第2章-48
朝になり
昨日より少し早くタキとの待ち合わせ場所に来たが
タキは更にもうちょっと早く来ていたようだ
「おはよう!早いね。昨日も今日と同じくらい早く来てたの?」
「おはよう。いいえ、クロス。あなたが早く来そうな気がしたから私もちょっと早く来たの」
・・・
まさかこれどんどん早くなっていくやつじゃないか?
「そっか、じゃあ提案なんだけどもう少し遅い時間に集合しないか?お互いが相手より早く来ようとし続けたら、いつか前日の夜になっちゃうよ」
「そうね。私も今日はちょっと朝が辛かったから助かる。昨日クロスが来たくらいの時間にしましょ」
「それでいこう!今日も昨日と同じように走って欲しい?」
「クロスに問題がないならそうして欲しい。私はきっと今日も付いて行けないけど、精一杯頑張るから」
「分かった。ただ、俺昨日『開拓』に行ってきてさ。手も脚も筋肉痛で本調子じゃないんだ。だから昨日みたいに走れなかったらゴメンね」
「『開拓』・・・。ええ、それは大丈夫。クロスも無理しないで」
「タキこそね。それじゃあそろそろ行くよ」
話ながら軽く準備運動を済ませて
昨日と同様に走り出した
タキは途中まで同じくらいの速度で走っていたが
やがて距離が離れだした
だが昨日離された地点よりは少し伸びている
体力が着いたというよりは心持ちの問題だろう
あらかじめこれくらいの速度でと分かっているのと分かっていないのとでは
心理的余裕が全く違う
その余裕の違いが無駄な心拍数の上昇を抑え
結果に現れる
タキはいずれ俺と同じくらい走れるようになるだろうな
俺も追い付かれないように精進したい
俺も走り始めは脚の重さを感じて若干様子見の速度で走り始めたが
動き出したら気にならなくなったので
タキの調子の良さに煽られてついつい走ってしまう
だが折り返してから最後に残った体力分で追い込みをかけたかったが
昨日ほどの余裕はなかった
流石に疲れ自体は取れ切っていなかったようだ
タキにも言った通り
限界を超えて無茶してもよくないので
今日の所は可能な限りにしておいた
タキが俺に遅れて走り終わったが
昨日のように倒れこむことはなかった
自分で体力配分を計算した様だ
しかしお互い会話が出来るほどの余裕がないので
しばらくは大きな円を描くようにぐるぐる歩いて
呼吸の安定を図った
俺が先に息を整え
筋肉の伸縮運動をしているところに
後からタキが近くに来て同様に筋肉を伸ばし始める
「お疲れ様、昨日より調子良さそうだね」
「そうね。昨日はちょっと気が気じゃなかったから・・・。それよりクロス、あなた初歩の座学はもう結構受けているの?さっき『開拓』に行ってきたとか言ってたと思うけど」
「受けてるよ。まだ『開拓』と『工作』だけだけれど。今日はこの後『交信』に行って、夕方には『捕捉』も受けようかなって思ってるよ」
「・・・」
タキは俺の話を聞いて驚いたような顔をし
下を向いて俯いてしまった
あれ?
なんか・・・
微妙に傷ついてる?
「あ、もしタキが良ければなんだけど・・・、朝の『交信』の座学一緒に行く?」
タキが勢いよく顔を上げてこっちを向き
ちょっと目が見開いていて怖かった
「行く」
声は努めて冷静だ
しかしさっきまで微動だにしなかったタキは
軽快に整理運動を再開していた
表情からはあまり読み取れないが
多分嬉しそうだ
そして俺よりもはやく立ち上がり
「じゃあ私、準備があるから」
と言ってさっさと帰ってしまった
もうちょっと丁寧に筋肉を伸ばしてあげても良いと思うけどな
そんなことを思いながら取り残された俺は
タキの分もやるくらいに丁寧に伸縮運動を続けた




