33. God damn @+
9/8 あとがき追加
パン!―-…
煙と…花火の燃えた臭いが漂う。うるさくはなかったが、刹那に見えた光と臭いでまたしても不意撃たれたのは理解した。
何今の、何処に隠し持ってた? 何だっけ、ガバだかベレだか夜店のおみくじの景品によく並ぶエアガンの形状っぽいな。
今のは完全に油断していた、もう蹴りが付いたと思っていたし、まさか素手の勝負に飛び道具を持ち出すとは思わないもの。
流石に驚いて凝視していたら急な立ち眩みが……
グラ… ガクッ
「ァコっ……アゥワホ?」
なんとただの威嚇射撃かと思ったら顎を撃ち抜かれていて、血と涎が清水の如く流れ落ちる。
顎が外れた程度で済んで喜ぶべきか反応に困るが、衝撃による脳震盪で思う様に力が入らず膝から崩れ落ちた。
「拳銃すら効かなかったら最後の手段に頼る所だったが……使う事にならなくて良かった」
アルト君は脂汗でびっしょりの顔を歪めて苦笑いを浮かべ、手に持った拳銃を脇に置き、怪我をした脚膝を立てて両手を組み握ると祈る様に俯いた。
『天上より我の足掻きを見守る戦命の神々よ どうか彼の者を打ち倒すべく、健やかなる四肢をお恵みください “サルーテム”』
何やらごにょごにょ独り言を呟いたかと思ったら、怪我した脚が真っ白い光に包まれ覆い隠されてしまった。
あれってもしかして聖なる魔法とか言う回復魔法? ズルくない? 凄い御薬を除けば今まで自力で自然治癒だ外科治療だって血と汗にまみれて来たのに、口で祈るとピカピカ光って回復するの?!
やがて徐々に光が抑まると、そこには怪我をする以前の、衣服の乱れすらなく座った状態で呆けるアルトが居た。
そしてゆっくりとこちらに視線を動かし、目が合うとニヤリと笑って気持ち悪かった。
「……ふふ、君の事を格下だと思っていた。だがその認識は誤りだった、認めよう。と言う訳でどこの馬の骨とも知れない平民如きが貴族の僕に恥を掻かせた報いを正々堂々受けてもらう、改めて決闘だ。返事は要らないよ、喋れないだろうしね」
正々堂々ってなんだっけ? さっきまでの(一方的な)ド突き合いの方がまだマシだ。
けれど撃って変わって今度は妙に興奮した様子で左手に銃を握ってもう一度引き金に指を掛ける。
「僕に負けは許されない、それはこの通り神々も認め、祝福を下さったのだからな!」
何をごちゃごちゃ言っているのか判らないが、とにかくスゴイ自信だ。
パンッ!パッ!パンッ!
一切躊躇無しの3連射が左肩、喉、そして眉間に命中した。
「…!…」
血飛沫が前方へ、視界と重心がゆっくりと後ろへ傾いていく。
思うに今日は厄日だ。日本でならきっと仏滅で天中殺でおまけに大殺界だ。何かの因果で今日中に俺を殺そうと画策してるヤツが居る。その何奴と言うのが話に聞いた神様だ。間違いない。
今俺を殺すつもりで急所に弾丸ぶち込んだアルト君が『神々も認め』と言った事から、今も如何かして俺の死に際を見る為に向こうに肩入れしているのだ。
という事はこれからご飯を食べる暇も恐らく寝る暇も与えられずに次々とデスイベントが発生するんじゃないか?
つまり呑気にしている暇があったらすぐにでもあの薄気味悪い悪魔ピエロの下を訪れた方が良いのだ。
でも今はまだ先延ばしにする。
自然治癒でも急ぎなら魔力を使う、そこから滲み溢れる様に調整すれば魔法の鋲打ち鎧の出来上がり、全身に均等より今はこれで十分だし脳天直撃弾をも防いでみせた。
倒れる前にグッと踏ん張って、半壊した喉に無理矢理気合いを込めてあらん限りの力で絶叫した。
【 ガァッデム!!!! 】
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「ガアアァァア"ア"ッッム!!!!」
「き、君のような怪獣との戦いは久し振りだ。そう来なくt!!」ブツッ
全力で左方向に飛び込む。ギリギリの反応でも完全に避けたと思ったが右の鼓膜が潰れたらしい。
ゾクッ
受け身を取るより先に自分が立っていた位置より後方へ向けて数発撃ち、銃を持った手から地面に着いて銃口をなるべくブレさせないよう背後を正面にする為に転がり起きる。
ビュォッ!!
完全に起き上がり切る前に仰け反った右頬を何かが掠った。更にほぼ同時に左方向に逃げた。
「速過ぎ……!?」ドロ…
掠めた右頬どころか瞼まで切れてしまい、血が右目に入り右半身の視聴覚を封じられてしまう。
ドンッ!
今度は背後から両脚を掬い上げられた。前が、上が、後ろが、床が、高速でグルグル回転する。敵も自分も早過ぎて訳がわからなくなってしまった。
ドシャッ! ゴロン……
地面に落ちると同時に右側へ落とし物を転がした。
(小遣い2ヶ月分の閃光爆弾だ!)
扱いに慣れが必要なのに単価の高い消耗品で、起爆させる為に栓を抜くがそれですぐには爆発しない。一定間隔置いて影響外に逃げるなり、任意の状況に調整する等の活用法があり、財力に物を言わせて磨き抜いた使い所の見極めには自信がある。
バァン!
?! いつもよりも音が小さい、だが光の効果は覿面で高速で目を瞬いて間抜け面を晒している。
相手は無防備だ、まずは堅実に足に何発かお見舞いして………いや、神々の意思を尊重するなら確実に殺さないと、その為には対人用に威力を抑える安全装置を外して…(コチッ)……それから……至近距離で心臓…を………?
ジュゥッ
「熱っ!?」
確実に当てる為に銃を持った腕を伸ばして近づいたら、手前1mの所で陽炎に指を焼かれた。
魔力を垂れ流して尚この高密度だと!? 非効率だが空恐ろしい……いや、そんな事より僕は今、何をしようと考えていたんだ!? 普段通りならあんな事………あれは……天啓なのか? 祝福を授けた神様はそれを望んでいるのか?
天啓とは高位の聖職者が神より祝福を授かった際に、その身に神の思念をも授かる事を指し大変名誉なことである。そして神の思念とは即ち願いであり、その願いに応える事は大偉業とされる。
まさか自分がその偉業の当事者に選ばれるとは夢にも思わず、興奮で手足が震えてしまい立ち止まってしまった。
そしてその神の敵に選ばれてしまった年端の行かぬ子供に左目を向けるとどこにも見えなかった。
ドボッ!!!!
死角になってしまった右側に回り込んで今度は自分が下から掬い上げる角度で脇腹を蹴り上げられたのだ。勢いは凄まじく舞台を飛び出してどこかの階のバルコニーにまで吹き飛んだ。驚く程痛みを感じないがこの状態は不味過ぎる。
「キャー!!?」
甲高い悲鳴が近くであがる。目が霞んでドコの何方か確認出来ないが、心配させないために口を開くと、血と固形物が溢れ出てまた悲鳴があがる。
胃袋を始めとした幾つもの臓腑が潰れているのだ、肺も潰れて呼吸すら困難なのに生きているのは祝福のお陰。それでも間違いなく致命傷、放って置けば確実に死ぬ。しかしまだ手段は残されている、祈りは口でなく心から行うことが重要で、今ならその声は必ずや聞き遂げられる違いない。
“サルーテム”
癒しの光が全身を包み込み全ての異常を元通りに、その効果は着衣の乱れまで正してしまう。流石に吐き出したものまでは消えて無くなりはしなかった。
「! お恥ずかしい所を見られてしまった上に、御目汚ししてしまい申し訳ない。しかし直ぐに戻らねばならないので失礼します」ペコ
顔を上げて確認すると女性は二人居て片方は同級生の女の子で悲鳴を上げたのはその子の召使いだった。
「……あ、アルト様でしたの? いつの間に聖職者になられたので?」
「それは後! それより屋内に避難した方が……!」
言いながらバルコニーの縁から舞台を覗くと既にあの怪物がこっち向かって跳び上がっている。
すぐさま飛び上がり正面から1発、怪物の頭上1mへ飛び込み擦れ違うまでに5発の計6発の弾丸を当てた。当てた筈なのに傷になったのは2発だけに見受けられる。そしてコチラが舞台に着地するのと同時に向こうも更に頭を飛び越えて戻って来た。
(攻撃・防御・俊敏性、どれを取っても格段に上、しかも魔力の属性は僕と同じ火だけど雑な制御なのに熱量も魔力そのものの量も桁違い。何なんだ一体!?)
対人用の安全装置を戻す暇も無かったが、それでも当然の様に立って居られるのなら、武器だけでなく相応の装備で相手をしなくては戦いにすらならない気がしてきた。
だが怪物に限らず実戦でそんな事態は付き物だ。アレがあれば、コレがあれば、でなければどうだとか。そうして後悔しているようではまだまだ未熟者。
仲間も居ない以上、止めは直接自分が差す、殺すんだ。
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閃光爆弾[ブライトボム]・・・
単品金8~時価 3個セット金18枚 10個金50枚 50個セット金220枚
光の帝国“暁城”で生まれ、遥々東側の大陸から輸入されたダンジョンで大人気の商品、その名は『ブライトボム』!
使い方は簡単
①のピンを押さえると②のボタンが飛び出します。
②のボタンを設定された属性魔力を使いながら押し込みます。
③、②の状態で①のピンを外側へスライドさせるとピンが解除され、3秒後に爆発!
この爆発を目にした生き物は視力を失い、鼓膜は潰れて失神!
戦いを有利に進めたいなら、コレを持たねば知らねば死にますよ?
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memo 原価は銀貨8枚らしい。最もアクセスの遠い大陸との商売になると輸送費がとんでもない額になると銀行の客はぼやいていた。
話し相手が僕と知らずに口を滑らせたので口の軽い商人だと報告した。
―出典[大陸間総商組合オーディバール支部カタログ]より
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