第3章-1
「俺のスキルは【空間転移】。転移っていうのは位置や状態が他の場所へ移動するって意味で、空間っていうのはつまり、物理的な概念を無視するって意味で捉えていいと思う。例えばこの落ち葉に俺のスキルを使うと」
拾った落ち葉を【空間転移】させた
「こうして目の前からどこかに一瞬で移動させたってことになるね」
「ん?だとすればクロス、・・・」
「そうですよ!クロスさんのお母さんは消えたんじゃなくて、ど、どこかにいるんじゃありませんか?」
「そうね」
「あっ・・・」
そうだ
俺は母さんをスキルで消したんじゃないんだ
スキルでどこかに転移させたんだ
俺は・・・
母さんを殺して、ない???
今まで具体的に考えない様にしていた
自分がやったことでありながら
直視すればするほど
塾考すればするほど
実感すればするほど
自分の心が壊れる気がしていたから
忘れてはならない事実であり
忘れてなければ平静を保てない
だからどこか客観視していた
するしかなかった
ここ最近はずっとやらなければならないことに没頭することで
目の前のことだけに集中できていた
頭の端には絶対に置きながら
目を向けることのない様にしていたこと
スキルで母さんの存在を消してしまったと
分かっているけど思わない様にしていた
だけどそうじゃなかった
転移させただけ
死んでない?
涙がツーっと流れた
「わ、わわっ」
慌てて頬を拭った
「あ、あははっ!いやいや・・・」
拭っても拭っても涙が止まらない
いつの間にか3人が近寄って来ていた
「恥ずかしがることなんてない。5歳から相当な精神的苦痛だったろう、良かったじゃないか?可能性は出て来たんだ。今は溢れてくる感情に任せろ」
ルートはそう言って肩に手を置いた
「よしよし」
タキは何故か俺の頭を撫でている
「よ、良かったですね、良かった、ですね・・・」
ナルは俺の正面で俺より涙を流している
改めてこの3人と仲良くなれて良かったと思った
暫くして落ち着いたところで
「クロスのスキルが【空間転移】だと分かったのは良いが、逆に大きな問題が出て来たな。それは、どこに転移させているかと言うことだ」
今日の走り込みはいつもと違って小走りだ
全員で話が出来る程度の速度で話をしながらと言うことになった
「クロスの母であるミナさんは俺も父経由でよく知っている。とても優秀な方だ。スキルの有用で強力なものであるし、どこかに飛ばされていても高確率で生きていらっしゃるんじゃないかと思う。しかしそれはどこなんだ?クロス、お前はスキルの発動の時に何か飛ばし先を指定してはいないのか?」
「してない。俺は自分のスキルで物体を消していると思ってたから」
「だろうな。であれば午後のスキル訓練では早速試してみよう、指向性が出ればスキルは精細に使うことが出来るはずだからな」
タキの鍛錬に強引に付き合わされる日々を繰り返し続け
ルートのスキル熟練度は結構な速度で発達している
使えばすぐに息が荒くなっていたが
今この走り込みの成果もあるのだろう
かなり長い間持つようになったし
スキルの効果も上がっていた
そのおかげでタキの鍛錬もより熱が入るようになり
どんどんルートも付き合わされると言う、良いのか悪いのか分からない循環が出来上がっていたが
余裕があるのであれば
そろそろ俺のスキルにもルートのスキルの恩恵に与らせてもらおう




