第2章-50
共振石の他の交信手段についても説明を聞き
カワラシ先生の1回目の座学は終わった
終わると同時にタキは素早く行動した
「あなたも急いで」
言われるがままタキに続き
2回目の座学を予約して教室を出た
俺達の後に先生の前へ列が出来ていたので
後方の子達からは逃げおおせたようだ
そんなに邪険にしなくても、と思ったが
タキは教室から出る直前に振り返って
こちらを見ていた後方に座っていた子達に手を振っていた
案外ちゃっかりしてるじゃないか
「さて、どうする?」
歩きながら聞かれた
タキに考えや予定があっての行動ではなかったらしい
しかし、どうするかと聞かれてもな・・・
「あの、俺さ。この後は友達と集まる予定なんだよね。だからその・・・」
タキを横目で見てみると
歩みを止めてこちらを無表情で見ていた
俺もすぐに止まり振り返ってタキが何を言うか待ってみたが
・・・
何も言わずにこっちを見ている
・・・
無表情の圧が怖いんだが
・・・
「あ、・・・。タキも、予定が無ければ来てみる・・・?」
「行く」
即答
歩くのを再開し俺を抜き去って
「行きましょ」
そう言ってるが
「タキ」
「なに?」
「集まるのは食堂だから逆方向なんだけど」
「まったく、どこ行くつもりだったの」
それはこっちが聞きたいが
しかしどうしたものか
今日は結構みんなで大事な話をする予定だった
タキとウェスタイロンは面識があるが
ナルは初対面だろうしあの性格だ
馴染めるかどうか不安だ
馴染めたとして今日の本題に入れるかどうかという問題もある
先に色々と聞かないといけないことがあるな
「待って、タキ」
「今度はなに?食堂はこっちで合ってるはず」
「そうなんだけど大事な話なんだ。みんなの所に連れて行く前に話しておきたいことや確認したいことがある。まだ時間はあるし、ちょっと外で話そう」
俺の真面目な顔を見て察してくれたのか
黙って頷いて後を付いてきてくれる
タキは表情や態度からは何を考えているか分かりにくいが
素直ではあると思う
道理さえ通せば理解してくれるはずだ
誠実に向き合って
意見や考えが合わなそうなら今回は見送っても良いと思う
俺は丁度人が居なそうな庭に置かれている長椅子を見つけ
そこに座って説明を始めた
「この後会う予定だった友達なんだけど、ウェスタイロンって俺の同室の男の子と、ナルって言う『工作』に精通した女の子なんだ」
「知ってる、前に見たから」※第2章-39
「え?そうなんだ。あ、そっかご飯屋さんでね。あの時タキの姿を見なかった気がしたんだけど」
「いた。あなた達は話に夢中で私に気付かなかったみたいだけど」
「ごめんそうだったんだ。実はタキがあそこで働いてたの憶えてたから、入った時には見回して探してたんだけどな」
「・・・」
「(なんだ?この間は)その、2人とはその時に仲良くなってね。俺達の中で今後自分たちの目標だったりを話し合って、目的が合致すれば協力し合う様な約束をするつもりと言うか、自分達が秘密にしているスキルだったりも教え合って結束を強めると言うか、とにかくこの後集まるのは俺達の中でかなり大事な話し合いになると思うんだ」
タキは俺の真面目な話に呼応するかのように真剣に話を聞いている風に見える
表情に変化はないが
「だからタキ。君をみんなに紹介したい気持ちは山々なんだけど、タキがこの後の集まりに興味本位程度で来てみたいって感覚ならまた今度にさせてほしい」
真っ直ぐ目を見て言った
この子には理由はしっかり話したうえで遠回しにではなく
端的に伝えた方が良いと思ったからだ
タキは「うん」と言って一呼吸おいてから
「私を連れて行って欲しい」
強く、そう言葉にした
が、気持ちが伝わっても
他2人にも了解を取る必要があるし
やっぱりと思ってもう少しちゃんと説明して断る方向で話そうと思った矢先
「私が先に他の2人に自己紹介する。それで私は自分のスキルや目的も全部話す。そこから真剣度合いが2人に伝わらなかったり、目的が違ったりしたならやっぱり外してもらって構わない。」
あくまで自分は試される側だという主張
誠意は凄く伝わった
だけど逆に疑問は強くなった
どうしてそこまで・・・
「タキ、君の気持は分かったよ。でも先に俺が確認したい。どうしてそんなに俺達に拘るの?言っちゃなんだけど君の周りには沢山人がいたじゃないか」
「羨ましかったの」
羨ましい?
タキの方が人に恵まれているようには見えたけど
「あなた達の、周囲が気にならなくなるくらい自分たちの輪の強さみたいな、真剣で、楽しそうで。それでいてお互いを認め合ってるように見えたの」
・・・
「私の周りには確かに人が多い、けどみんなは私を平等には扱ってくれないの。頼んでもないのに勝手に高嶺の花みたいに持ち上げるの。そんなんじゃないのに。そんなのになりたくないのに」
タキには本人にしか分からなかった苦悩があったようだ
傍から見てる分には分からなかった
「最初はあなたとウェスタイロン君が、私に全く寄ってこないことに気付いたの。私の職場であなた達を見かけて教室でも見かけたから、てっきりあなた達も私に話しかけてくるんだと思ってた。けど違った、何か様子がおかしいのは遠目からでも分かったけど。それが逆に私は気になってたの」
ウェスタイロンが体調不良で死んでた時だな
あいつがくたばってなければ俺達も声をかけていただろう
心の中だけで感謝しておくか(笑)
タキは自分の膝辺りを見つめながら喋ってるので
俺の表情には気付かない
微妙に上がってしまった口角を戻してタキの話に集中する
「そうしたら今度は私の職場にまたあなた達が現れた。2人だったように見えたけど、途中から入って来てもないのに3人に増えてた様な気がしたのも私が気になった要因の一つだけど」
ナルの【気配遮断】だな
外からはそう見えてたんだ
「あなた達に女の子が1人混ざっているのを見て、もしあれが私だったら・・・って考えてしまったの。話に夢中になっている傍を何回か横切ったりしたけど、あなた達は私に全く気が付かなかった。思い返してみてもちょっと恥ずかしいけど、少しムキになっていたんだと思う」
タキは顔を赤らめているよう、な気がしたが
変わってないかも
分からん
「あなたとは走る約束もあって、あの女の子より私の方が早く機会があった筈なのにって思ったの。それで今日走ったあとに座学を受けているって話を聞いて、私はまだ座学を受けたことなかったからちょっと焦ったの。働いていればお金には困らないと思ってたし、座学の重要性をあまり理解してなかったから。周りの子達には誘われたけど、ずっとあんな扱いされたくなかったから断ってたの。断ったのに座学に行ったらあの子達の誰かがいた時に『どうして?』ってなるでしょ?だから私もどうしていいか分からなくなってて、クロスからもし座学の話が聞けたら一緒に行きたいなって思ってたの。でももう行ったって言ってたから、私どうしらいいか分からなくて」
途中少しだけ涙ぐんだ様な声色になったが
持ち直した
強い
涙が出るのをこらえて冷静な口調に戻った
ゆっくり静かにふーっと息を吐いて落ち着けている
「『交信』の座学に誘ってもらった時は嬉しかったの。その後のことはあまり考えてなかったんだけど、当然のように次も一緒に出来ると思ってた。でもクロスは他の友達の所に行くって言うから、ダメって思ったけど止めることなんて出来なくて」
言葉が止まった
これ以上続けると涙が溢れると思ったんだろう
空を見上げて目を見開いている
まるで目を乾かすような素振りだ
・・・
「一緒に行こう」
タキは見上げていた顔をこっちに向き直した
「俺から2人に紹介するよ。大丈夫、ちゃんと俺から話するから」
タキの目から涙がツーっと流れた
タキは俺の顔を逆方向に向かせるように強引に手で押してきた
タキと反対方向を向かせられる
「ごめん」
「大丈夫だよ」
後ろできっと泣いているであろうタキが落ち着くまで
俺の左頬はタキの右手で押され続けた




