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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
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47. 加減注意

「フビッ!」


 勢いよく鼻をかむと血の塊が飛んで水路に落ちて流された。


 扉を開けて一歩進んだら地面が無かった。しかも割と高かった。死んだと思った。

 たたらを踏んでバランスを崩した後にあの珠玉(タマタマ)がヒュンとなる感覚に悶え苦しんでいたら、あっと言う間に水中にダイブしていた。

 幸いにも、落ちた場所が地面でなく水面だったのと、水底から湧き上がるカナヅチのエルドワーフすら押し流す水流で溺れなかったのと、大きなゴミを止めておく柵に掴まり、なんとか這い上がる事が出来たのだ。


「あんの屋敷、欠陥建築ってレベルじゃネェーなぁもぅ!(#・ω・)プンスカ」


 アメリカには悪霊の呪いから逃れる為に増改築を繰り返して二階に玄関があったりする屋敷があるのだが、少なくともそういう目的でないのは明白だ。たぶん点検業者をあの区画に入れる時に、中から梯子とか降ろして使う専用の勝手口だと思う。


 どうやら巨大な貯水槽に落ちたようで、外周部の(ココ)から下層に飛び出た代官屋敷をじっくりと眺められる程度に距離がある。

 屋敷の底は丸く、外に向かって四つの出っ張りが飛び出ており、その出っ張りに換気扇が設置されているようだ。さらにその下側、丸い底からは大量の水が滝のように轟々と音を立てて下の貯水槽へ排水し続けている。

 因みにここの光源は地べた(コンクリート製)に生えている光苔。水気の傍にびっしりと生えていて、それが地平の彼方まで続いている。さらにポツポツと苔の中からそそり立つキノコから、ポワポワと淡く光る胞子が立ち昇り周囲を一層明るく照らしている。

 吸い込んで変な病気になっても困るので、近くのは手で払い除けた。


 領館近辺なので防犯上、人が少ないのはまだ分かるが警備の人間すら居ないのは上での騒ぎの所為だろうか? 道を尋ねることも出来やしない。

 最初は食事に誘われて宴会に参加したつもりが訳の分からん争いに巻き込まれて最後は水に落っこちて流されて、まるでウ〇コだな。

 溜息をつこうと息を吸ったら……自分からもヤバい臭いがする事に気付いた。


 周囲を見回すと天井の方からはまるで柱の様に降り注ぐ排水があちらこちらに点在し、苔生したコンクリートの通路と合わさってダム見学に行った時の様な懐かしさを感じた。

 そして地上へ降った排水はすべてが同じ方向へ流されるように水路が設けられているようだ。

 その中にもの凄く湯気を上げる水路を見つけたので近くへ寄ると、思った通り風呂湯の排水で、濁っちゃいるが生活排水に比べれば悪臭と言うほどではない。

 急いでいるがこんな格好で街に入るのは流石にアレ過ぎる、服を着たまま浅い水路に飛び込んでひと泳ぎしてみた。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ あ(*´Д`*) あ あ はあああぁぁ~」


 気持ち良い。あったかいお湯の気持ち良さもあるけど、誰の目も気にせず“服を着たまま”思い切り“飛び込む”、この背徳的行為と相まって心身共に爽快感で満ち溢れた。



 自身が熱源になって服を乾かしながら水路を下っているとやがて巨大な穴が目の前に広がり、底には巨大な堀に囲まれた巨大な壁が様々な人々の生活を孕んで(そび)えていた。

 領主の屋敷が塀の外にあるのも変な話だが下層に在って無いような物だし、この辺りには水路以外にはほぼ何もない更地みたいな場所なので誰か居たら返って目立ちそうなので問題は無いのだろう。


 階段もあったが梯子で降りて更に近づくとその巨大な壁には鉄格子付きの小さな窓が無数にあり、しかもそのほとんどから明かりが漏れている。あの壁の内側の中心に目指すべきダンジョンへの入口がある筈だ。

 それはいいとして、この堀、どうやって渡ろうか。水の上を歩ける靴は自分で壊しちゃったし、カナヅチだから泳げないし、そんな訳でまずは堀の外周を一周してみることにする。


 小走りを始めてすぐに壁の端っこから小舟を担いだ2人組が現れて、こっちに向かって声を掛けて来た。


「おーいそこの! エルドワーフという名前か? もしそうなら一旦止まって待っててくれ! すぐ迎えに行く!」


 良く通る声で話し掛けてきた人は、2人組みで担いでいた小舟を片手でポイッと堀に浮かべて櫂を差すと、音も無くススーと堀を渡って来た。堀の幅が40~50M程あるが、あっという間に近付くその姿は金属がふんだんに使われている鎧なので街の衛兵さんだろう。


「待たせたな。一応本人確認をしたいんだが、何でも青切符(ブルーパス)を持っているそうだな?」

「コレですか」


 バンバーからこっちのバンバーへ渡る際、湖を渡る船の船長から貰ったカードだ。荷物持ち込み無制限の永久無料券だ。。


「ほう、確かにこれはデキリンの字だ。いや、疑ってすまない、デキストリン船長は俺の義弟でね、末っ子の旦那なんだがその縁で俺も同じ物を持っている。ギンゲロールだ、よろしく。で、急ぎなんだろう? さあ乗った乗った! 飛ばすからしっかり掴まってるんだぞ」


 矢継ぎ早に捲し立てられてて小舟に乗せられると舳先にロープが括り付けられているのに気付いた。それを辿って視線を上げていくと、先程はこちらに来なかったもう一人がロープを手繰り寄せながら徐々に魔力を高めているのを感じ取った。

 思わず振り返ると既にギンゲロールはどっしりと座り両手で縁を掴んでいる。


「チンケな船だが気にするな、イェナ様直々の命令だから経費で落ちるさ。それより、出発と着地の衝撃に備えるんだな」


 ゾバッッァ―――ン!!!


 言い終るのとほぼ同時に水面が爆発した。ロープを力任せに引っ張って舟が水面からぶっ飛んだ衝撃によるものだ。


「あいつめ、強く引き過ぎだ」


 声のする方を見ると何故か腕を組んだギンゲロールが上下逆様で浮いている。

 小舟は爆発と同時に木端微塵になっていた。ま、飛ばすとか言った時点でそうなる予感はしていたけどね。


「重ねて言うが本当にすまないエルドワーフ君。着地の保証は出来そうにないが最大限の力を尽くそう………なので、この事はイェナ様には黙っておいてくれまいか?」

「イイヨー、ダイジョウブダイジョウブ~」


 一瞬、ボルト氏にチクって弁護士を用立ててもらってから慰謝料をたんまりふんだくろうかと考えたが、面倒なのでもう許す。


「貴方ノ顔ト名前ハ憶エマシタ」

「うん、まぁとにかく、丁度良いからこのまま壁の中まで飛ばす! なるべく大通りの中か近くに落とすが、その道を下層の中心に向かって突き当りまで進むとダンジョンだ! そして、必ず! 赤い屋根の商店に寄るんだ、いいな!」

「ハ、ハイ」

「イェナ様も心配していたが、幾ら強かろうと丸腰は! 駄目! で、子供は! 頼れ! 大人を! そして、負けるな! 若人! 死ぬのは一番許さん! “声量殴打(ボクシングボイス)”」

「グブッ!?」


 たとえ誤魔化しの激励でもちょこっと感動しかけてたのにいきなり魔法でぶん殴るなんて!? 人間不信になりそうだ。しかし一瞬呼吸困難になっただけでダメージはほぼ無かった。ほぼ。

 更に下から物凄い勢いの突風が吹き荒み、相乗効果で壁を越えて街を目の当たりにすると、想像以上の規模に驚愕した。ドルモア卿のバンバーが村なら、ここは名古屋並の規模に見えた。

 ところが勢いが止まらずそのまま数秒間程上昇し、自由落下を始める頃にはジェットコースター並みの速さで飛んでいた。


「やっぱり弁護士呼んで訴えようかな」


 着地に備えて魔力を纏いながら、ついぼやいてしまう。


   __________



「強く引き過ぎだこの野郎!」ブンッ

「いやぁそうは言いますがね隊長、思った以上に重かったんですよホント。太りました?」スッ

「ダイエット中で太っとらん。だがお前もそう思うのか」

「始めは一時的に太るそうですからこれから減りますよ、きっと」

「くどいぞ! 重いのはあの子どもだ!」

「ハイハイそうですねぇ。隊長も攻撃魔法で押し上げていましたし、ドワーフのハーフですかねぇ?」

「事実そうらしいぞ。オマケに身体能力だけなら俺ら騎士にも及ぶらしいしな」

「ハハァ―! なら壁を越える高さでもきっと大丈夫そうですねぇ?」

「そう信じたいが、子どもだから悪魔(マクドワイズ)が如何にかするだろう」

「無責任な……その子に無茶を強いて、後で訴えられても知りませんよ」

「ゥグ、急ぎだって言うしイェナ様からもその(ごにょごにょ)……」

「ほら隊長、まだ仕事が残ってるんですから帰りますよ」

「おう! 飲むか!」

「仕事っつってんでしょーが」

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