第2章-38
「ここだ!着いたぞナル、遠慮せずに好きなだけ頼むといい!」
そう言って連れて来た店は
父とウェスタイロンと3人で来た
あの給仕の女の子が働く飯屋だった
「どこへ連れていくかと思えば・・・」
まだ日もそんなに経ってないわけで
こいつも床に臥せってたし
飲食店の店舗開拓が進んでいるはずもないか
あの日は途中から胃の容量を超えるキツさばかりが記憶に残っているが
味は確かだったはず
それに静かすぎず騒がしすぎることもない
訪れている客層も俺達10歳だけで利用しようが目立つわけでもなさそうだから
店選びとしては正しいだろう
ナルに続きを話して欲しいと言った手前
話しやすい環境を提供するのはまず前提条件だ
小さい声なのでうるさいと聞こえないし
静かすぎて目立つともっと喋りにくくなるし
丁度良いだろう
店に入ると店員さんが人数を尋ね
席へと案内してくれた
その時に出来れば端の席の方でお願いしますと伝えると
快く了解してもらえた
ナルはキョロキョロしている
それと店に入ってすぐにナルがまたスキルを発動しているのか
何処へ行ったか分からなくなったりしていた
そういう時は
「ナル?」
と声をかけると小さく返事がして現れる
実は目の前に居たりするので結構ビックリする
案内された席に着き
改めてナルに聞いてみる
「【認識阻害】ってスキルだって言ってたけど、自己発動型だよね?まだ制御は出来てないの?」
「あ、はい。自発型でで、あ合ってますが、落ち着いてるときは、制御できます・・・、た、多分。たた確かめてもらったことが、あんまりない、ので。さ、さささっきみたいに、な、慣れない所だと、かっ勝手に発動しちゃうんです、すみません」
「こうやって面と向かって喋ってる時は何ともないんだけどね、多分本気出されたら目の前にいても全然分かんないだろうね。凄いスキルだよ」
「同意だ、ナルのスキルは対脅獣において役立つ場面がいくらでも思い浮かぶ。逆に言えば、あらゆることを秘密裏に行うことが出来るがゆえ、スキルを明かす相手は慎重に選ばなければならんな。俺達は聞いてしまったが、ナルを疑うことはないから安心していい。運がよかったな!」
ハハハと腕組して笑いながらウェスタイロンが肯定する
「あ、ありがと、う、ございま、す・・・」
表情は見えないが、おそらく顔を赤くして感謝を伝えている
ウェスタイロンは腕組を外し
椅子に深く座り直して居住まいを整えた
ほんの一拍おいてからゆっくり話し始めた
「お前たちを見込んで、俺も2人にスキルを明かそうと思う。」
真剣な顔をしている
「この場ではまだスキルについて話さないが、今後お前たちと色々と共にしたいと俺は思っている。だから改めた場で俺の目標やらも含めて聞いてほしい。そしてお前たちのことも話して欲しい。どうだろうか?」
俺とナルは視線を合わせた
眼は見えないがおそらく気持ちは同じようだ
「ウェスタイロンに言われたからじゃないが、俺のことも2人に話したい。いずれは言いたいと思っていたがきっかけを作ってくれてありがとな。ナルだけ先にここで言わさせて悪いんだが、俺もこの場ではちょっとスキルを詳しく話せない。また場を改めて設けよう」
「ぜ、ぜぜ全然構わないですっ!勝手にわわ私が喋っちゃっただだ、だけですし。声も小さい、ので、他の人にはき、聞こえてないです!た、多分・・・。それとっ、私のことも、もっともっと、き聞いてほしいですっ」
意見は一致した
ウェスタイロンは腕を組みなおして満足そうに頷いている
そして手を挙げて店員を呼んだ
「注文をお願いしたい!」
「いつまでも何も頼まず話し続けるのは迷惑だからな。ナル、とりあえずさっきの話の続きを聞かせてくれないか?」
「は、はいっ!」
ナルはどもりながらも軽快に喋り出した
話したいことが尽きないようだ
流れで今度自分のスキルについて話すことになったが
正直な所まだ2人に明かしていいか疑問は残っている
ウェスタイロンも口振りからそこそこ覚悟を持って話すようだし
ナルは暴発気味だったとは言え信用したからこそ自身のスキルを打ち明けた
俺としては2人を信用したい
信用したいが
こちらが信用される確証はない
聞いてやっぱりと危険性から避けられる可能性は大いにある
怖い
自分でもまだ把握し切れていないスキル
受け入れてもらえるだろうか
ナルの話を聞きながら
自分のことも考えていた




