第3章-19
「さてクロス、誰も居なくなって自由にスキルを使えるようになったわけだが、何をやるかもう分かるな?」
「木取りして荷馬車に積むんでしょ?」
「そうだな、だがちょっと問題がある。何か分かるか?」
「なんだろ?2人で全部サッサと片付けたらスキルが凄すぎるってバレること?」
「それもそうだが、そっちはまあ何とかなるだろ。それよりもだ」
父さんは枝を落とされ、樹皮も向かれた大経木に近付いていき
補助線を確認しながら手際よくサラッと切っていき
あっという間に幾つかの角材が出来上がっていた
素人目にも尋常じゃない速度なのが分かる
「ふう・・・、一先ずこれくらいにしとくか。クロス!こっち来い」
呼ばれて切られた角材の方へ行くと
断面を見せて来た
まだ鉋もかけてないから完全じゃないが
これが俺が切った断面だ
そして
今度は一つの角材に鉋をかけていく
綺麗な半透明の帯みたいな鉋屑が出来た
この鉋屑も売り物になるらしい
鉋をかけ終わった角材は
やはりド素人の俺が見ても綺麗な仕上がりだと直感的に分かるものだった
なんと言うか
光沢があってつやつやしている
「これで完成になる、けどこの角材はまだ乾かしてないからな、乾かしきってからまた切り直して鉋かけないといけないんだがとりあえずだ。クロス、お前もそっちの落とした枝でどの道具使っても良い、切ってみろ」
父さんが見繕ってくれた枝を切りやすい様に台に置いてくれて
そこでいくつかある道具から適当に選んで切ってみた
父さんがスパスパ切ってたから楽勝に思えていたが
細い枝を切断するだけでかなりの労力が必要だった
鋸は引っかかって止まるし
力を入れると逆に切れないし
難しい・・・
父さん凄すぎだろ
四苦八苦してようやく枝を切断できた
太さは俺の腕くらいの物だったが
時間はかなりかかってしまった
「ま、こんなもんだな。クロス!お前の切った枝の断面を見てみろ」
言われてみてみると
なんというか
ガッサガサのガッタガタ
触らなくても分かる
頬とか太腿とかに擦り付けたら血が出るくらいの荒れようだ
「我ながら酷い」
「はっはっは!そうだな!でもまあそんなもんだ。でだ、父さんの断面と比べてどれくらい凄いか分かっただろ?」
「うん。流石に俺みたいなど素人が切った木材なんて売り物にならないと思うけど、父さんがよっぽどすごいのは分かったよ」
枝落としされた枝
他の人達が切っていたものが周辺に散らばっているが
その断面を見ても
父さんが切ったものか
その他の人が切ったものかが一目で分かるくらいには違いがあった
俺と父さんとでは天と地ほどの差がある
「そこでだ」
父さんはまた枝を1本持ってきた
さっき切ったものよりも太い
「お前、これをスキルで半分にしてみろ、横にじゃなく縦にだ、その方が分かりやすい」
言われるがまま
結構な太さの枝を縦半分にするように
上半分を【空間転移】で横に移動させた
ガコン
と音を立てて少し台より上に出現した上半分の枝が落ちた
「見てみろ」
父さんがさっき自分で切った角材を持ってきて見せてくれる
それと
俺が今転移で真っ二つにした下半分の枝の断面を見比べてみて
異質さを感じた
「父さんこれ・・・」
「ああそうだ、クロスも分かったな?お前のスキルで木材を切断してしまうと、完璧すぎるんだ。一寸の狂いもない、まだ生きてるかのような切断面が出来上がってしまう。これをやってしまうと正直、俺の仕事も上がったりだ。この品質を毎回顧客に求められても、俺じゃ無理だな、最低でも今の俺じゃ」
なるほど
品質破壊が起こるわけだ
ぶっちゃけ父さんも起こした側ではあるだろうけど
父さんは本職
自分の体一つで出来ることは最大限できるし、出来ないことは出来ない
需要は高まっても供給が青天井になることはない
一方で俺はこの林業や木こりに傾倒は出来ない
俺のスキルを使えば確かに凄い断面の木材が作れるが
これを欲しがる人間の需要を満たすことが出来ない訳だ
「じゃあ俺が切らない方が良いよね」
「ああ、ダメだな。だからクロスには荷台に転移だけお願いしたい。それなら簡単だろ?」
「任せて!」
父さんとの仕事から
俺がスキルを使うことで弊害も起きることがあることを学んだ
なんでもやっていい訳じゃない
よく考えて
どんな影響が出てしまうか
仲間の助けになり
かつ
迷惑をかけないようにしなきゃならない
俺のスキルは
どこでもは使えない




