第2章-34
「工作」の座学も後半となり
タダッキニは慎重に道具を取り出した
「これは大型の脅獣に実際に使用する目的で作られた毒薬です。この毒薬は人にも効果がありますので、皆さんはこれに近付かないで下さいね。大型以上の脅獣に対しては、討伐や捕獲に時間がかかりますので早い段階で毒薬を使うことになります。大型以上の脅獣は生命力が凄まじいですからね。息の根を止めるまではいけなくとも、弱らせるためには必須の道具となります。」
その毒薬は瓶に詰められた液状の形態をしている
使用方法は、大型の脅獣が好む食べ物などに塗布、または注入することで口腔から摂取させるようだ
「こちらの毒薬はやや独特の匂いがしますが、大型の脅獣は割りと食べてくれますね、嗅覚に敏感な種もいますが、例えば肉類などは外側を若干炙ってやれば香ばしい匂いが勝ちますので食いつきは良くなります。肉類を食べない種に対して匂いのある毒薬を盛る場合は、別に匂い消しや他の強い匂いのする薬剤を塗布することで警戒心を解く方法もありますね。」
毒薬の入っている瓶は黒っぽく、かなり濃い色をしている
対して、匂い消しと言いながら取り出した便は薄透明色だ
「こちらの毒薬は陽の光で変質してしまいますので、こういう色の強い瓶で保管します。基本的には陽の当らない暗所に置いておきます。そしてこちらの匂い消しは我々人間が服用しても特に害はありませんが、中身が何か分かりやすくするためにこういった透明で中身を確認しやすい瓶で保管します。」
ただ強力な毒薬を作るだけではなく
それを効果的に使わせるための補助的な道具までそろえてやっと1つの効果ある装備となるわけだ
「さて、この毒薬は口に入れてもらって初めて効果を発揮しますが、もし目標の脅獣が空腹でなかったら?または他の動物や、目標外の脅獣に食べられてしまったら?」
タダッキニは微笑みながら生徒のみんなに想像させる時間を与えている
「いかに効果的な毒薬と言えど、相手も生物です。その時の体調や気分、状況に応じて毒薬を使えない場合があります。本来なら『精査』の部隊がそれらを事前に教えてくれるのですが、状況は常に変化しますからな。聞いていた情報と違うなんてことはよくあります。なので複数の毒薬を持ち込み、臨機応変に使い分けなければなりません。」
「となると、複数の毒薬に対しての注意事項や確実な使用方法等、持っておかなければならない知識が必要になりますな。本来はこれら知識は部隊の全員が把握してくれていることが理想ですが、人は全てをこなすことは出来ません。得意不得意もあれば、これは任せてほしいから、これは任せるなんて役割もあります。なので部隊に1人は『工作』に精通した毒の扱いに長けた狩人が必要なんです。」
「状況に応じて毒の専門家狩人から使い方を現場で習い、各自分担するなんてこともしますからな。誰も毒の扱いを知らん状況で、間違って毒を撒き散らし部隊が全滅したなんて話は昔ありました。なのでこの『工作』は仕事としては人気はあまりないのですが、誰かが絶対にやらなければならない必須級の仕事なのです」
タダッキニは真剣な顔で説明した
生徒全員がしっかり話を聞いている
前半で脅すような内容を言っていたので
言わなければならない内容だとしても、こういう事実を知ってしまうから人気がない仕事なんだな
なんてことを思っていたが
おそらく違った
これは座学の内容をしっかり理解したうえで
適当は出来ない
軽い考えでやる様なことじゃないと深く思い知らされるのだ
重要度を高く設定するからこそ
専門性を突き詰めて質の高さを担保したいのかもしれないな
狩人全員が工作の仕事には必ず1度以上は行くと聞く
それは恐らく最前線でこれだけ頼りになる道具に対して
持っておかなければならない知識だと誰に言われることもなく理解するからなんだろう
座学は非常に濃い内容で終わったが
まだほんとに触り程度しか聞けてない様な気がする
もっと多くを学びたい気持ちになった
ラムーズ校長がタダッキニを「工作」の座学に毎度招集するのも
腐れ縁がどうとかいう理由ではないのだろうな
俺も効率が良いからと「開拓」に行くことだけを考えていたが
効率度外視で「工作」に行くのも良いかもなと思い始めた
夕食の時には食堂横の読書空間で
もうちょっと「工作」関連の書物を探してみよう




