第2章-30
「開拓」の座学が行われる教室へ着くと
中からはそこそこに騒がしく話し声等が聞こえて来た
開拓業務に携わるにはまず座学を受けなければならないが
それはどんな人間でも共通のことで
例えばさっき受けた発展講習を受けていたのは殆どが10歳の子供たち
しかし今回の「開拓」の座学では
開拓業務に携わりたい人間達
つまり大人も結構な数がいたりする
大人の殆どは既に学び舎で受けられる無料学習期間を過ぎてしまっているので
有料での参加になる
初歩の座学は
実は頻繁に開かれている訳ではない
それは受付業務やら何やらの処理にそこそこな労力がかかるからだ
俺達子供たちに与えられる無料期間は多方面からの支援で成り立っているが
別に潤沢な資金がある訳ではない
教員達も無償協力で働いている訳ではないので
確保できる人員にも限りがある
なので有料で参加したい人間をひとまとめにして
一度に一気に受けさせる
そうすれば臨時で座学の教員を雇っても十分にお釣りがくる
そんなわけで開拓の座学が行われる教室は
大会議室並みに広い教室で
そこに大勢の人間が集まっていた
特に「開拓」は人気な業務だ
重労働という点を除けば簡単な部類で
稼ぎも良いからだ
働き盛りな肉体自慢の様な大人が結構な数でいるな・・・
広い教室なのに
なんとなく圧迫感と言うか
息苦しさも感じる
子供たちが受けられる席は
教卓から近い前列の方に確保されているので
そちらの方に適当に座ろうかと見回してみると
入口から一番近い最前列に
あの給仕の女の子がいることに気付き
目が合った
俺は入口から教室に入って2歩くらいで立ち止まっていたので
若干後ろを振り返るようにして女の子に気付いたわけだが
その子はこっちをずっと見ていたようだ
ほんの少しだけ目を見開いてしまった
向こうは無表情でこっちを見ている
「(行くか?いや、さりげなく)隣に座っても良いかな?」
内心ドキドキしながら聞いた
女の子は小さく頷いた
「ありがと」
そう言って横の席に座らせてもらう
さっきまでの息苦しさはどこへやら
後ろが見えないだけかもしれないが
右の方からは清涼感が漂ってくるような気がした
「ねえ?」
「え?」
いきなり話しかけられて呆けた声を出してしまった
不覚
「あなた今朝走っていたでしょう?よく走っているの?」
気付いてたのか?
こっちを見ていた様には思わなかったが
「今朝みたいに走ったのは初めてかな?なるべく体力作りはしてたんだけど、今日から日課にしたくて」
そう答えると女の子は少し考えてから
「あなたが良ければ私も一緒に走らせてもらって良い?」
なんだって!!!???
良いに決まってる!!!
なにがどうなった?
分からんがやった!!!
極めて冷静に
「もちろんいいよ。朝でいいの?何か訓練しているようだったけど」
冷静になったつもりだったが
訓練しているのをじっと見てましたと言っている様なことだと
告げてから気付いた
きもくないか?
「私も基礎体力をもうちょっと鍛えたいの、あなたに負けたくないから」
女の子は特に気にも留めてないようだ
が
少し引っかかる言い方だ
好意的に見ているというよりは
敵対心の様なものも感じる
さっきまでアホみたいに浮かれていた気持ちが少し冷めた
自分に良いように解釈し過ぎてはいけないよな
大丈夫
繋がりは出来たんだ
単純接触効果
これからが大事だ
最初から上手く行くなんて思うな
「俺も負けないようにしなきゃね」
そう言って座学に集中するべく
筆記用具等を準備した




