第2章-52
どれだけ時間が経ったろうか
体感より恐らくはずっと短い時間だったんだろうけど
永遠にも感じられるほどいたたまれない空気だった
そこにやっと来てくれたナル
天井の染みが人の顔に見えて来てからは無言で睨めっこをし続けていた俺にとって
天使のような存在に感じられた
「こ、こんにちは、お2人とも・・・、ももう、お昼は済ませました、か?」
「ナル!よく来てくれたね、待ってたよ!昼はもう済ませたから早速移動しようか!」
ナルは若干俺の変に興奮気味な様子に戸惑いながらも
コクコクと頷いて着いてきてくれる
そして立ち上がる3人
ナルはまた微妙に戸惑っている
ただ隣に座っていただけで
たまたま同じくして立ち上がっただけかも?みたいな顔をして
ウェスタイロンの陰に隠れるようにして着いてくる
俺の横に並んで歩くタキ
それを見てやっぱり「あれ?あれ?」みたいな様子のナル
「あ、あああ、あの?」
ウェスタイロンはナルを怯えさせないよういつもより声量を落として
「ナル、クロスから話があるらしいから待て。クロスの横を歩いている女性からも何か話があるようだ」
戸惑いや疑問はあるみたいだが
ウェスタイロンの様子から黙って成り行きを見守った方が良いと思ったか
ちょっと強めに気配を消しながら着いてきてくれた
向かったのはさっきタキと話した場所だ
日当たりも良かったし人通りがかなり少なかった
穴場なのかもしれない
食堂から割りと近いところだが
どうせ座るなら食堂横の読書空間に行けばいい
本もあるし静かだし
わざわざここの長椅子を選んで移動する理由があまりないのかもしれないな
ウェスタイロンとナルには長椅子に座るように促し
タキは立ったままで良いと言うので
俺はウェスタイロンとナルの正面に向かい合う形で地面に座った
芝生なので案外座り心地は良い
「さて、まずはナル。さっきウェスタイロンには少しだけ話したんだけど、今日これから3人で大事な話をする前に紹介したい人がいる。気付いている通り、そこに立ってるタキだ。俺達と同い年」
「エカハ・タキ。よろしく」
「あ、よ、っよよよよろしく、おっ、おね、お願いし、ます・・・」
どもりが大分強くなっている
かなり警戒しているようだ
「お、おおおお見掛けし、してまし、たので、お、おかおか、お顔は存じて、ま、す・・・」
まあタキは有名人だもんな
「私もあなたのことは知ってる。クロスとウェスタイロン君と3人でご飯食べに来てたのを見たから。とても仲が良さそうね」
「あ、あ、・・・。すすす、すみま、せん・・・」
謝ることは全くないのだが
圧もないのに勝手に気圧されてしまっているな
ここは俺がちゃんと説明した方が良いだろう
しかしタキの心中を全て打ち明けるのも気が引ける
だからと言って2人に満足に説明できないのでは意味がない
何処まで話したものか
「タキ、さっき俺が聞いた君のことは2人に話しても良いかな?」
「ええ。全部話して」
全部は話さないけど了承は得た
彼女を傷付けないように
それでいて2人に訴えかけられるだけの説明をなんとかしてみよう
「2人ともまずは俺の話を聞いてくれ。今日これから3人で話をしようって約束していたのに、俺の独断で勝手に他の人を連れてきたことを謝りたい。ごめん。」
しっかり頭を下げる
「タキとは昨日知り合ったんだ。早朝に走り込みをしようと思ってね、向かう先でタキが稽古をしているところを偶然見たんだ。なんというか言葉では表せないくらい見事なものだった、俺はその稽古をしている姿に釘付けになってたんだけど、本来自分の目的を思い出して見学を切り上げて。走ったんだ。タキのこれまでの努力の積み重ねを感じた俺は、感化されたのか予定よりも頑張って走り過ぎちゃってね。俺も自分の体力が結構ついてたんだなって驚いてたんだけど、タキも俺に気付いてたらしく帰ってくるのを待ってた、んだよね?」
タキが頷く
「それで俺の体力を見込んで、次の日の朝に一緒に走って欲しいと頼まれた。これがまず彼女と知り合った経緯」
2人とも静かに、聞きに徹している
ナルは先程より警戒心が薄まってるみたいだ




