第2章-46
空に見える影は2つ
小型飛翔脅獣「墜落鳥」
墜落と言っても地面に突き刺さることは殆どないが
それほどの勢いで急降下してくることからその名前が付けられたらしい
脅獣は肉食なので
人を襲う
基本的には人口の密集している地域に現れるため
閑散地域だった俺の地元ではまず見ることはない
なので生で脅獣を見たのはこれが初めてだ
墜落鳥は羽を広げて前面
つまり飛んでいる状態で下から見上げられる範囲は青みがかかった色をしている
空と同化するために進化したんじゃないかと考えられている
背面は黄土色に近く
自分より上空を飛ぶ上位の存在から見つかりにくくするためじゃないかという学説だ
嘴は非常に鋭く硬い
急降下して人の腹にでも突撃すれば貫通してしまうらしい
しかし急降下して人が立っている高さまで降りた時に羽を閉じていると
上空に翻ることは出来ないので
羽を畳んだまま人に襲い掛かることはまずない
だが恐ろしいのは翼の切れ味で
人の腕くらいであれば勢いが乗ると切断できるほど鋭利らしい
馬に乗っていた人が後ろから襲われて首を刎ねられたという話は有名だったりするが・・・
墜落鳥は2体とも羽を大きく広げて上空を旋回している
伏せた状態で見上げているからか
距離感が分からないが
デカい・・・
小型?だよな
羽を広げた時の大きさは俺の身長の2倍くらいありそうだ
「新人、脅獣を見るのは初めてか?」
俺の近くで伏せていた他の作業員が声をかけて来た
「はい、今日が『開拓』に初めて来て、脅獣も人生で初めて見ました」
「そうか!だが安心しな、こうして伏せている限り奴らが安全に人を襲う手段はない。しばらく待ってれば狩人が奴らを仕留めるはずだ」
声をかけて来た作業員は俺を安心させるためか
色々と話をしてくれた
飛翔脅獣がこの辺で姿を現す頻度は大体10日に1回程度
同時に現れたのを見たのは3体までで、4体以上の群れで現れる事態は非常に稀
開拓で結構長いこと働いているが
人が脅獣に怪我を負わされるところは見たことがないし、聞いたこともない
「それにな!あの脅獣から剝ぎ取れる嘴や骨なんかは色んな物に使われる上質な素材なんだ。だから安全さえ確保されていれば寧ろ万々歳だ」
ニッカリ笑って上機嫌そうに話す
きっとこういう風にこの人も新人時代に先輩から色々教えて貰ったんだろうな
俺もその内真似できるようになりたいものだ
「ほれ!そろそろ始まるぞ。見て見ろ」
先輩作業員が指さす方向を見てみると
俺達を個々の開拓地点まで案内してくれたザオノーと
この開拓地点の管理者だと言っていたナイシアだ
「あの2人がここで俺達を守ってくれている狩人だ」
2人は横長の網を持っているようだ
脅獣から目立つところに2人して立ち
石を上空に向かって投げて威嚇している
標的になろうとしているんだろうか
2体の脅獣のうち1体が旋回状態から大きく飛び上がり
狙いを付け
ナイシアに向かって急降下を始めた
翼を微妙に調整しながら狙いが定まったら完全にたたみ
速度を上げて落ちてくる
墜落鳥
あの速度とあの角度で
本当に地面に激突しないのだろうか?と
疑問に思う程の急降下
ナイシアとザオノーは冷静に角度を調整し
墜落鳥が丁度突っ込んでくる位置に網を広げた
そして
「今だ!」
ザオノーの掛け声と共に網を手放し
墜落鳥に網のど真ん中を通過させるようにして
2人は網から離れるようにして転がり避けた
墜落鳥は見事なほどに直前で翼を展開し
激突することなく地面から上空へ舞い戻ろうとしたが
2人の狩人が広げた網に突っ込む形になった
嘴や鋭利な羽が網を引き裂くかと思ったが
ある程度貫かれたり引き裂かれたりはしたものの
完全に綺麗に貫通するには至らなかった
そして
網に絡まったような状態になった墜落鳥は
再び飛び上がることが出来ず
墜落した
地面で網から脱出できずにもがいているが
それを無視して2人の狩人はもう1体の墜落鳥へも同様に牽制した
そして暫くして
同様に対処された墜落鳥は2体とも
網に絡まった状態で仕留められた




