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俺のスキルが使えない  作者: めん
第3章

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第3章-16

大径木を切り倒すには事前の準備が重要らしい

俺達が現場に戻る頃には準備が大方終わっている状態だったが

切り倒される予定の大木には縄が繋がれピンピンに引っ張られている

こうすることで倒す方向を制御出来るみたいだ


今回の目的の大木は

幅だけで見ても大人を横並びに2人分ほど

高さは木々が生い茂ってよく分からないが

非常に高い事だけは分かる


幹には既に補助線と呼ばれるものが白墨によって書かれている


今は周囲の道具が邪魔にならない様に撤収作業中のようだ

それが完了し次第

父さんの出番のようだ


俺は危ないからと離れた所で見させて貰っている

万が一にも倒れる心配はないという方向に居るように指示された

まあ絶対ではないらしいが

縄で引っ張っている以上ほぼほぼあり得ないとのことだ


父さんが補助線の最終確認を行っている


「お前さん、ロヴィオさんの息子だってな!俺はダウコッチ。お前の親父さんとは何度が同じ現場で仕事させてもらってるんだ、よろしくな!」

「父がお世話になってます、クロスです。今日は邪魔にならないよう見学させてください」

「いやいや世話になりっ放しなのは俺の方だぜ?ロヴィオさんには頭が上がらねーよ。あの人が現場に来ると1日がかりの仕事が一瞬だからな。作業員の給料やら道具の賃借料が随分浮くってもんで、それに加えて仕事が丁寧で綺麗。仕上がりの良さから木材も高値が付きやすいし、ロヴィオさんの取り分を挙げても十分お釣りがくるんだ。お前の親父さんが何人かいたらってこの業界じゃ良く聞くぜ!」

「そうなんですね。きっと他の作業員さんの準備やらがあってこそですよ。いつもありがとうございます」

「かあーっ!ちょっと出来過ぎだな?クロス君、君はまだ10歳だろ?あまりに大人すぎるぜ。俺よっか世渡りが上手えんじゃねえか?笑。こどもはもっと気楽に生きろよな!」

「あはは・・・」

「それよりな、ロヴィオさんからお前に色々と教えてやってくれって言われてんだ。お前さん、興味はあるかい?興味ないやつに一所懸命話しても取り越し苦労になるからよ。聞きたいってなら教えてやるが」

「是非!お願いします!ダウコッチ先生!」

「へへ・・・。おうよ!先生に任せときな!」


この人凄くいい人だな


「まず、ああやって縄で木を引っ張ってるだろ?あれは倒す方向を制御するためにやってんだが、木ってのは真っ直ぐ生えてるように見えるが重心は傾いてることが多いんだ。なぜだか分かるか?」

「木の性格?」

「それもあるな、だが例えば日の当たり具合とか地中にでっかい岩があるとか、そっちの方が理由としては大きいな。だから倒す方向に切り込みを入れても倒したい方向には倒れてくれねえんだ。倒す方向が制御できなきゃ、まず危ねえ。それにその後の作業もし辛いし、他の残したい木を痛めることもある。だからあの縄はなんなら一番大切な役割を持ってんだ」

「大切な作業だとは思いましたけど、思ってたよりもっと大事なことだったんですね」

「ああ、それと木に白い線が引かれてるのが分かるか?あれは補助線って言うんだ」

「あれに沿って切り込みを入れるんですか?」

「その通りだ。デカい木ほど目測を誤りやすいんだ、太さが均一じゃないからな。正面から見ると太いが、横から見たら細く見えるなんてザラだ。それでも倒したい方向は決まってたりするもんで、適当な切込みだと大抵狂っちまう。だから綿密に計算して補助線を引くんだが・・・、今ロヴィオさんが結構修正を出してるの分かるか?」

「ええ、だいぶやり直しさせてますね。ダメだったんですか?」

「いや、ダメじゃねえ。今回の線引きやったのもこの道の熟練者さんだ。だが、一般的に安全を考慮した上での補助線引きだからな。ロヴィオさんには合わねえ」

「どういう事ですか?」

「言ったろ?ロヴィオさんの仕事は一瞬だって。そりゃ瞬きしてたら終わってたって意味じゃねえけどよ。普通にやる半分の半分の半分くらいの時間で終わらせるのがあの人の凄い所だ。大径木って言っても切ってるうちに耐久力は削れていくだろ?それを加味して段々と楔を打ち込んだり、縄を引っ張る力を強めたりして調整するもんだが、ロヴィオさんはそれが要らねえ。スパッと切って、縄をちょっと引っ張っておけばすんなり倒れてくんだ。だから補助線もロヴィオさん用の引き方をしなきゃならねえのさ」

「そりゃ・・・、なんというか家の父のせいですみません。あの人の仕事を増やしてるみたいじゃないですか?」

「安心しな。それはねえ。あの熟練の線引きのおっさんからロヴィオさんにお願いして勉強させてもらってんだよ。俺達は今その勉強時間を待ってやってる側だぜ?迷惑ってことはねえが、今皆に申し訳なく思ってるのはあのおっさんの方さ」

「・・・もしかして、父さんって結構凄い人ですか?」

「ったりめーだろ笑。今日集まってる奴ら全員、ロヴィオさんと仕事がしたくて集まった人間ばかりだぜ?交通費も宿泊費も自前で出してよ!それでも今日は過剰なくらいの人間が集まってんだ。お前は何の気なしに付いて来たかもしれねえが、恵まれた機会なんだぜ?この現場に居合わせられるってだけでな」


驚いた

そこまでか

父のスキルが有用なのは知ってたつもりだが

その道の人間からしてみれば憧れの存在だったりするわけだ


ちょっと見直さないといけないな

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