第2章-49
「交信」の座学の教室に来た
ちょっと早めに到着したつもりだったが
タキはまだ来ていないみたいだ
結構早めに準備しに帰ってたから
もしかしたら教室に早く行きたいのかと思ったけど違ったようだ
特にどこで待ち合わせなんて話はしなかったので
教室に直接来たけど大丈夫だったよな?
どこかで待たせてたりしたら申し訳ないけど
生徒はチラホラいる程度
ウェスタイロンもナルも別の座学を受けに行っているので
知り合いはいない
それを考えると
タキが早めに教室に来てしまっては周囲に人が集まり過ぎるから
あえて遅く来るのかもしれないな
うん
多分そういうことだろう
若干ソワソワしながら待っていた
が
始業の時間直前になって
座学を担当するであろう先生が入って来た
タキどうしたんだろ?
あんなこと言って結局他に予定が埋まっちゃったのかな?
すっぽかされたことに軽く悲しい気持ちになっていたが
先生のすぐ後に続くようにタキが入って来た
そして教室を見回し
後方から「エカハさーん」と手を振ってる女の子達の方に軽く会釈をしたあと
俺の方に近付いてきて隣に座った
「遅かったから来ないのかと思ったよ。でも大丈夫?後ろのみんなと待ち合わせしてるんじゃないの?」
「してない。私を見てこっちに来なよって手を振ってくれただけだと思う。あと、遅くなったのはわざと。先生より先に教室に入ったら、あの子達が私の近くに移動してくるから」
なるほど
考えての行動だったか
しかし準備があるからと言ったのは確かなようで
朝あれだけ走ったとは思えないほどバッチリ身だしなみは整えて来たようだ
感心する
「なに?」
見過ぎた
「ああいや、なんでもないよ」
先生の方へ向き直って挨拶を待った
「おはようございます。本日『交信』の座学を担当しますカワラシです。『交信』の座学は全2回となってますので、今日受けて頂いた生徒の皆さんは次回、私が担当する『交信』の座学2回目も受けて頂くことになります。座学終了時に次回の出席予約を取りますので、帰る時に忘れないようにお願いします」
全2回ある座学の後半を先に受けたり、前半を2回受けたりしないようにするための施策か
カワラシと名乗った女性の先生は
出席予約の紙をピラピラ見せながら説明していた
ちょっと脱力系の人かな?
着ている服もちょっと緩めだ
姿勢もあんまり良くなさそうだが
声は結構はっきりしているので聞こえ辛いことは全くない
「さっそくですが皆さん、『交信』をどうやって行うか知ってますか?」
交信と言われて思ったのは情報の遠距離交換だが
方法はあまり知らないな
「方法は様々で、狼煙もあれば色付きの信号弾もあります。ですがこれでは簡単なやり取りしか出来ませんよね。手紙のやり取りもしますし、鳥を使った伝書方法もありますが時間がかかりますし、確実ではありませんね。ああ、伝言もしますがこれも物理的に時間がかかります。では、どうするか」
カワラシ先生は衣嚢から手の平程の大きさの石を2つ取り出した
「これは共振石と呼ばれていて、片方を振動させるともう片方が同じ振動をする不思議な石です。」
片方の石を机にコンっと軽く叩きつけると
もう片方の石から同じような音がほぼ連続して聞こえた
「距離的な制限はありますが、これに向かって話しかけると遂になる共振石が同じように振動するので遠くにいても会話が出来るようになります」
カワラシ先生は片方の石に向かって「あ~」と声をかけると
もう片方の共振石からも声が聞こえて2重になっている
「この石実は結構貴重な物でして、とある脅獣から採取出来るんですが生息域や個体数も不明なんですよね。なので数にかなり限りがあるんです。これは小さい共振石ですが、大きな物は大型脅獣の討伐作戦などで利用されることが殆どですね。この小さいのでも結構な値がするんですよ?」
そういう割には結構雑にカンカン打ち付けている
壊れないのか?
「共振石を持った脅獣は目も見えない、耳も聞こえない猿ですね。『見聞か猿』と呼ばれていて、この両手首に埋まっている共振石を打ち鳴らすことで身体で振動を感じて行動したり、攻撃したりします。共振石は大きく打ち付けると互いに共振し合って音を増幅させるので、実は結構な被害が出るんですよ。私が手に持ってカンカン打ち付けた所で、私の手が振動を吸収してしまうので音の増幅はしませんが、『見聞か猿』は特殊な腕の構造をしているので振動音があまり吸収されず、上手く音を増幅します」
これが結構厄介なんだなーと言いながらやっぱりカンカン打ち付けている
軽くなんだろうが
結構な音だ
「なのでこんなに叩き合わせても全然壊れないくらいに丈夫なんですね。どこにでも持ち出せるようなものではないですが、これを使えるようになったらかなり重要な「交信師」になったと言うことでしょう。だから今すぐこれの使い方を教える必要はそんなにないのですが、一応教えておきますね」
そう言って顔の前に2つ両手の指で持って見せた
「片方に喋ると、もう片方も震えます。なので会話が終わったら手で握るなりして振動を止めます。止まったらもう片方が返事をするという感じです。簡単でしょ?でも簡単なのは使い方だけで、大変なのはその振動を止めない様にどうやってその石を持つか?と言うことなんです。なので専用の固定具を持って行き、地面に刺してなるべく振動を殺さないようにして使う必要があるんです。」
こういうので、と言いながら固定具を見せてくれた
伸縮式らしく
最大限まで伸ばすと大人の身長くらいある
「短いと地面に振動が吸収され過ぎるので、長い必要があるんですね。でも長いと持ち運び辛いでしょう?だから伸縮式になってます」
色んな工夫がされているようだ




