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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
36/54

34. 弾丸格闘デスマッチ

8/8 34話と35話の順番を入れ替えました。内容に変化はありません。

少し戻ってガッデム宣言直後のエルドワーフ視点です。

 神様に物申す前に、受けた借りに蹴りを付ける。


 御託を並べて反則を躊躇しない奴なんて大っ嫌いだ、冷静に且つ効率的にボッコボコにしてやんよ。

 実弾撃ってくるとか反則云々どころの騒ぎじゃないが、エリーのデコピン程ではない。それでも今から行われるのは反撃という名の意趣返し、テメーの玩具は使わせないつもりだからそこんトコロ夜露死苦。


 攻撃の際に左足で踏み込めるよう調整し右足で地面を思い切り蹴る。


 キュッ パァン!


 肩から先を鞭の様に(しな)らせた張り手(ビンタ)気味のラリアットが虚空を叩く。反動で右手の指先の爪の間がビリビリ痺れる。


 スゴイね。ギリギリだけど今のを見切ったよ。こりゃあ俺も頭に気合を入れて対処しなくっちゃあグッ!?


 エルドワーフの右側へ回避したアルトは即座に反撃し、銃弾が右頬、右肩、右腰の三箇所にめり込む。


 ~~~!? 一瞬で反撃されちゃった。やっぱり一瞬の判断・反応それから勘が俺よりも鋭い。その証拠に回避と攻撃を同時に行った上、全弾命中させているんだからくやしい。

 クソ、速攻で心の公約破っちまった。いや、気を取り直して今からという事にしよう!


 レガリア卿との一戦で身に着けた“脳力強化”でまだ転がってるアルトとの距離を目分量で計算し、今度は左足から数えて3歩目くらいに合わせてぶっ飛ばすつもり。

 そしてその3歩分の勢いを十分に乗せた右のハイキックは、微かな手応えを感じるもまたまた失敗。

 (#^ω^)ビキビキ……


 次は横に回り込んで足払いを掛ける。足元ではなく膝裏を下から掬い上げる様に後ろ回し蹴りを放ったら遂にヒットした。

 面白い位の高速バク宙をしている顔を目で追うと、右眼と右耳から血を流した状態で訳が分からないと言いたそうな顔を晒していた。全く当たっていなかった訳でなくてちょっとだけスッとした。

 着地した所を追撃しようと身構えてたら、透明なガラスの筒が零れ落ちたのに気付いて、何かキモイから距離を取ったら目の前が真っ白に染まった。


 うぎゃあああ!? 閃光手榴弾(スタングレネード)!? 目が、眼がああぁぁ~!!?


 なんてみっともない叫び声は心の中にしまっといて、目は兎も角、耳のダメージが深刻だ。今ちょっとでも動いたら、そのまま倒れてしまいそうなくらい三半規管が狂ってる気がする、とにかくとても身動きが出来ない。


 ていうか何で手榴弾なんかを持ち込んでいるんだ!? 閃光手榴弾が非殺傷だとしても、それ以前に拳銃を持ち出してる時点でおかしくないか? 警備員仕事しろ!


 ピクッ…ピクピクン!


 フラグというやつなのか、左側の首筋の第六感(警報装置)が痙攣する。今までの経験上、()は対応を間違うと致命的な危険に晒される前触れだ。だけれども逆に今無理に動こうとしても息するか瞼を瞬く程度が限界、こんな状態の時にする自己防衛と言ったらアレ(セルフバーニング)しかない。

 自爆覚悟になるが結局のところいつもの事だ。だったら逆に練習がてら利用しよう。“禍転じて福と為す”のだ。


 身体魔力の循環比率を内と外で逆転させる。内と外とは気功の事ではなく、筋肉と表皮の事だ。内は立っていられる限界まで魔力を減らし、外は逆に内で減らした分をそっくりそのまま投入。ただし鎧を身に着けるイメージではなく、無償奉仕活動の時にも練習した人間暖房機(マンヒーター)を思い出しながら魔力制御のイメージを固める。

 自分の身体全体に対して循環魔力をなるべく無駄なく隈なく滲ませる、頭から爪先は当然のこと、耳たぶから玉袋にだって意識を集中。ここまでは下準備だ、以前に焼身自殺(セルフバーニング)を行った時はこんなにも落ち着いてはいられなかったし、魔力も覚えたてだったのだ。その後もバウロとのやり取りで限界まで放熱した際も未熟を指摘されていた。昨日の今日で自分がどの程度魔力に習熟しているかなんて高が知れているが、グチャグチャ頭で考えていても実はまだ瞬き2回半分の時間しか経っていない。


 今回と前回までで決定的に違うのは“脳力強化”で考え(覚悟)る時間がたっぷりと確保出来ている事。今日の大厄日でエルドワーフの戦闘力は大躍進の成長ぶりを発揮していた。


 戦闘中だが現在の総魔力量は平常運転(アイドリング)値だ。これから必要以上の魔力を生成するが現在制御している以上の魔力制御は全くしない。溢れるならそのまま放出させて更に練り上げ続けるつもり。

 これまでで最多基数の魔導原動力(マナエンジン)を全身に載せられるだけ想像力を働かせる。身体の太い部分にはガスタービン、腕や脚にはディーゼル、頭や関節にはロータリー、ついでに(ムスコ)にはパルスジェットを、(きくもん)にはモータージェットを搭載!

 名付けて“爆熱無責任垂(ガン)れ流し連続放()出スペシャル(マリ)状態”だ!



 周囲の景色が大きく揺らめく。温度の極端に異なる空気同士が混ざり合い光が屈折しているのだ。しかしエルドワーフにはそんな事は分からなかった。何故なら閃光で焼き付いた眼球が捉えているのは光ではなく、魔力だった。


 その時アルトは指を火傷して怯んだが、エルドワーフも混乱状態だった。



 膨大な量の魔力を目・視神経・脳の視覚野に一気(・・)に通すと、通した魔力と同じ属性の魔力を目で捉える事が可能になる。この一気の勢いの所為で“地均し(グラウンド・クロス)”並の高度魔法とされるのが“一気通観(ストレートフラッシュ)”である。

 エルドの知識に工学は有れど、エリーに叩き込まれた錬金術の知識を除けば、この世界の多くの知識が未だ不足している。一例として魔法に関する知識とそれに纏わる魔法医学などである。なので多少(・・)の混乱は無理からぬことであった。

 そしてエルドワーフの通した魔力の属性は“火”。それは偶然にもアルトが得意とする属性であったのだが、自分でばら撒いたのも同じ属性であったので、視力の回復する数()後まで濃淡の違う赤い世界に戸惑うしか出来なかった。


_ _ _ _ _ _ _ _ ______________



 何か変なのを見た気がしたけど後回し、とりあえず首筋の痙攣は治まったので危機は脱したようだ。


 一瞬の混乱で集中力を乱した所為で覚悟の割には短い間しか焼身出来なかった。体感的には数秒かもうちょっと長い間魔力を放出していたと思うが、頭上の水球の揺らめき具合から記憶との誤差の少なさにコンマ数秒間しか経っていないことに気付いた。

 そんな一瞬程度の時間で非常な高温に熱せられた空気が元に戻る筈も無く、お互いの姿を見ることすら困難なこの場所は、短時間なら大丈夫だけどすぐに窒息死してしまいそうだ。


 すぐに転がるようにして飛び出すと自分の無用心さに驚いたが、幸い何故かアルトまでもが放心状態で突っ立って居たのにはもっと驚いた。しかも背中を向けて。

 そんな無用心を通り越して別の事に気を取られている様な仕草に無性に腹が立ったので、丁度良い距離と位置にある床の穴の縁に足を掛けて、爆発的な脚力を(アルト)が行ったのと同じ要領でその無防備な横っ腹に跳び後ろ回し蹴りをブチかました。


「ファー!」


 まるでゴルフボールの打球の様な勢いで吹き飛んだ先は、如何やらここから3階上のバルコニーにホールインワンしたらしく、しかも女性が居たのか甲高い悲鳴が上がった。一応『ファー!』って叫んだけど、ゴルフ知らなきゃ意味無いか。


 そんな事より悪いことをしたと思う反面、身体の調子が恐ろしいほど絶好調だ。この感動は初めて魔力に目覚めて自由自在に歩き回れた時に匹敵するかもしれない。

 なんせ死ぬ気で展開した超高温の魔力空間を簡単に通り抜けておいて無傷だし、変なのが見えた後だけどいつもよりも遠くが見える気がするし、何より今まで悪戦苦闘していた魔力の鎧化のコツが掴めた気がする事だ。

 今までは血流に沿って循環させていた魔力を、全身から放射状に滲ませるのが最適だったのだ。


 これならどこを撃たれたって跳ね返してしまいそうだ。オラオラ矢でも鉄砲でも何でも来いやー!


 そんな風に調子に乗っていたらそのバルコニーからピカッと光が放たれた。

 しまった。アルトには回復魔法があるのだった、その効果は霊薬(エリクサー)に匹敵する。そもそもこんな所で油を売ってる暇はないのに、あんな事許してたら長期戦に突入するのは火を見るよりも明らかだ。


 光を見て直ぐに飛び出した。その場で跳んだにも拘わらず真っ直ぐにバルコニーへ到達する勢いだ。

 だがバルコニーまであと半分の距離に迫った時、不意にバルコニーの縁からアルトが身を乗り出し、間髪入れずにエルドワーフの顔面に銃弾を撃ち放った。



 ビキッ!!! メリメリメリ……



 それまでとは一線を画す凶弾が頭蓋にぶつかり、骨を破壊し脳漿へ進撃する衝撃が体内を通じて全身に響き渡る。

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