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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
38/54

36. まだ泥仕合

エルドワーフ主観の34話の続きです。

9/8 文章が中途半端だったので追加修正ごめんなさい

それと33話goddamnを@+しました。内容は閃光爆弾です。

9/9 話の腰を折るのと長いので最後の金的以降を消しました。消えた文章は次回の冒頭へ移植します。

 突然の緊急事態に無意識に爆発的な量の魔力を頭蓋に集中させるものの、エルドワーフの脳裏には走馬燈としか思えない白昼夢を目の当たりにしていた。


 その景色は木漏れ日の中で無理矢理に舗装された道だ。道はやがて突き当たり、丘と窪みでボコボコの草原を前に感動を覚えて、柔らかで足の長い草を寝床に微睡むのだ。そうして意識を手放しつつある時………


 ビチィッッッ!!!


「フンガァ!!!!!」


 忘れちゃいないさ、あの時の衝撃・痛み・痺れ……それに比べたらこんなもん屁でもない!


 汗とは違った生温かい液体が眉間から零れ落ちる。何をしていたのかがわからなくなったが、直後に後頭部、背中、腰に受けた衝撃により意識を回復させた。

 魔力の集中していた頭部と被服している腰の辺りには大した痛みも無いが、挑発して服も鎧も着ていなかった背中の素肌がジンジンと痛む。


 まだ空中を滑空していたが、着地地点のバルコニーにチラッと目を遣ると、そこの机の上に水差しが置いてあるのを見つけた。

 今一番欲しかったものを見つけた嬉しさで気が緩んだのか、バルコニーの縁に膝をぶつけて椅子を巻き込みながら盛大に転がるが、全く気にした様子を見せずに立ち上がった。


「もらうよ!」


 言うが早いか素早く水差しに飛びつき、顔を上げて口は大きく開いたまま頭から水を被った。


 ジュ! ジュゥ~ ゴクゴク……


 素肌にぶつかる水は激しい音を立てて蒸発するが、それに伴って体温は急激に冷やされ頭はスッキリ、喉も潤されて絶好調!


「ご馳走様!」


 一瞬で空になった水差しを上手く机の上にストンと投げ置き、水差しがフワッと浮いてる間にはもうUターンして舞台の上へと戻っていった。濡れた身体は冷えて尚高い体温と風圧で着地する頃には乾いていた。

 着地の衝撃で背中の2ヵ所ほどに若干の鈍い痛みが走るので、恐らく痣にでもなっていそう。


 「さて、仕切り直しとしますか」とでも言おうと口を開くと、その口目掛けて何十発もの銃弾が雨霰の如く大量に襲い掛かって来た。

 咄嗟に腕で防御するも、最初とは比べ物にならない重みと痛みが圧し掛かる。一歩二歩と後退った所で何とか持ち堪えて見せて再装填(リロード)の隙を待ったが、射撃は止むどころか更に連射速度を上げて視界を塞がざるを得ない位置へ撃ち込まれ続けた。


 さっきから気にはなっていたけど、やっぱりあの拳銃は再装填の必要の無い物であるらしい。銃口の大きさから目測で弾倉に入る弾数を考えれば、とっくに撃ち尽くしている筈なのだからそういう事なのだろう。ズルい、金持ちの魔法道具ズル過ぎる。だがしかしあんな小っちゃな銃で機関銃(マシンガン)並の連射を続ければその内に銃本体がガタガタに摩耗するに違いない。


 そんな考えとは裏腹に喧しい射撃が途切れる気配は一向になく、そうと悟れば方針転換を図って脳に注ぐ魔力を防御力に転換する。


 脳力強化で見える世界は意外と目を酷使する、しかも脳力強化は便利な反面、現状の他の能力と比べて圧倒的に過剰な性能を発揮するのだ。それなのに音速を越えて処理される情報の中で耳はあまり役には立たない。だがその耳こそはエルドワーフの持ち味の筈であり、宝の持ち腐れという事になる。

 という訳で実戦の中で脳に使う魔力は8%の出力も有れば十分だろう。

 それよりも今必要なのは防御力だ。馬鹿みたいな連射性能の癖に骨身に染みる激痛に耐えるには、いつもの調子で限界回転(フルスロットル)まで引き上げても一杯一杯。

 鎧化のコツを掴んだとて更に自分のモノ(・・)にしなければ、負けはしなくとも勝つことも出来なさそうだ。


 頭の中で音のボリュームを調節するように魔力の差配を変えると、今までのスローモーションの景色が俄かに加速してコップを地面に落とした時の様な感覚に見舞われた。『あっ!』と思った瞬間はゆっくりに見えても既にコップは落ちているあの感じ。

 これまで感覚的に一発一発に対して歯を食いしばって耐えているのに身体は付いて来なかったのが、連続する打撃の塊に対して痛覚が麻痺して却って辛くなくなった。序に聴覚にも魔力を流し込めばこの絶賛大音量の発砲音の中でもエルドワーフの鼓膜はしっかり機能し、アルトが銃を持つ手とは逆の手に何かをギュッと握りしめる音を聞き分けることに成功した。


 まぁ~た閃光手榴弾(スタングレネード)か? そう何度も同じ手を喰らう訳無いっつーの! 今度は引っ掛かったフリしてぶっ倒してやる。


 そうして待ち構えながら五月蠅(うっとうし)い銃撃に顔を顰めているとアルトの野郎が動き出した。その最初の一歩を踏みしめた足音を地獄耳で拾い、その方向へ向けてアメフトの如きタックルをお見舞いした。


「い″ッ!?」


 勿論アメリカンフットボールなのだから上半身には頑丈な鎧を着たイメージをした上で飛び掛かったのだが、ギリギリでひらりと躱され、しかも腕には赤い一本の線を付けられたのを見て切られたのを悟った。


「丸腰相手に銃もナイフも使うなんてそりゃ無いぜぇンブッ!?」


 聞こえたのか如何か分からないがおまけにほっぺに一発クリーンヒットを喰らい、そしてまた息つく暇も与えないとばかりに連射が再開した。


(痛でででで! クソッ! ガード中でも銃弾に晒される表面とそうでない裏面が表れる。つまりさっきの切創は防御の効率化を図って必要な面だけに集中していた隙を突かれたという事。イメージがぬるかったんだ…なぁ!!)


 また切りつけられるのを警戒して身体の向きや姿勢を変えようとするとフェイントを仕掛けて来るようになった。味を占めたのか内腿や二の腕等の絶妙な部分を狙って当てている。だがその瞬間は視界を確保する余裕が生まれるので反撃のチャンスでもある。

 また不用意に飛び込むのも馬鹿らしいのでパンチやキックを繰り出すも結局は当たらないのだが、警戒した分だけ考える余裕もできた。


 鎧と一口に言っても種類は様々でコンセプトも違う。漠然と思い浮かべた鎧は、動き易さと軽量さが重視されて要所だけは守る感じのアメフトやアイスホッケー、剣道の防具等の必要な箇所を必要なだけしか守らないスポーツ用品。一見重装備でも身体の前面だけだったり服や他の防具に隠れて分かりづらいだけで省かれている箇所が結構あったりする。


 そして漠然からよりしっかりと思い浮かべればやはり日本式の具足だ。大小の鉄板を紐で繋ぎ、それを更に鋲や紐で結び付けるラメラーアーマーという種類だ。しかし剣道の防具よりずっと重装備であるが、事、防御力に関しては西洋式の金属甲冑には見劣る。

 だからといって魔法鎧を西洋式でイメージを組み立てるのは何か違う気がする。何というかピンと来ない、鎧は革製だが持っているものの、具体的な防御力を体感した事はイマイチ無い。魔導原動力(マナエンジン)と違い防御性能のイメージがつかないのも大きい。なんせ前世で甲冑を身に着ける機会なんて皆無だったからね。


 となると代替案が必要な訳だがこればっかりは平和な世界の平凡な男の子から転生した俺には手製の鎖帷子が限界だ、それもリストバンド程度のものである。

 だが俺は開き直って逆転の発想を閃いた。それは………生身の肌だ。

 それもただの人間の肌ではない、エルドワーフの(・・・・・・・)肌・筋肉・骨、これらは前世の自身では及びもつかない頑丈さを秘めている。


 超蛇(レイク・サーペント)との戦いで前世の自分から生まれ変わったつもりだったのに、結局は前世の知識に頼って愚考していたのは何と皮肉な事か。お陰で当たり前の現実に気付くのに時間が掛かった。

 防御の性能云々とか限界を決め付ける真似は前世の常識に引っ張られた悪い癖、何だかんだで一番信頼が出来るのは自分自身(エルドワーフ)だ。


 そんなエルドワーフ()を信じるならばこんな程度でくたばる訳が無いし、エルドワーフの身体能力の限界を理解していても魔法()の限界までは理解していない。ならばまだまだ強くなれる筈だ。

 頑丈な自分(エルドワーフ)に対する自信をそのまま魔法鎧にするイメージだ。個人としての自分よりも両親(エリーとバウロ)の特徴を受け継いだエルドワーフの肉体が備わっていると思うと、身体の芯から力が漲って来るようだ。


 腕にめり込み、歪な板状になってくっ付いていた鉛弾が後続の新しい弾丸によって何度目になるかわからない(数えてなかった)崩壊で露わになって最初の一発、強く突き飛ばされる勢いは相変わらずだったのに痛くはなかった。

 更に体勢を崩すのを狙った攻撃を受けてもビクともしなくなった気がするし、フェイントを仕掛けられてから反撃までの間隔も縮められた気がする。


「フンッ!!」

「チッ!?」


 速度重視の攻撃でも掠りもしなかったが、やっと仰け反らせる事に成功した。

 これだ、この感じで間違ってないのだ。


 段々と手応えが良くなってくるにつれてエルドワーフのイメージも確固たるものになり、相乗効果で弾幕に向かって行く余裕すら生まれた時、アルトは次の行動に移った。

 フェイントを諦めて寧ろ積極的に体勢を崩す為に狙いを顔と下半身との交互に攻撃するようになった。そうすれば必然的に反撃もし易くなるが、アルトの退避距離も大きく取られるようになった。この時エルドワーフの耳で捉えたのはナイフを握る手の動きであった。

 今度はナイフと筒状の何かを同時に握っているようで、それが閃光手榴弾か? と思った矢先に小さな栓を抜くような音が聞こえて確信に変わった。これは何か仕掛けて来る気だな。

 その証拠にアルトの心音が大きくなり、何より首筋のピリピリとした予感が表れ出したからだ。

 直後、脚を止めて迎え撃つ格好になったアルトだが、気付いていたエルドワーフは冷静に右ストレートを傷一つ無い顔面へ繰り出した。


 ガシィッ!! スポンッ


 思ったより頑健な手応えに驚くのも束の間、やっぱり狙ったかのように顔面に向かって銃の弾倉が抜け落ちてきた。

 さっきまでの防御に徹していたならまだしも、銃弾でないとわかっていても無防備な顔に物が向かってくると無意識に目を閉じてしまう。


 そして突然周りの状況がわからなくなってしまった。




 と、いうのは耳に限った事で、目は全然大丈夫。

 驚いたのは目を閉じていたのに開けている時と同じ位に眩しさを感じた事だ。

 それなのに何故視界は無事であったか? それは閉じた瞼の下で白目を剥いていたからだ。

 懐中電灯を目に押し付けて点灯すると、眩しくはなくとも物凄く明るい。だから保険として光源から明後日の方向に目を()けただけなのだ。

 細かい話も付け加えると、光は物に反射して色を見せる。白色は全ての光を反射し、黒色は逆に全ての光を吸収する。肌色は肌色に見える光を反射して他の色の光を吸収、通過させてしまうと思ったので眼球の白眼で閃光から目を守ったのである。

 あれだけ明るかったら目を閉じるだけでは意味が無かったかもしれない。


 そして事態は間髪入れずに次に移る。


 アルトが今日一番の精密射撃で落とした弾倉を射抜いたのだ。わざとらしくならないように気を付けながら開いた目が眩んだフリをしていると、突如として弾倉から溢れ出す夥しい数の薬莢が足元を瞬く間に埋め尽くすのが見えた。


 地面に両足着いた状態で上から転がり易そうな何かで埋め尽くしても、足を上げなきゃ効果は無い。ちょっと考えれば判りそうな事だけど、見え見えの策略に敢えて乗っかってみた。


 まず片足の踵を少し上げて弾を踏んだら、前方へ派手に蹴り飛ばす。この時の重心は残した軸足にあるが、脚に掛かる負担を使って膝カックン! そして倒れないように前へ出した足を摺り足気味に地面を抉りながら後ろへ蹴る。気を付ける点は軸足は絶対に地面から離れない事、最低でも爪先程度は残しておきたい。そうすればきっとやじろべえの様に見えたかもしれない。


 これだけ迫真の演技を魅せれば信じてくれたようで、異常の無い両目を遣ればいそいそと何やら準備に追われている様子。相当焦っているのかそれとも確実な動作を優先しているのか、こちらには目もくれずに服の下を弄っている。


「よっほいさっ!」


 片脚の屈伸運動だけの一足跳びで弾丸地帯を脱出する。着地地点はアルトに手を伸ばせば届く位の距離だ。


 何をしているのかと思えば新しい弾倉に換装したいらしい、しかしなんとも優雅と言うかゆっくりと動いて見える。否、銃弾の速さに慣れ過ぎて生身の動きに脳が混乱している、のだと思う。


 今の状態は懐から弾倉(マガジン)を取り出し、向きを間違えないように確認しつつ差し込む所で、銃自体には一発の銃弾も残っていないのが確認できる。


 アルトの使っている拳銃は、撃ち尽くすと上部の遊底(スライド)が後ろに下がったままになる。弾が無くて撃てないのは当然ながらこの状態だと構造上、銃の内部が露出して無防備になる。

 遊底は反動(リコイル)を利用して空薬莢を排莢したり、弾倉に弾が残っていれば内部のスプリングの力で遊底が元の位置に戻る際に次弾を装填したりする(反動で排莢と装填を同時に行うものをブローバック方式という)。その為遊底が下がると薬室(チャンバー)という薬莢を爆発させる部屋が一瞬又はずっと開放される。この薬室が汚れたり異物混入等で爆圧を保てないと、破損や暴発、弾詰りの原因になる。射撃中は一瞬でも外気に触れるし、今の様な弾切れ状態だと開きっぱなしの排莢部からゴミなどの異物が入り易くなってしまう。

 例えばそう……小指とか。


 ズボッ ガッ! ビキッ!


 排莢口に指を突っ込むと同時に弾倉が差し込まれた所為で、タイミングも丁度良かったのか先頭の弾丸を指で潰してしまった。オマケに何かが割れた様な音も聞こえたし、遊底が元に戻ろうとして小指を噛んでしまっていた。


 これには流石に面食らったアルトに対し、今まで散々好き勝手にしてくれた()礼を込めて左拳を握り締め、耳よりも目で理解しやすいよう口の動きを強調して言った。


「衣服が乱れてますがもう光らないのですか?」


 ゴッ!!!


 その呆けたキレイな鼻っ柱をついにぶん殴ってやった! がしかし思ったよりもダメージにはならなかった。

 なので立て続けに2度、3度目と振りかぶった所で急に右半身が重くて動き辛いのに気が付いた。


魔吸材(マナスポンジ)か……!?」

「……そうさ、魔吸作用のある希少金属“青鋼(ブルーメタル)”製の弾頭だ。直接触れなくても魔力を吸収していく高級品だぞ」


 そして3度目の左拳はあっさりと受け止められ、鼻を赤くしたアルトが不敵に笑ってこちらを見つめていた。


「不幸中の幸いにして形勢逆転だ。思った通り魔法体術(マジックマーシャル)であんな事をしていたんだな、それもちょっと考えられない水準の魔力量で? だがもうお終いだ」


 ズガッ!!! ゴッ! ゴッ! ゴンッ! ガシッ


 今度はアルトが反撃に出て、頭突きからナイフを握った拳の殴打の後にエルドワーフの肩を掴んだ。


「これで止めだ……」


 右足の踵をエルドワーフの顎先にあてがうと、そのまま首を回転させるように思い切り踏み込もうと力んだ直前、エルドワーフは挟まれた右小指から最も遠い左足に魔導原動力(マナエンジン)を集中させて、無我夢中で蹴り上げた。

次話で決着予定(願望)

因みにアルトのベルトや衣服には魔吸阻害加工が施してあります。

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