を加速させていく。この作業が上手くいかなければ僕の命やカイさんの命や────そんな余計な事が過ってはまた過る。

 分かっているというのに。不安や緊張による思考は、手元を狂わせるだけだと────


「あっ……!」


 ようやく火がついた。同時に感じた振動も大きくなっている。たった火をつけただけの感動に、足を止めている場合ではない。

 早急に隣に置いていた薬品に火を近付け、道中に倒壊した家から取ってきた、薬品を塗布した廃材へと火を移す。

 そうして小さな火が廃材へと移ると、その火を消さぬように手で覆ってから外へ駆け出る。

 恐らく、手に持った廃材だけで起こした煙を遠方から観測するのは不可能に近い。幾らあのメディであってもだ。なので一応、館の前へ、狼煙用に焚く薪を組んでおいた。そこへと廃材を投げ込む。


「これで────」


 土煙舞う方向を見やる。館へとを入るまでは遠かった土煙が、先程よりかはこちらへと近くなっていたのが分かる。まだ狼煙は上がりきっていないが、長距離をいきなり誘導するのでは無く、僅かであってもこちらへと近付けようとしてくれているのだろう。

 後はメディが誘導してくれるのを待つのみだ────


◆ ◆ ◆


「くっ……!」


 土煙が道路を包み、瓦礫が足を取る。その路況はメディカロイドの足でさえも奪っていく。


「思いの外、速い!」


 恐らくは、後数歩遅れて足を動かすだけで、己の体躯はシャングリラ下層に積み重なっていた廃材と同じようになるであろう。そんな嫌な演算を振り切って、メディは足を動かし続けた。

 アンドロイドである以上、普通の人間よりかは走れるものの、やはり限界は存在する。躯体への負荷、蓄えられたエネルギー。どちらか一方が限界へ近付いていくが最後、メディの足は今よりも確実に数歩ずつ遅れていく。

 故に、そのような演算ばかりが頭に残るのだ。


「カイさん……見当たらない……!」


 段々と狼煙へと距離が近付いていく最中も、道中に存在の見落としがないように細心の注意を払う。


「っ!?」


 直後、轟音と振動がメディの背中、コンマ数ミリの場所で発生した。建物をも破壊する衝突が、地面のコンクリートを粉砕する。


「…………がぁ!」


 そんな衝撃に、当然走り続けられるメディでは無かった。まるでシーソーで遠くへ飛ばされるように、メディの体は宙へ浮き、前方へと勢い良く吹き飛んでいくのと同時に、左側面から地面へと叩き付けられる。

 咄嗟に空中で身を翻し、前面から叩き付けられるのを避けたものの、ダメージを抑え切ることができたわけではない。


「だめっ……立ち上がら、ないと」


 両手を着いて体を起こすが、その際、包帯をしていた左腕に異常を感知した。だが、ダメージコントロールに気を割いている余裕はない。

 狼煙まで、走り続ければおよそ5分も要さない距離。目と鼻の先であるというのに、ここで少しでも歩みを止める訳にはいかない。


「ぐぅっ!」


 ようやく体が起き上がり、先のように足を一歩前へ、動かそうとした────刹那。


「────え?」


 破壊のみを繰り返していた苔玉、その触手がメディの直上で静止していた。


『………………ディぃぃぃ』


 唸るような低く重い音。されど、それが決して咆哮でないのを理解できた。


「オディギ────」


 メディがその名前を口にした瞬間。


『ダダダダダダッ!』


 轟音と轟音の間に生まれた、僅かな静寂を切り裂いた音は、メディとソイルから大切なモノを奪い去ったあの音と同じ音だった。


「メディだよなぁっ! 大丈夫かぁ!?」


 道中で見落とさぬように意識していたその存在が、メディ直上の触手を撃ち抜いていた。


「カ、カイさん……! 無事だったんですね!」

「あの狼煙、アレを目指してんだろ! 感染(うつ)される前にさっさと行くぞっ!」


 銃を構えるカイがメディを招く手振りをして、足を速めていく。

 メディもそれへつられるように走り始める。


「今……一瞬」

「黙って走れ! ヤツらは人間へと感染を拡散させて成長していくようなヤツらだ。さっきの妙な行動も、お前へ菌を感染(うつ)す為の行為だろう!」

「…………そう、ですか」


 ふと、後ろを顔を向ける。そこには、カイに撃たれことによって、千切れかかった触手を地面へと落とした苔玉がいた。


『ガぁぁァァァァッッ!!』

「来るぞっ!」


 苔玉が咆哮を上げると共に破壊活動を再開する。その様相に、メディは正面へと向き直る。

 狼煙まで間もなく、そうして角を曲がったそこに。


「ソイルさんっ!!」

「メディっ!! それにカイさんも無事で良かった!」


 お互いにお互いが安堵を感じて束の間、メディとカイが曲がってきた角から滑るように苔玉が現れる。


「来た……」


 ソイルへと近付いてくる二人を尻目に、ソイルは狼煙用の焚き木の一部を取り、急ぐように館内の中央へと戻った。

 そして、配置した薬品を手に取り、そっと目を瞑る。


「大丈夫。きっと、上手くいく」


 ソイルの胸には、不思議と安心があった。それは恐らく、苔玉を屠るためのメディの役目が終了し、自分へとバトンが渡されようとしていたからだった。

 約束をした。絶対に死ぬわけにはいかない、失敗はできない。故に当然、緊張や恐怖もある。

 だがそんな感情がある一方で、役割、そしてそれに伴う危険というバトンが、メディから自分へと渡った以上は、後にメディへ残る危険は大幅に減少する。

 それ故の安心感だった。


「失敗したとしても、ワンチャン道連れにできるしな……」


 そうなったら次はない。しかし、それが申し訳程度、仮に失敗した場合の自分への保険だった。

 そうして、床へ種火を落とす。

 チリチリと燃える音が良く聞こえてきて、しっかりと館へと火が移ったのを実感する。


「…………ごめん、オディギア」


 ゆっくりと目蓋を開けて、悔恨の()った雫が落ちる。

 そうして、火柱があがった。


◆ ◆ ◆


 館へと入り、火を点けるまで、およそ15秒も無く。


「っ!」


 上がった火柱と、身体の前面に走った熱へと驚き、僕は反射的に足を後ろへと引っ込めていた。

 館のすぐそこで地鳴りがするのを感じる。

 僕はすぐさま館を出て、館前、そこまで来ていたメディと合流する。


「ソイルさん!」

「メディありがとう、次は僕の番だ」

「はぁっはぁ……。なるほどな、館を使って奴を燃やすのか……!」


 汗を流し、息を切らしたカイさんがそう言って肩を上下させる。

 一方でメディは肩を上下させるどころか、呼吸一つ変えていない。否、呼吸はしていないのか。


「カイさんとメディ、一つずつお願いがある」

「は、はい!」

「はぁっ、構わないが、簡潔に頼むぜ……!」


 カイさんが苔玉を見やる。距離にして、恐らくは30秒もせずにヤツはこの館へ到着する。


「カイさん、その銃を貸してください。そんでもってメディはカイさんを抱えて安全圏へ誘導してって欲しい」


 目を見開いたメディは明らかに動揺の様相に見える。


「説明してる時間は無いし、合理的な判断なのも判るだろう?」


 息を切らしているカイさんにこれ以上の無理をさせることはできないし、今更別案を出して実行するなど出来ようもない。


「そ、それは────」

「ソイル……俺を信じてくれたお前を、俺は信じるからな」


 汗を流すカイさんは躊躇いも無く、僕へとその自動小銃を渡す。


「すみません、ありがとうございます」

「わ……私は」


 未だ躊躇いを見せるメディ。けれど、カノジョの回答を待っている余裕はない。


「……頼んだよっ! メディ!」

「ソイルさんっ!」


 道路へと駆け出して、ファイトロイドの見よう見まねでライフルを放つ。


『ダダダッ!』


 トリガーへ指をかけ、発射した瞬間。


「うっ……!?」


 ハンドガンの反動とは全く比べ物にならない反動が胸を振動し、たった三発しか発射された弾丸はあちらこちらへと飛んでいく。


「ケホッ!!」


 反動で激しく胸を打ち、それへ伴って咳き込んでしまうものの、実際に弾丸を当てなければ発砲の意味が無い。


『ガぁぁァッッ!!』


 ヤツの咆哮に怯まず、咳を必死に堪えて、一発一発、されど正確に狙いを定めて発砲する。


「急げメディッ! 俺はおぶられなくたって走ってけるし、それを懸念してるわけじゃねぇんなら躊躇ってる時間ねぇぞっ!」


 館の方からカイさんの怒号が聞こえてきた。

 どうやらメディが未だ躊躇っているらしい。既に苔玉は目と鼻の先、こうなれば僕がメディの動けるような一言を放つしかない。


「メディっ! バチェラの言葉、僕は忘れてない! 諦めたわけじゃない────」

「あぁ……クソッ! 来いっ!」


 カイさんがメディの腕を引っ張って、僕の後方へと走っていく。


「生きるためだっ!」


 メディのやる気を焚き付ける為に言い放った言葉へ、僕も両足へ力を入れ、単発で発射していた弾丸を連射させる。


『ギィぃぃっ! ガぁぁァッッ!!』


 ヤツも力んだようだ。弾丸を食らった直後に上げられた咆哮と共に速度が上がる。

 しかし、弾丸を受けて上げられたその咆哮は確かに、苔玉を僕へと引き付けられた確信を得るに十分な情報だった。

 僕はライフルを投げ捨て、館へと駆け込む。その際、一瞬後方が視界に入ったが、カイさんに腕を引かれていったメディが、逆にカイさんを肩へ抱えて走っていく様子が目に映った。

 どうやら、僕の指示を聞き容れてくれたらしい。それに安心感を覚え、僕は勢い良く扉を開けた。


「っ!」


 そこには見る間に火が広がり始めて、まさしく火の海となる直前と言った様相だった。

 上がる煙と、感じた室内の温度へ足を止めるが、背後から響く地鳴りに、僕は咄嗟に横へ避けた。

 ────直後。


『グゥゥゥゥッガぁっ!』


 咆哮と同時に衝撃が、僕の見る視界を揺らした。


「うわっ!?」


 苔玉が館の扉を突き破る勢いで突っ込んできて、それへ僕の身体は吹き飛んでいく。


「痛ぁっッ!」


 身体の側面へ走る激痛。

 幸い、こういうことになることはある程度予測できていた。完璧とは言わずとも、最低限の受け身は取ることができた。


「この……クソッ!」


 両手に一気に力を入れて立ち上がり、館へと突っ込んできた苔玉を見る。

 すると、ジダバタとする苔玉。その理由は言わずもがな、苔玉の触手の先端へと移った火だ。


「はぁ、はぁ。ケホッ! オディ、ギア……」

『ゾォォォいぃぃっるゥッ!』


 僕の呼んだ名前に応えるように、その苔玉から僕の名を呼ぶ声の聞こえた気がした。

 それに一縷の希望を覚えたのは事実だったが……僕らの命を、明らかなまでに狙っていたこれまでの行為に、そして目の前の苔玉の様相から、それは刹那的な希望であると切り捨てた。


『ガランッ! ガラガラッ!!』


 暴れ狂う苔玉に、どんどんと館の一部が倒壊していくが、それは火へと油を注ぐようなものだ。

 館の火は崩れた残骸を種にして、苔玉のみならず、館内を火の海へと変えていく。


「ケホッ! ごめんね。君を……一緒に連れて行くって、決めたのに」


 自分が死の危機に瀕しているというのに、不思議と、気持ちは落ち着いていた。


『グガァっっッ!』


 苔玉は苦しむように、そして本能的に火を消そうとその巨体を転がしていく。


「もしも。もしも、贅沢が許さるなら。…………この火で、君にまとわりつく穢れが浄火されて、元の君が帰ってきて……また────」


 気付けば、身体中を走る熱が、まるで鍋の中で熱せられていると勘違いしてしまいそうな程に強くなり、退路である出口に向かう通路へも火が燃え移っていた。


「また……君と。覚束ない会話をして……!」


 炎の明かりが、僕の脳内を掘り起こす。

『ソイル! 行ってみよう!』

 熱くなった顔を、冷たいはずの水滴が滴り落ちていく。


「美味しくご飯を食べて、同じ寝床で寝て……」


 ほんの僅かな時間だった。

『おいしい!』『ソイルと寝るとね、落ち着くんだぁ』

 あの時間の中で、オディギアは幸せだっただろうか。

 

『ギィぃ……ッ!』


 炎が広がるのに比例するように、苔玉の上げる声が、か細くなっていった。

 最後の抵抗か、唯一燃えていない触手が振り上げられる。


「そして……君と、この世界を……歩きたかった」


 目を瞑る。だが決して、諦めではない。

 そう。オディギアが永眠(ねむ)れるよう、ただ、オディギアへの祈りを込めて。


「やがて──朝はぁー、訪れるものだけどー──! 夜はぁー──貴方の──為にあるー──!」


 メディよりかは下手だけれど、カノジョが歌っていた子守唄を口ずさんだ。


『……イルゥゥゥ?』

 

 目の前の存在が、息を吐くように静かな声を出して、僕はそれへと目を開く。


『オォォ……ヤぁぁ……』

「えっ?」


 唯一火の付いていない触手は、僕の頭上を掠める距離で静止していて。


『スゥゥッ…………ミィ……?』


 その光景に感じたのは、先ほどのような殺意などではなく……確かに、そして温かい『人間』の心だった。

 僕はただひたすらにオディギアを見つめ続け、そうして、それから僅かな時間が経ってもオディギアは何も発することはなかった。


『ガラララッッ!』


 天井が音を立てる。そして────


『ドゴォッッ!』


 埃と火の粉を舞い上げて、轟音と共に崩れ落ちた。


「……あっ」


 その下に居たのは、既にもう動かなくなった苔玉。

 そして、ようやく我に返った。


「オディギア……!」


 名を呼んで、その存在がどうなったかを再認識し、再び涙が頬を伝う。

 これが、僕の責任だ。

 僕が連れて行くと決めた、その決断の責任。僕が彼女を永眠(ねむ)らせてあげると決めた、その決断の責任。


「ちゃんと……連れて行くから。君も」


 崩落した天井の隙間から、満天の星が見える。そんな星と、火の明かりに照らされた僕の頭上で静止した触手を優しく握る。

 そして数秒後、ゆっくりと手を離した僕は、後方で火を放ちながら積み上がる館の残骸を見つめる。


「オディギアを連れて行くんだ、死ねないもんな……」


 そうだ、まだ終わりじゃない。『生きるため』だと、メディへ言い放った以上、その責任も取らなければならない。

 出口の残骸を良く観察すると、隙間からは外が見えていて、踏み越えて行けば外へ出られそうには見えた。無論、踏み越えた際に残骸が更に崩れる可能性と、火を全く考慮しないでだ。

 しかし、それ以外の策も思い付かない。

 下手をしたら火達磨だろうか。それとも、出口へ向かう途中で天井の下敷きになるだろうか。

 唾を飲み込み、意を決した僕は、無謀にも足をゆっくりと早めていく。

 一歩を確実に踏んで、僕は火を踏んだ。

 その先に、メディやバチェラ、オディギアとの約束があると信じて。

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