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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
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19. 夜露死苦マブダチ

「ところで水を差すようだがこのおチビさんはどなたでしょうか? 一緒に汗をかくのですから改めて君の名を紹介してくれぬか?」


 町に来て軽い自己紹介はしたことあるけど、こういう貴人の前で名を名乗る時はフルネームの方が良い筈だ。

 そう思い口を開きかけた所でエリーから待ったを掛けられた。


(ちょっと待ってエルドちゃん、お願いがあるんだけれど。あの人達に名前を名乗る時はお父さんの姓を名乗ってくれないかしら? お母さん、ちょっと色々あってああいう人達に居場所を知られたくないのよ~)


 色々って…、まあ大体の想像はつくから何も言うまい。えーと、バウロの姓は確か……? 何だっけ?


(あ、お父さんの旧姓は「バーンウッド」。「バーンウッド・ロードロー」が前の名前なの。婿入りした時にフルネームを縮めて「バウロ」に改名したのよ。覚えておいてね)


 へー、そーなんだー。ともかく、今の俺は「バーンウッド・エルドワーフ」と言う訳か。因みに本来の性は「アームストロング」なんだってさ、名は体を表すと言うがこちらでは姓が体を表しているようだ。


「バーンウッド・エルドワーフ、と申します」ペコリ

「エル…ドワーフ? プフッ! 何だそれは?ドワーフが自分の子にドワーフと名付けたのか? 冗談だろう? ハハハハ!」


 ハイ! コイツ絶対ブチのめす。完全に俺も敵に回した。ネーミングセンスは初めて聞いた時は俺も思う所はあったけど、今じゃ大事な名前だ。それを馬鹿にする奴は逝手駒死樽環(いてこましたるわ)


「よさないかラガリア、ところで確認したいがバーンウッドと申しましたかな? ドルモア卿、もしや先程のドワーフはバーンウッド一派の者ですか?」

「………如何にも」


 イヤイヤ何で面倒を回避する為に親父の旧姓名乗ったら親父が疑われてるの? バーンウッド一派?


「考えてみればこの町の殺戮伝説には炎の精霊を使うドワーフが登場していましたな。最後に確認された一派の者も精霊の才能(センス)を使用していたとか。フム、つまり君はそのご子息という事ですかな?」

「だからどうしたというのです? 才能は遺伝し易いと言ってもこの様なもやしでは準備運動にもなりませぬ。もう良いでしょう、で? どこで決着をつけるのです。早く行きましょう」

「これだから近頃の若者は…、慌てずともすぐに案内してやるさ」ニヤッ


 ラガーマンみたいな名前の奴、マジで一々癇に障る言い方するよな。

 そんなことよりドルモア伯爵の笑みに背筋がゾクッとしたのは気のせいだと思いたい。


「この広間の真下には武舞台を設けていてな。地上からじゃ見えなかったろうが、地面を掘り抜いた円形闘技場になっている。主に兵の鍛錬と騎士資格認定試験の時に使っているがそこが丁度良いだろう。オイ」


 伯爵が話す間にテーブルが撤去され、壁に息を潜めていたメイドや執事その他の人々が居なくなり大広間には4人だけが残った。


「と言う訳で早速御披露目しよう、我が自慢の武舞台を」


 パ カ ッ


 円形の大広間から最後に執事のセントが退室するや否や、1ホールピザを4分割したように床が開いて全員宙に開放された。


「なんと!?」

「うっおぉわああああ!!!!」

「!!!!」

「ハッハッハッハッ」


 皆反応は様々だけれど一番偉そうなこと言ってたラガリアが一番情けない悲鳴を上げたお陰でこっちは冷静でいられた。伯爵はしたり顔で大笑いしている。


 ドルモア邸は地上3階建てだが武舞台は地下1階程の高さに設置されている。屋敷の天井は普通よりずっと高かったので併せて20m程の高さになるだろうか。何だ、20mか。森の中で遭遇した大樹のてっぺんに比べれば大したこと無いね。………たぶん。


「先に失礼」


 頭からつま先までピンと真っ直ぐ、空気抵抗を極力減らして伯爵がグングンと降りて行く。そして事も無げに着地すると早く降りて来いとばかりにこちらを見上げた。


 ドッ! ズダンッ! ビタッ!


 3人同時の着地。レガリアは何とか踏み止ったが、ラガリアは膝を付き、エルドワーフは両手を付いてしまった。


「ほほぅ、これは………」

「グゥッ……!」

(う~~わぁぁああ……痛ってー!)ビリビリビリ


 上から見た感じ土を盛り固めて石で周りを囲っただけに見えたが、着地した感触は大樹の上からジャンプした時よりも遥かに強い衝撃が身体中を駆け巡った。正確には地面に逃げる筈の衝撃までそっくりそのまま跳ね返って来て全身がビリビリ響いて動けない。

 突然空から4人の男達が降ってきたことで汗を流していた兵士達がざわついている。


「ド、ドルモア様!? 一体何事ですか!?」

「スマンな、少しの間我らが使わせてもらうぞ。おやおや大丈夫か? あのまま着地されると、使う前から路面が荒れそうだったので保護させてもらったよ。さ、そこにある棚から自由に武器(エモノ)を選びたまえ。訓練用だから刃は潰している。君もこれを機に何か武器を使ってみると良い。その年で素手喧嘩(ステゴロ)だけでは勿体無い」


 路面を保護と言えばバウロが荷車を曳く時にしているアレの事か。着地して手を付いた時の感触はざらついた硬い鉄板みたいだったぞ。


 ところで武器かぁ、見た限りここにはかなりの種類を用意されているようだが、こういうのは武器屋とかでじっくりと眺めたいな。


 刀剣・長柄・打撃・盾・小手・弓? 矢がセットになっていないけど単品で戦える代物か? それから銃火器、見間違いとか置物じゃなくて衛兵が持ってたカービン銃や“不退天”のエドラが使ってたリボルバーと似た形状の物が置かれていた。誰も使わなさそうけども。


 まず小柄な体格に長柄はバランスが悪いので除外するとして、最初に手に取ったのは打撃武器。棍棒や戦槌(ハンマー)戦杖(メイス)は片手でも使えるが何かしっくりこない、鎖分銅とそれに柄を付けたフレイルはあるけど残念ながらヌンチャクは無かった。分銅の代わりに角棒の付いたフレイルはあるのに、残念。そこでバウロも使う戦斧を手に取った所…


「ドワーフというのは何れも同じようなモノを手に取るのだな。面白味に欠ける」

「子供相手に何を言っている、大人気無いぞ」


 ・・・面白くないってんなら違うので驚かせてやるよ!


 次は小手(グローブ)類、ガントレットや革手袋に鉄板を縫い付けたりした物だが、どれも魔法で固めた拳骨の方が頑丈な気がして興味が薄れた。


 次に移る前に他の3人を見ると既に武器は決まった様子でドルモアは長剣を握り具合を確かめており、レガリアは巨大な両手剣をまるで体操のバトンのようにくるくると回し、ラガリアは両手にそれぞれ大小異なる盾を装備していた。先を越された気分だがラガリアと同じモノを使うのは嫌だから残るは刀剣類と弓、しかし矢の無い弓なんてどう扱うか想像もつかないのでこれも却下。


 となると最後は刀剣類、パッと手に取った片手剣は当然と言うか大人用なので体格に対して大き過ぎる、そこで短剣に持ち替えると長さは丁度良いがごつくて重心が悪い。幸い同じ形状でも付属品などで重心の違う物が複数用意されているので他に無いか漁ったところ、切れ込みの入った木の棒を見つけた。これってもしかして…?


 カッ、スー…


 切れ目を間に両手で握り、親指で押し広げると中からほぼ真っ直ぐな片刃の短刀が現れた。所謂匕首(ドス)とか呼ばれる代物だ。これがあるってことはと思って探してみれば、やはり日本刀が紛れ込んでいた。ただ他の刀剣は重心の都合でそれぞれ最低3種以上は用意されているのに対して、日本刀はドスを含めて大小拵を合わせた3振だけだった。


「ほう、それに目を付けるか。中々凝った装飾をしているだろう?」


 振り返るとドルモアが居た。相変わらず気配を感じさせない人だ。


「それは王都の骨董市で見つけた『カタナ』と言う曲剣で、物珍しさからつい購入したんだ。剣を構成する装具の一つ一つが職人の工夫の光る大したものだが、ハッキリ言って武器としては二流品だよ。私も見たことは無いが大昔に作られた本物は『折れず、曲らず、よく斬れる』代物だったらしい、製法が失伝して以来現在出回っている物は金満貴族御用達の鉈と言ったところか。まぁ普通の鉈に比べて物を切るのに適した形状をしているので、普段使いの道具よりは武器らしいかな。数百年前に作られた品と聞いて大枚叩いて買ったが、エリーに言わせれば『間違ってはいないけどもカタナにしてはかなり最近の贋作』、バウロも『素人造りの模造品』と言っていたよ」


 自嘲気味に笑いながらご丁寧に説明してくれたがやはりこれは刀で合っているらしい。ただ前世の刀事情同様、昔ほど優れた刀は生み出されていない様子だ。

 物造りに於いて自動車や銃の様な工業生産物は好きだが、古き良き伝統工芸も大好きな俺からすると、日本刀が正しい評価を受けていないのはとても悲しい。それによく見ると本物の日本刀とは似ても似つかない形状をしていることから、正しい製法すら失われている可能性もある。

 ぱっと見はそれらしいが包丁を叩き伸ばして、グニャグニャ炙って刃紋つけてみましたって感じ。小刀の方に至っては、元々ショートソードだったのか、峰側にも刃が付いてそれらしく丸めて見ました感がよく伝わってくる。

 確かに、数打ち物にしても二流品、いやそれ以下のガラクタだ。


 さりとて、幾ら紛い物でもルーツは俺と同じ日本生まれの武器。恐らく大昔には俺と同じ異世界(地球)から転生した人が居たのだろう。ここで出会ったのも何かの縁、もしもこれが日本刀じゃなくて竹刀が紛れ込んでいたとしても同郷のよしみで使ってみるだろう。


「これにします」

「ん? それで良いのか? 今言った様に武器としては二流の粗悪品だぞ? それに古くガタついている。同じ重心バランスのサーベルの方がマシだと思うが?」

「良いんです。寧ろコレでアイツをひっくり返せばスカッとするでしょ?」

「フフフ、良い心掛けだ。ならば見せてくれ、エルフ()ドワーフ()の落とし子、エルドワーフよ」


 そう言って頭をポンと叩いて去って行った。


__________



「やっと決まったんですか? オマケを待っている間に昼になりそうだ」

「そう急かさずともまだ順番も決めていないだろう?」

「それについてはクジで決めよう。グル、ゴル!」

「ウス! ここに」


 あれ?クジ箱持って来た男はグルモアか? でも接頭語に『ム』が付くのが特徴だから、顔も背格好も似たアイツはもしかしてゴルモア? 前会った時と全然雰囲気が違う、まるでグルモアだ。当のグルモアは大きめのボードを運んで来たが、こっちは逆にしかめっ面で不機嫌そのものだ。


「ウス、色を付けた棒とそうでない棒が2対入っております。先に舞台へ上がるのは色付きを引き当てた御仁です」


 箱の中から飛び出た4本の棒を各々が摘む。ドルモア、レガリア、ラガリアと続いて俺は最後に余った棒を貰った。結果はドルモア対ラガリア、レガリア対エルドワーフの組み合わせになった。


「これは良い、早速ドルモア卿と対戦出来るとは僥倖。父上、お先に失礼致します」

「理想は我ら親子で仕合て準備運動を経てからなのだが、さもなくば私が先にドルモア卿と闘いたかった」

「ウッス! 審判はこのゴルモアが務めます、両者武舞台へ!!」


 武舞台には上へ登るための階段が無いにも拘らず、両者共に高さ60cmはある段差を階段を一段昇るが如く跳び乗った。

 ドルモアは両手でも握れる長剣(ロングソード)を、ラガリアは左腕に壁盾(タワーシールド)、右手に凧形盾(カイトシールド)を装着している。


「ルールを決めていなかったが…、あの様な状況であればデュイル方式が適当だな?」

「怖じ気付きましたか? 私は別にデュエル方式でも構いませんよ」

「ハハハ…一方的とは言え、私を友と呼ぶ男の孫を殺めるなぞ心苦しい」

「ウッス! ではデュイル方式を採用致します! ルールは防具を身に着けず、訓練用の武器を使うこと、勝利条件は命を取らずに捻じ伏せよ、それでは・・・始め!!!」


 号令と共に先に動いたのはラガリア。大きく息を吸い込むと灰色の煙幕を吐き出した!? 舞台場が朦々と立ち込める煙に包まれた、これでは観戦も出来ない。


(森でのことを思い出すのよエルドちゃん、小鬼(ゴブリン)を見つけた時のように今度は動く彼らを視聴()るのよ!)


 上の方から母の声が降りてきた。言われなくても今やろうとしたのに。

 耳に意識と魔力を集中させる。現段階ではどちらも様子を窺っているのかその場から動いてはいないようだ。

 全裸同然の小鬼(ゴブリン)共とは違い、身に着けた服の擦れる音などで僅かながら構えを窺い知ることが出来た。主にラガリアの。

 壁盾を前方に踏ん張りながら右手は後方へ引いていてまるで空手の突きの構えのようだ。たぶん壁盾で受けて鋭利な突起の付いた凧盾でぶん殴る戦法だろう。

 一方ドルモアはというと、ただ立っているだけだと思う。思うっていうのは服の擦れる音が全くしないからで、足音も立てず服を着ている分心音も小さくなって得られる情報が少ないためだ。あんなに必死こいて威嚇しているのに何でもないように何も反応されないと不気味だよねー。


「……どうしました。先に行動を起こしたのは私ですから、次は貴方の番ですよ」


 痺れを切らすとはこの事でラガリアがついに声を発した。すると「了解した」という呟きと共に、鋼板をぶっ叩く凄まじい音が耳を劈いた。


 そこからは盾が空を切る音と鋼板がぶっ飛ばされる音と地面をズザーッと踏ん張る音、それから吹っ飛ばされた方が突進をする足音が続き、一方的な殴り合い(・・・・)が延々と繰り返された。

 こうなると見えずともこの先どうなるかは誰の目に見ても明らかで、観戦していた衛兵達から早くも雑談の声が挙がり始めたのは仕方のない事だろう。

 まだ始まったばかりだけどもう次に戦う準備をしようかと考えていたらエルドワーフの対戦相手であるレガリアが武舞台の反対側から歩いてきた。


「やあエルドワーフ君、少し話をしようじゃないか。舞台へ上がればお互い不用意に話すことも出来なくなるからね」

「そうすか、俺は何も話すこと無いぜ、オッサン」

「ハハッ、上での遣り取りを見て我々の真似をしているのならやめておいた方が良いぞ? あれは我々貴族の中でも武闘派同士が初めて顔合せする際の慣例の様なものだ。貴族でもない君は別に真似をする必要は無いし、他の貴族の前ではやらないことが身の為だ」


 何時の時代の不良(ヤンキー)ですか? 漫画や映画でよくある最初に喧嘩して和解して仲間になるパターンのアレですか? う~ん、つまりツンデレ? 『テメェ強ぇらしいな? 調子乗ってっとヤッ血舞うぞ? オッ、オッ?』からの『やるじゃねぇか、見直したぜ。俺の目に狂いは無かった。これからはダチだ!』ってやつ?


「今でこそドルモア卿には敬意を以て接しているが私も昔はラガリアのように果敢に彼に挑んだものさ、結果はこっぴどくやられてしまったがね。だが敗北からは多くの事が学べる。息子も君もそうあってくれると嬉しいよ」

「・・・・・戦いの前に休暇の話はしない方が良いですよ?」

「ハハハハ! もの知りだな? 哲人ポポンの格言だ。確かに、これは失敬」


 大昔の偉人『ポポン・プルルラーナ』という人が残した格言で、意味は大事の前に後の事を話すと酷い目に遭うぞという事。早い話が死亡フラグ。名前の響きが面白い事から彼の残した名言は幾つも憶えていたのだ。そこへ決着はついていないし戦ってもいないのに負けを決めつけられてムカッとしたのでこの言葉を叩きつけたのだ。


 やがて煙幕が晴れてくると息も絶え絶えのラガリアと一見最初と変わらぬ様子のドルモアの姿が浮かび上がって来た。傷一つ無い凧盾(カイトシールド)に対して壁盾は靴底の形をした凹みを幾つもつけて拉げ、大方の煙は流れてしまったのに壁盾の周囲にはまだ煙幕が薄らと残留していた。


「次で決まるぞ…」


 誰ともなく発した呟きを聞いた全員がその決着に備えて真剣に固唾を飲んでいた。


「成程、君の才能は一見私に対して相性が良いかもしれない。だが、この程度ならば私の才能を発揮するまでも無い、出直して来るんだな」


 剣を掲げる様に構えてから目にも止まらない速さで伯爵が急加速、瞬きをしていたら見逃していたであろう一瞬のうちに勝負は決した。


「…やれば出来るじゃないか」

「ゥ…アグゥ、……グハッ!」

「・・・ラガリア―――!!!?」


 やり過ぎだ。そう思ったのは俺だけではない筈。

 ドルモアの剣は2つの盾を貫通しラガリアの腹部すら刺し貫いている。しかしラガリアは最後の最後に壁盾に突きを受けたと同時に前方へ倒すように傾けることでドルモアの顔面に痣を付けることに成功している。一矢報いた形だ。

 しかしカウンターは成功しているものの、刺突攻撃自体は全く防ぐ事が出来なかったらしい。接触から貫通するまでに傾けた分だけ盾が縦に裂けている。


 そして一瞬呆けていたゴルモアが決着を宣言した。


__________



「まさか先の丸い訓練用の剣で胴体を貫かれるとは思いませんでしたよ」


 試合後、穴を開けられたラガリアは思ったよりも元気で、腹と背中の傷を器用にも自ら縫合して薬を塗り込む余裕まで見せていた。


「負けたのはこれが初めてじゃありませんし、もっと酷い怪我を負ったこともありますけど、魔獣と闘った時よりもキツイ戦いでした」

「その程度の傷なら湧かし続けていれば見る間に塞がるだろう。馬用の薬な分、薬効もキツイが良く効くぞ」


 本当に不良(ヤンキー)顔合(メンチ)夜露死苦(ヨロシク)もう仲良くなってる。って言うか動物用の薬剤を人間に使うなよ…。


 その一方でこっちは一触即発の雰囲気に染まっている。


「私はこの気持ちが薄れてしまわない内に仇を取りたいのだよ。悪いが君との勝負は一瞬で決めさせて貰う」

「さっき言った事をもう忘れたのか? 舞台に上ってすらいないのに、とんだ虚蝦鶏頭(コカトリス)脳だな」

「それはお互い様だろ。口の利き方には気を付けよ。平民風情が」

「そんなに怒るならとっとと伯爵様に飛び掛かればいいのに、先に平民の餓鬼に八つ当たりをするのですか、自称・武闘派の貴族・さ・ま?」


 口調が完全に変わってるな。遠慮も糞も無い、頭に血が昇り詰めている人そのものだ。こうやって威圧されると普通なら萎縮してしまう所を俺はちょっと面白可笑しくなって更に一歩踏み込んでしまう質だ。そぅら、顔が真っ赤っか~


「殺す」


 思ったより洒落が通じなかったらしい。


「ウォッとと! それは困ります! 先に言わせて頂くが、この試合はデュイル方式で行います! 鎧は身に着けず平時に着る服装で、訓練用の武器を用いて戦って下さい。勝利条件は『命を奪わず』捻じ伏せること! これを守らぬ場合は、この場に居る騎士位階の者が直ちに拘束します。この条件に納得して頂けた方は、武舞台へ御上り下さい」


 慌てて仲裁に入ったゴルモアが先に試合条件を宣言してしまう。こうしておかないとまた(・・)殺されるかも知れなかったのでグッジョブだゾ!


「今のは冗談さ、(わっぱ)の安い挑発に乗ってやったまでの事。本気ではな」

「口先ばかりが動いて上には来ないんですかい? 一瞬でケリを付ける処か深呼吸できそうですよ~」


 ン~、ハァ~。わざとらしく武舞台の上から煽ったら漸く同じ土俵へ上がってくれた。


 食後の運動にしてはいくら何でもハード過ぎるこの展開、煽っておいて何だが正直トンズラこいて町を出たい。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか、後者なら戦い慣れているんだけども…。

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