第2章-67
アプタン語はそろそろ習得したと言っても良いくらいの水準になって来た頃
これまで徐々に自分の生活に侵食していた前世の知識が
水道の蛇口をひねった様に一気にドバっと流れ込んだ感覚に襲われた
強めの眩暈がしばらく続いた
夜、寝苦しくて起きたすぐ後だった
寝汗でびっしょりになっていて体調でも悪いのか?と疑ったときだった
主に流れ込んできたのは
やはり自分が前世で使っていたであろう言葉の知識
そしてその知識に伴う周辺知識
痛みはないが
妙に脳が熱くなっているような感じがした
暫くすると落ち着いて来たので
起き上がり水を飲んだ
「大丈夫か?」
起こしてしまったようだ
ルートから声をかけられた
「ああ、悪いね起こしちゃって」
「構わんが、だいぶ苦しそうだったぞ?明日の朝は無理そうなら走り込みはやめとけよ」
「大丈夫、少しの間だけだったみたいだから、もう落ち着いて来た。それよりも俺のスキル名が分かったよ」
「なに?」
「それも含めて明日皆に話すよ。じゃあ明日も早いしおやすみ」
「おい!気になって眠れんだろう」
ルートからしばらく抗議の声が聞こえていたが
頭は疲労している様な状態なのか
眠気に抗うことが出来なかった
翌朝
夜中に一度起きたとは思えないくらいスッキリ爽快な気分で目覚められた
隣にはあまり良く眠れなかった顔をしているルートがいる
「おい、よくも中途半端なことを言って自分だけスヤスヤ寝てくれたな?気分は良いか?」
「ああ!人生で一番な」
得心がいったことで
俺の中に長い間あったモヤモヤみたないなものが一気に晴れていた
早くみんなに話したい気分だ
そして恒例となった早朝の走り込みの時間
俺とルートは早めに到着して柔軟などの準備を終えていた
ナルとタキが来てすぐに
「よし!走る前にクロスから話があるそうだ。ナルとタキは柔軟をしながらで良いから聞いてくれ。話せクロス!」
待ちきれないかのようにルートが仕切ってくれた
「ありがとう。皆聞いてくれ。実は、俺のスキル名が分かったんだ」
「えっ、な、なんでいきなり?」
「クロス、あなた一人で何か調べてた?」
首をフルフルと振って
「実はさ、多言語を学び始めたのがきっかけになったと思うんだけど、俺の頭の中にとある知識が流れ込んできていてね、ここ暫くの俺、妙な言い回しをすることが結構あったと思うんだけど皆心当たりあるでしょ?」
3人それぞれが
確かに結構そういう面があったという反応をしていた
「そのことで先に話しておきたいんだけど、俺どうやら、違う世界で生きていた記憶があるみたいなんだ」
「違う世界?」
「・・・」
「どっどういうことですか?この世界以外の世界のことを知っている、と言うことですか?」
1人だけワクワクしているな
「うん。多分、前世の記憶だと思うんだけど、この世界ではない世界で生きていたみたいなんだ。俺のスキル名はその世界の言葉で表示されていたみたいで、昨日の夜に前世の記憶が流れ込んできて分かるようになったんだ」
「お、驚きですっ!違う世界とは、海の外の大陸と言う意味ではなく完全に別の世界、ってことですね?」
「そうだと思うよ」
「すっ、凄い!!その世界ではあれだけ言葉も違う、ということですねっ。ど、どんな世界だったのですか?いえ、そもそもヒトとして生きていたんでしょうかっ?あ、でもでもじゃないとヒトの言葉は分かりません、よね?じゃあ、どんな・・・」
「待って待って、ナル。気になるのは分かるけど、それは追々話すよ。俺もまだ全てわかった訳じゃないしね。今は俺のスキルの話をして良いかな?」
「あっ、すすす、すみません。取り乱しました・・・。私はあとで良いです、絶対ですが。どうぞ」
ナルも俺達に対しては結構図々しくなった
良いことだ




