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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
18/54

16. バウロのスパルタ・スプラッタ

 冷たい湿気を帯びた空気を吸い込んだ肺の心地良さに、一瞬ハッとして目を覚ます。

 薄暗い木の天井とガラスの格子のはめ込まれた窓を見つけて、ここが地下牢でない安堵感にホッとして掛けられた布団にもぐり込んだ。


(ここどこやねん…)


 まだ薄暗い明け方と言うのもあり寝惚けた頭で最初に思ったのは自分の所在についてだった。


(家の布団より気持ちエエな~)


 そして自身を包む布団の暖かさとボリューム感、ガラスを用いた窓から察するに中々の宿であると見受けられる。


 昨日のことを思い出そうと思ったが、所々記憶が曖昧で最後に至ってはぷっつりと途絶えてしまっている。心なしか首が痛い。


 起きたいのはやまやまだけど、もう少しだけこの心地良さを堪能しようと寝返りを打つと、目の前にこっちを見下ろす毛むくじゃらの男が立っていた。


「起きとるのはわかっとる、観念しろエルドワーフ」

「ぐわー」


 横たわるエルドワーフから布団を剥ぎ取り、床に投げだしたこの男の正体はドワーフにして実父であるバウロだ。

 酒と鍛冶と家族を愛する典型的なドワーフで、仕事中の酒は断つが普段は自分で酒を仕込む生粋の職人だ。


 そんなバウロが口にした言葉にエルドワーフは覚醒した。


「今日はワシの仕事をエルドにもさせるぞ」

「エェ?!」


__________



 泊まっていた宿屋はブリンシットさんが用意してくれた所ではなく、外からやって来た商人向けに町が出来た当初から開業したという老舗だった。

 馬卸通りの南の玄関口、町一番の大通りで店を構える大店でもある。道を挟んだ向かいには建築様式の異なる貴族向けのホテルが、こちらは解り易く黄金と魔法の明かりでギラギラしている。もう朝なのに…

 どちらも買った馬を囲っておく柵と厩舎が完備されているのだが馬の町なのに肝心の馬は見当たらなかった。


 そして今居るのは馬卸通りと噴水広場の間の区画、通称「蹄鉄通り」にある鍛冶工房の一つである。


「仕事をさせるっちゅーてもワシの補助をする程度じゃ、とりあえず何が出来そうか見極めるテストをやるから安心せい」


 『安心せい』、と真顔で言われてもその表情とは裏腹に酒のニオイをプンプンさせてどうにも締まらない。


「本当なら家でじっくりゆっくり作業を覚えさそうと思ったがな、知識も力も誰かさん(エリー)のお陰で尋常でない成長を遂げておるでぇ、予定が狂っちまった分ワシも足並み揃えて手取り足取り直に教えるわい!」

「それは良いけど、全然人居ないね?勝手に使って大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫じゃ。何でもつい5日程前に町中で売られている馬のほとんどを買い占められたらしくての、どうもどっかで戦争が起こるんじゃないかってな噂じゃ。ここは買われた馬たちに蹄鉄を履かせたり馬具を調度する区画なんじゃがつい一昨日まではてんやわんやで大忙し!じゃが今は肝心の馬が居ねぇってんで仕事もねぇから誰も居ねぇんじゃ」

「で、使わねぇ工房を借りて作業する訳ね」


 成程、どうりで馬が見当たらない訳だ。戦争をするということはそれだけ大量の人や物資を運ぶために相当な数の馬が必要なのだろう。しかもこの町の馬はそのいう目的に見合った軍馬で名高い、一頭当たりの値段もさることながら根こそぎ買い占められるとはよっぽどの規模になる事だろう。

きな臭い話に不安が過った。


「そう暗い顔をするな、ワシら長命種は生きてる間に戦争の一つや二つは経験してるもんじゃ。それに巻き込まれることはあれど、ワシもエルドも腕っぷしはあるんじゃからどーんと構えておればええ!ンアッハッハッハッ!!!んじゃ、まずは力比べじゃ!両手を合わせた押し合いで腕力(パワー)を測るぞい」


 魔力を忘れるなよと付け加えて両手を構えるバウロ。()焼けして少し黒いゴツゴツと節くれだった手にエルドワーフの白くて細い手が合わさる。指の太さや肌の固さ・色は違うけれど、手の大きさや指の付け根と手首から後ろには毛が生えているのに手の甲はつるんとしている所は親子なんだな~と改めて思った。


 ガシッと掴んで息を整え、徐々に力を、魔力を込めて締め上げていく。


「グクッ……ン~グググヌゥ~」


 歯を食いしばって顔を真っ赤に腕も小刻みにぷるぷるさせてまで遠慮なく握るが、バウロはニコニコと頷いてびくともしない。


「んむ、素の筋力には初めから期待しておらんが気合(魔力)を入れりゃあ十分使える力じゃぞ。霊薬(エリクサー)を何本も使う無茶をしたらしいが、成程、いくら才能に恵まれたといってもそれ程の事でもせんと覚えて数日でここまでにはならんか・・・・あんのバカエリーが!!!!」

ミキミキ…「ギャア!!?」

「おっと、スマンスマン。次行くぞ。エルド、確か大蛇をぶっ殺すのに肉と頭蓋を掘り返して脳を焼き切ったそうじゃの?ソレヤレ。あ、やれっつっても手だけを熱しろって意味じゃからな!心配するな、ワシには炎の精霊が憑いとるわい!」


 とは言え下手をすれば火傷では済まない、怪物に使うならまだしも生身の人間に使うのは流石に…って思って徐々に焼き過ぎない程度に温度を上げていくと今度は悲しそうな顔をされた。


「そりゃワシも不覚を取って不甲斐ない所を見せたりもしたが、火を扱い槌を振るうドワーフが柔な訳ないじゃろ?しかもエルドワーフ、お前の父親でありエリーの夫でもあるんじゃぞ?いらんお節介で躊躇(舐めたマネ)するくらいなら、もっと本気で掛かってこいぃ!!!!」


 クワッ!と鬼の形相に変わったかと思った瞬間、手の感覚が一瞬で消えた。同時に煙が上がり、組んだ両手の周りが揺らめいて見える。

 一瞬何が起こったかわからなかったが、このままのんびりしていたらどうなるか?そう、手の感覚が段々と……


「あ、あっ、ああああああつああ!!!???」


 バカか!?夫婦揃って馬鹿か?!極端過ぎるだろアホ!!!もう知らない!魔導原動機(ロータリーエンジン)全開で蒸発させてやる!!!


 全身の毛穴が開いていろんなものが吐き出されていく感じがする。誰に対する遠慮もなく大声で歌うのが気持ちイイ様に、全身から魔力を撒き散らすのも悪くない気分だ。


 ところで俺は怒っても一旦熱くなったらすぐに冷静になる(冷める)

 怒りに身を任せて手を出すと相手によっては後々面倒になりかねないのは経験で知っているのだ。特に家族相手は辛い、この間みたいにいろんな意味で(イモ)を引く事態になり得るからね。


 今回のケースは遠慮するなって了承を得ているし周囲には誰も居ないから、冷静に持てる力の全てを以て蒸発させてやる(ここが大事)ぜ。


 イメージは8の字ケースの中をおにぎり型ピストンが回転して(自然の外功)(自分の内功)の吸気・圧縮・爆破を繰り返す。そうして出来上がった魔力(マナ)をそっくりそのまま熱エネルギーに変換!冷静でも一度出たアドレナリンで痛くも熱くも無いもんね。半端な真似はそれこそ許さないし許されない。


 揺れる陽炎が大きくなってお互いの顔すら朧気だ。余りの熱量に服が燃えて爛れたりしないかと思ったが、流石母特製なだけあって焦げた臭いすらない。

 真っ赤に赤熱した手を合わせて尚、押し合いはやめなかった。これがホントの根性焼きか?

 嗚呼、ヤバいよヤバイ。熱すぎて手の感覚どころか全身の感覚が無いや。握った手は蒸発どころか炉から取り出した鉄みたいに堅いし、関係無い事で頭がいっぱいになるし、冷静(笑)で頭がフット―しそうだよぉー!!??


「フブッ!?」

 ビュッ!ボタボタッタタ…


 限界だった。勢いよく鼻血が噴出し視界が大きく揺れる。足腰の力が消えうせ、手を握ったままだらりとぶら下がるように崩れ落ちた。


「ンアッハッハッ、『本気で』とは言ったが馬鹿正直にそこまで頑張らんでエエわい。まぁ、よう頑張ったわい、合格としよう」


 意識が朦朧とする中でバウロの笑い声が聞こえた。チッ糞~、あれだけやってもまだ余裕があるのかよ!?

 ゴロンと仰向けに寝転がる。工房と言っても外からデカい馬を曳いてそのまま作業するから炉のない敷地の半分は天井が幌になっていて空がうっすら透けて見える。青く晴れている?グルングルン目が回って色の判別しか出来ないけど。


 そうしてまた意識が遠のいていく。最近は本当にこんなのばっかりだな、マジで嫌になって来るや。

 目を開けていても気持ちが悪くなってくるからいっそ閉じてしまって、また次に備えようか、な・・・・・。




 バッシャーッ!!!


「ッッッ!!??っ滅多いィ!!!???」

「コリャ!誰が寝て良いと言った?これから仕事じゃっちゅーのに、大袈裟じゃぞ!」


 びゃぁー!!!冷たい!!滅茶苦茶冷たいィ―!顔から水をぶっかけられた!?幸い先に鼻血が詰まってたから鼻に水は入らなかったけど!火照った身体には丁度良かったかもだけど!!


「何じゃ?熱にやられておかしくなったとでも?腐ってもわしゃ炎の精霊使いじゃ。エルドが気を失いかけたのはそれだけ魔力を練り過ぎたからじゃろうて。その証拠にどっこも焼けてはおらんじゃろう、ワシが精霊に頼んで火達磨にならんよう制御したんじゃ。ま、その気になってもらうためにちぃとは焼いたがのぅ」


 ガチガチガチッ…


 良く冷やされたお水のお陰で心身共に氷点下までクールダウン出来(され)た。

 落ち着いて全身を確認すると、確かにどこも火傷などはしていない、一番熱かった筈の手の平も少々赤くなっているだけで火傷と言う程でもなかった。

 寧ろ今は寒い。こういう時に熱を放出する方が正しい使い方なんだろうな、と思いながら全身を魔法で温めていく。


「顔を洗ったら一応これを塗るといい、軟膏じゃ」

「ア痛ッ」


 渡すなら顔の上に落とさずに普通に手渡せよ!?

 そして軽く手当てをして服が乾くのを待った。


__________



「さてと、それじゃ仕事を始めようかの」

「へい」


 工房の金床には分解された板金の鎧が乗っかっている。分解されていても大きいパーツを見れば記憶の中から元の持ち主の検討がつけられた。


「これってオヤジが一緒に飲んでた爺さんのじゃないの?」

「おおそうじゃ、ワシの昔馴染みで先代からの付き合いのドルモアってんじゃが、この町を守る騎士にしてこの間の湖からコッチ側の土地を治める辺境伯でもあるんじゃ」

「へー」


 よく見るととても良く手入れが行き届いてピカピカではあるのだけれど、凹みや大小様々な傷のように磨いたりするだけでは消えない痕がたくさん刻まれている。


「もう70になるというのに未だに湖や森からはぐれた怪物を相手に戦っとるそうじゃ、もうガタが来てもおかしくない年齢だろうに無茶するわい。見てみい、聖鉄(ミスリル)と銀の合金製鎧にこんなにも傷が付いとる!ただでさえ鋼より丈夫な聖鉄、しかも防御の魔方陣も仕込んだ特製の一品じゃぞ?手入れらしい手入れは磨くだけ、50年の間ずっとじゃ!聖鉄の加工職人くらいこの町にもいるだろうにワシ以外には任せたくなかったんじゃと、女子(おなご)か!?」


 バウロのよく分からないツッコミは兎も角、もう70なのに酒場で見せたあの動きと鎧に付いた傷を鑑みるに辺境伯の肩書は伊達じゃないようだ。

 それに森には俺が死闘を繰り広げた超蛇の湖があるし、こっち(バンバー)の湖には亜竜や大蛇がうようよ泳いでいるから脅威には事欠かないのだろう。そりゃ子供が居たら好奇心に駆られた冒険をさせない為にもっと安全な街へ押しやる方が安心できるのが親心か?その割には門番が間抜けだったりそれが親戚だったりと、今思えば前線で暴れて発散でもしないとやってられないのかもしれない。

 つまりはそんな辺境伯様の鎧のお手入れが今日の仕事になると言う訳だ。


 聖鉄(ミスリル)とはファンタジー小説とかではよく見られる魔法の力を持った鋼鉄よりも強い金属として有名だけれど、ここでも大体そんな感じだ。

 加工難易度は高く、ただ溶かして叩くだけでは上手くいかないらしく、ただの炎より魔法で生み出した炎が良かったり、ベースとなる金属に少しの聖鉄を混ぜ合わせて加工難度を下げる工夫をしたりするのが一般的だ。

 より良い物を、となると純聖鉄や聖鉄に対して1割~2割程度の混ぜ物が良いがそれを可能とする職人はグッと減ってしまうらしい。


 そして扱う職人が減るということは手入れをする難易度も上がる訳で、磨くだけなら腕力に物を言わせて何とかなっても傷や凹みはどうにもならない。

 そこでバウロの様な名工が必要になるのだ。当然値段もお高くなるが、今回は迷惑料としてただで請け負っている。

 そもそも聖鉄自体が鋼鉄の鎧兜よりも傷付かないことを売りにして手入れ要らずともてはやされているのに、べこべこになるような戦闘を50年も続けているのに鎧の製作者であるバウロが訪れるまで放ったままだった事から結構値が張るのだろうな。

 そこへ俺達親子が問題を起こしたのをいい事にタダで済むんだから昨日の呆れた態度の裏で内心ほくそ笑んでいただろう。


 そして遂に、漸く作業が開始されたッッッ



「聖鉄を加工する時はこの炎の色と温度を覚えとけ、そして炉から出した後も温度は維持することじゃ!ほい!手を出せ、この温度じゃぞ!」

「おおおッ!!?あっちゃっちぃー!!!」ジューッ

「手は予め熱しておけ!!何の為にさっきテストしたと思うとるんじゃ?!」


「まだじゃ、もっとじゃ!まだまだ足りん!!(もっと)熱くなれよおおおぉぉぉ!!!!!」

「これ以上は(俺が)沸騰しちゃうよ!?」

「何ィ!?今の実力で安全マージン確保しようなんざ300年早ぇわい!んなもん気にせんとやらんと叩き伸ばすどころか、手でこねくり回すことも出来んぞ?!」

「そこまですんの??!!」


「本気になれば出来るじゃないか。まぁ、精霊の加護が無くてはたぶん死ぬかも知れんが」

(魔力酔いで気持ち悪いぃ・・・)

「んだら張り切って仕事を始めようかい!!!」

(オ、オゥ~~~ッ………)


「先ずはパーツ毎に内側に刻んだ魔方陣をちょいと傷付けて防御上昇(プロテクト)効果を消失させる。爪の先に熱を集中させてカリッとするんじゃ」

「うおおおぉぉぉ……!」 ガリッ…、ガリッ…


「凹みを戻すのに内側から叩いて均すぞ、槌を貸すからやってみい」

 カンッ! カンッ! ガッ! カンッ!…

「初めてにしてはまあまあええわ。じゃが少し出っ張り過ぎとるのう、この程度ならこうしとくか」ギュウゥゥ…

「ハンマーいらなくね?」


「この鎧に使われる聖鉄銀合金の比率はこれじゃ、だが数字じゃなく実物の質感や重さで確認する癖をつけるんじゃ。流石にエリーもそこまでは教えられんかったろうしな」

「でもそう遠くない内にこれを教わるのは火を見るよりも明らかだけどね」

「ンアッハッハッ!誰が上手いこと言えと」


「聖鉄に混ぜ物を入れる時は普通の撹拌棒では溶けてしまうから、こうやって指を使ってのぅ」チャプッ

「それは流石にやらないよ」

「まぁ普通は熱に強い魔獣の素材を使うがな。ンアッハッハッハ」


「凹みは叩いて均したが傷は粘土みたいにのばして均すぞい。ぐにゃっちまわないように気を付けながら、柔かくなる温度まで上げようか」ゴォー

「また手作業か」

「言っとくが道具を揃えて聖鉄製の武具の手入れをするくらいなら買い替えた方が安く済むのがほとんどなんじゃぞ?」

「金をとるか愛着をとるかかぁ…」

「その点、ワシは破格の値段設定じゃったから同業者に命を狙われたのも1回や2回では効かんかったわい、ンアッハッハッハッ!」

「だから森に?」グニグニ…

「それだけではないがの」メラメラグニグニ…


「仕上げは叩いて見た目ではわからん傷を修正する。ワシが叩くからエルドワーフは鎧を押さえて手の感触でどう変わっていくか覚えていけ」

「また無茶を…ぐぎゃッ!?」

「熱量が下がっとるぞ!無駄口叩く暇があったら維持に集中せい!」



 そんなこんなで作業が完了したのはとっぷり日が沈んだ頃だった。流石聖鉄(ミスリル)と言うだけあって、加工する際は非常な高温を維持しなければならず、傍に置いてあっただけの鉄製の工房の備品がドロドロに、俺は魔導原動機(マナロータリー)を最高域で全身全霊を以て超高温になるよう維持し続けねばならず、バウロの精霊の補助(センス)が無ければ自分の熱で焼け死んでいたことだろう。

途中、工房の金床が耐えられなくて溶けたりするわ、指で混ぜた所為で垢が混入したのに気付いてやり直したりしたが、大小すべてのパーツの手入れと作り直しを終えてあとは組み立てるのみの段階まで進んだ。


「あ~、死ぬかと思った~」


 エリーの時は痛いとか痛くないとか考える前に死んだり死に掛けたりだったが、今回は徹頭徹尾高温に晒され続け自らも高温を生み出し地獄の様な暑さでへとへとに疲れて死にそうだ。でも悪い事ばかりでもない、出来上がった魔力を溜めずにすぐに放出する練習になったお陰で、より多くの魔力を練っても魔力酔いでぶっ倒れることがほぼ無くなった。寧ろ一仕事終えた達成感すらある。


「ンアファ~、ご苦労じゃったのエルドワーフ。あとは組み立てるだけじゃがそれくらいはここの連中でも出来るじゃろうから先に宿に戻りなさい。ワシはこいつを届けてから戻る」

「とか言ってまた一人で酒場行くんでしょ?」

「ん?そりゃまぁ、ん~当然じゃい!」

「何で開き直った顔してるの?それは別にいいとしてお土産とか貰ってきてね。・・・・・あッ」

「土産?おもろい話でも聞きたいんか?」

「違う違う、まあそれもいいけど物が良いね、美味しい物。ところで、今思い出したんだけど蛇を売った金で何を買ったの?」

「ギクッ」


 『ギクッ』っていうの擬音じゃなくて口で言うんだなんて知らなかった。じゃなくて、こんなただ働きをするそもそものきっかけになったバウロの暴走の結末を俺はまだ知らない。


「あれって結構スゴイやつだったんでしょ?1枚でも良い値が付いたんじゃないの?それって幾ら?都に行ったらどれくらいになるんだろうね?んでもってそのお金で何を買ったの?どんな()を買ったの?量?それとも質?今どこに保管してるの?ねえ?ねえねえ…」

「ンッガァアアア!!!やっかましいわーい!!ごちゃごちゃうるせぇーわい!あとで話してやるからとっとと帰れ!!」

「嫌だ、ネタは挙がってるんだ!金貨300枚で何を買った!?どこにある?!俺にも飲ませろ!!」

「金額知っとるじゃねぇか?!何でだ!?いやっ、あぁもう!わかったわかった、ひっくるめるとエルドも飲みたいんじゃな?やれやれ、こんな幼子の内から酒の味を覚えさすんじゃなかったわい…。後で土産と一緒に宿に持ってってやるから大人しく帰ってくれ」

「忘れちゃダメだよ~」


 そして仕事後よりも疲れた表情のバウロの見送りを背に歩いてすぐにある宿に戻った。

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