11. 因果応酬
1x. は夢オチとしてそのまま続きにしちゃいます。
10/19 加筆修正
「………むにゃ………ん~ん」
つい昨日一日の夢から醒めてあくびを噛み殺して身を起こした。
「………どこだここ?」
眠気眼にぼんやり映し出されるのはカビ臭い、石造の部屋と鉄格子。
どうやらエルドワーフは牢屋に閉じ込められているようです。
「え~と、何があったんだっけ?」
頭を抱えて考えようと腕を動かそうとすると、両手首にがっちりと木製の手錠が掛けられている。
落ち着け、俺。冷静に考えろ、眠る前の記憶を思い出せ!
そう……確か俺は酒場でタダ飯をもらったんだ……。
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「ごちそうさまでしたー」
親切な酒場のマスターのご厚意で美味しい料理を堪能しご満悦。
朝採れてから時間の経った馬ミルクはぬるくなっていたけど何だかとても懐かしい味がした。
一方スープは根野菜をたっぷりのミルク(やはり馬由来)で煮込んだシチューで、コクと香りが素晴らしく味も絶品だった。
食べ終わってから辺りを見回すと昼食時だからか段々お客が増えてきた気がする。
「マスター、取り敢えずエール!」
「私は大麦茶」
「僕は回復茶で」
「あいよー」
昼間っから酒を飲むつもりなのかと呆れて声のした方へチラリと目を遣ると、いかにも冒険者風の格好をした3人組が席に着いたところだった。
「はぁ~、遥々ここまで来てまさか池攫いをさせられるとはな~」
最初にエールを注文した男性は短い金髪をした顎髭の渋いナイスガイ。両手で使う大鉈を背中にくっ付け、革鎧をベースにして右半身だけ鉄鎧を纏っている。
「ホント、たかが水草の除去でも金貨くれなきゃ絶対やらないわよね」
大麦茶を頼んだ女性はダークブラウンの髪をサイドアップにした長身女子。武器とリュックサック以外は門番の人達に似た装備だがこちらは丁寧に手入れがされている模様、武器はリボルバー式拳銃一丁と厳ついナイフ一振り。
胸のサイズはブレストプレートに隠れて一切わからないがスタイルは優秀。
「採取クエスト扱いだったけど大蛇の番が出るし、楽々って訳でもなかったけどね」
最後の男性もダークブラウンの髪色をしたポニーテールイケメン。丈夫そうな生地で出来た灰色のコートに身を包んでいるが身体の前にリュックを抱えて可笑しな格好になっている。
まだ客が少ない所為か声を抑えて会話しているがエルドワーフの地獄耳の前では全部筒抜けだ。
ここに来るまでにバウロが教えてくれたがこの町(当時は村)は昔、王様の許可を得て沼の近くに作られた開拓村から始まったそうなので恐らく彼らの言う池とはその沼のことだろう、膝から下が泥んこになっていて如何にも仕事してきました感を醸し出している。
「結局どっちも平らげてやったがな!」
「水草刈りが金貨1枚と銀貨25枚、大蛇級が2匹で金貨6枚…。大儲けなのは間違いない筈なんだけどね」
「まさか直前に別の大蛇級、それも規格外の上物が卸されて値崩れをしているなんて運が悪いわ」
「ちくしょ~、一体あのドワーフ何者なんだ?」
なんだって?ドワーフが大蛇級を卸した?
「ちょちょちょちょっと! 今の話は本当ですか!?」
「うわっ!? いきなりなんだ!?」
「ちょっと君! 盗み聞きは感心しないわね」
「まあまあ落ち着いて」
「お願いです! そのドワーフの居場所を、或いはどこで売ったかだけでも…!」
目の前の3人組は困惑の表情を浮かべるがこっちも困惑している。まずあの皮はこんな辺鄙な所じゃなくもっと遠方の都で売る予定の筈だ。しかも例の大蛇を討伐したのはほかならぬこの俺自身で、全部見たわけじゃないけど解体などはほとんどエリ-がやったそうだ。
それを何の断りもなく勝手に売り払っただと? ふざけるな!
「お、おいおい迷惑かけるなら出てって…ってさっきのガキじゃねえか? タダで飯食わせたのに騒ぎを起こすなんざどういうつもりだ?」
「すいませんがもうしばらく俺の荷車を裏手に置いておいてくれませんか? 後でスープの代金払いに来ますから」
「はぁ?」
今度はマスターまでもが片眉を上げて呆れた声を出した、しかし流石と言うか言いながら受けた注文は机に間違えなく並べていった。
「どうするの?」
「どうするって、何か困ってるみたいだし教えるだけだろ?」
「わかりました。…で? 一応聞くけどそのドワーフとどういう関係かな?」
「親父です」
「親父って……ハーフなの?」
肯定として頷く。但し書きで『エルフとの』がつくけどね。
「………何かまだ隠してる気がするけど嘘は言ってなさそうだな」
「母親似なのかしら?」
「もういいでしょう。ここを出て右手側、南へ向かって降りて行くと噴水があって、そこから更に南西に向かうと港があってそこで冒険者ギルドを探すんだ。その中の買取窓口で僕たちは蛇の皮を買い取ってもらったんだ」
噴水、南西、港、冒険者ギルド………ここの皮革業者に売るよりはまだ大金を持ってそうではあるが、何で俺を置いて行ってまで売りに走ったんだ?
道順を反芻すると同時にバウロの動機を考えてみるがその答えはすぐに明らかにされた。
「確かあのドワーフは『手持ちの水筒にしか酒が無いのにもう飲み干したからコレで漸く安心して旅を続けられる』とかって言ってたわよ。ドワーフって酒のことしか頭に無いのかしらね」
ピクッ
『飲み干したから』だと?
ガタッ
「「「!!?」」」
「うおっ!?」
俺は多少馬鹿にされたり小突かれたりしても大して気にしないが、大事なものを勝手にどうこうされるのは我慢ならない。特に無断で借りたりパクってそれを壊したり無くされたときは一発OUTだ。ただ今回は本来売りに行く場所とは違う場で、しかも忠告したのにテメーで勝手に飲み干しといて、勝手に俺の大蛇級を売ってしまったらしい。
頭に怒りと血が濁流の様に殺到し全身の毛が逆立っていく。感情の爆発が魔力原動力と噛み合い膨大な魔力を辺りに撒き散らす。
それに反応して目の前の3人組は臨戦態勢に、マスターは飛び退いてカウンターの向こう側へ消えた。
表では人が転び、裏手の厩舎の馬が騒ぎ出す。
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「………」
冒険者稼業を始めて数々の修羅場をくぐって来たと自負する自分たちでさえアレ程のプレッシャーを感じるのは久方振りだった。
当時まだ駆け出しで己の腕力を頼りにがむしゃらに突き進んでいた頃、偶然遭遇した魔獣に無謀にも挑戦し惨敗した苦々しい過去を思い出した。
藪をつついて大蛇を出すと言ったか、今まさにそんな状況だ。
一体あの子供のどこからあんなに大量の魔力を生み出す力があるというのか、空恐ろしく思っているのは他の2人も同じだろうか。
「………?」
フッ と唐突に魔力の圧力が消え去った。
3人とも目配せをして『お前イケよ!』『嫌だ、ソッチこそ』『お断りします』と出方を伺っている。
それを見たマスターが仕様がないとばかりに前に出てきた。
「お、おい」
「大変ご迷惑をお掛けしました! 必要なことを教えていただきありがとうございます。これからすぐに父を探しに向かいたいと思いますのでマスター! もうしばらく荷車を置かせて下さい」
「お、おぅ…」
「それでは失礼いたします。…とその前に、ココの白スープは絶品ですよ! 食べなきゃ損です! たぶん肉とかにも合いますヨ!! じゃ!」
と一息で捲し立てたらあっという間にその場から一っ跳びで両開きのドアを越し、玄関から消えていった。
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何が起きたのかよくわからないうちに終わってしまったが、座っていた椅子を倒してしまっただけであとは何ともない。飲み物すら一滴もこぼれてはいない。
「………えーと、じゃあ追加で白スープと肉料理3人前」
「…あいよ~」
気を取り直して追加の注文を取って座り直す。3人共が同時に目の前のコップの中身をグイッと煽って先程のことは終わったこととして飲み下した。
「アッハッハッ、今日はとことんツイてねーや! 2人も呑も~ぜ~、マスター! ウィスキートリプル3つ!」
「そうね、お金はあるしそうしましょ」
「ところで何の肉何でしょうか?」
切り替えの早さも一流冒険者には必要だ。もういつもの仕事上がりモードになってくつろいでいる。
それは暴れん坊の飲兵衛達が集まる酒場でマスターと呼ばれるおっさんも同じで、
「お、いい具合に血が抜けてるな。よし、ホブオークはステーキにしちまうか」
いつもよりちょっと早いだけで騒々しくなるのはいつものことなのでもう気にしないことにした。
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魔力ってスゴイね、怒って当たり散らしたくなる衝動を見えない力で発散できてしまうから、しかも物的被害もナシ! 魔力酔いの吐き気で冷静にもなれたヨ!
酒場を飛び出して10秒で噴水に到着した。真っ昼間の表通りは馬と人とでごった返していたので建物の屋根を伝って行ったお陰かもしれない。
噴水広場の傍の少し高く突き出た建物の天辺から見下ろすとやっぱり広場も人だらけだ。
北から流れ込む川が町の手前で急に曲がり斜めに入り込みここ噴水広場の入り口近くで地面の下へ一旦潜る、そして石畳の町の地下を通って次に顔を出すのはどうやら南西の湖になるようだ。
40~50年でよくここまで頑張ったもんだ、前世の日本でも治水事業なんて数十年単位でするもんなのに。
と感心している場合じゃない。まさか全部売ってるわけは無いと思うが一つ二つの皮は売られていると仮定して、売った金で酒を買っても十分過ぎるくらいの金は残るだろう。と言うことはどっかで酒盛りしているかもしれない。普通こんな昼間っから酒飲むとかさっきみたいな人達でも無い限りありえないが、家でのバウロはそんなのお構いなしで仕事中以外はほぼ飲みまくっている。
急がないと……
「おい、君! そんなところで何をしている!?」
げ、ここは衛兵の詰所の物見塔だったのか。通りで見晴らしが良いわけだ。
「危ないから降りてきなさい!」
「ごめんなさ~い」
「!? 危なーい!!」
心配ご無用です。ちゃんと荷車運ぶ時と同じくらいしっかり身体を強化していますから、って思っても聞こえないし言っても信じないだろうね。
この脚力で跳べば反対側の建物まで届くし、このまま港へ向かってしまおう。
あ、でも冒険者ギルドの目印みたいなのとか聞いとけばよかったなぁ。
バウロが家からの道中沼とか説明するからもっと暗い濁ったイメージをしていたけどそんなことはなかった。
これは湖だ、それもめちゃくちゃ広くて琵琶湖みたいだ。
最初は畔じゃなくて近くで村おこしが始まったらしいけど、きっと湖の大蛇みたいなのを危惧してそうなったんだろうね。
さて、早速冒険者ギルドを探しに屋根から降りようか。
「とう!」
これくらいの高さになると昇り降りで全然感覚が違う。飛び上がりはそうでもないけど、飛び降りは怖い。
見晴らしが良いからこの建物の屋上に飛び移ったけど、ってことは一番大きい建物になるのかな?少なくとも高さは十分、看板あったら確認しないと。
案の定、看板は立派なのがぶら下がっていた。
「え~と、“冒険ギルド・バンバー支部”…」
ビンゴ! 探さなくても見つけたぜ! 人に尋ねるとなると厳つい感じのガテン系のオッサンか如何にも金の亡者って感じの商人しかいないからちょっと焦ったよ。
中に入ると沢山の人達が幾つものグループになってそれぞれでワイワイ活気を生み出している。そしてギルド支部の内装は正面に受け付けがバーン! その横に掲示板がドーン! 反対側に2階へ通じる5人くらい並んで上れる階段がズドーン! 吹き抜けになった2階は酒場かなんかが併設されててズバーン!と広い。
ギルドの広さと活気に圧倒されてフラフラと受付へ近づくと受付嬢が元気よく挨拶をしてくれた。
「冒険者ギルド・バンバー支部へようこそ! 冒険者登録はこちらで受け付けております!」
元気が眩しい…! 若干仰け反りながらも勇気を出して聞いてみた。
「あの…手持ちの素材を買い取ってくれる所はどこです?」
「ハイ! 買取カウンターはあちらの依頼掲示板の隣から入場出来ます!」
「ありがとうございます」
「またのご利用お待ちしております!」
ふー、テンションが数段上の人に話し掛けるのはしんどい。こっちは気圧されて消え入りそうな声になりそうだった。
でもあの人もプロだな、笑っていたけど目は口の動きに集中して読み取ろうとしていたし、会話が成立していたし。
依頼掲示板横の扉には掛け看板が下がり“買取口(臭い注意!)”と読めた。
首の高さの取っ手を捻って中に入ると確かに獣の血の匂いや植物の青臭さ、そして防腐剤とかの薬品の刺激的なニオイが部屋いっぱいに充満していた。
「ウエェ…」
「おや? こんな子供がギルド勝手口から来るなんて珍しい、何の用でしょうか」
フルフェイスの防毒マスクを着けた白衣の男性が近づいてくる。ほぼ血に染まった白衣の紅白の比率はサンタさん並だ。
「……ここにドワーフが大蛇級の皮を売りに来たと聞いたんですけど」
「ほう? 君あのドワーフの知り合いかい? いやあ、あんなに大きく分厚くて立派な蛇の皮を視るのは初めてでね! 口を利いてもっと売ってくれるように御願い出来ないかな? 普通の蛇の皮は1mmも無い位なんだけど、大蛇級になっても厚さは1cmにもならないんだ。だけどあの大蛇皮は…」
「ドワーフが売りに来たのは確かなんですね?」
「ええ、あんな小さいおじさんはドワーフ族に間違いないでしょう」
この人がもっと売ってくれと頼むくらいなら、少なくとも持っている分すべてを売り払ってしまう事態にはなっていないようで安心した。
「その人の足取りとかわかりますか?」
「んー、いつもなら教えてあげられるけど大口の取引をした相手の情報は軽々しく教えられないなあ」
そりゃそうだ、取引して大金持ってる人がどこで何してるか外部に知れたらどんな輩が近づいてくるかわかったもんじゃない。信用問題になる。
「その代わりと言っては何だけど、この支部へ来るのは初めてだね? そっちから入って来たから見たと思うけど、支部の2階は酒場になっていて冒険者以外にも商人が沢山いるから覗いてみたらいいと思うよ」
「フガ…、ありがとうございます」
鼻のムズ痒さに耐えながら買取カウンターを後にする。やっぱりここで荷を軽くしたのは間違いないようだった。
問題はその後のバウロの行方が分からなくなったことだが手掛かりはある。
受付の前を横切る時にさっきの受付嬢がにこやかに小さく手を振ってきたが、軽く会釈だけして通り過ぎた。
祈る気持ちで階段を上がっていくと、まだ昼間だというのにもう人でごった返していた。むしろ昼だからこそか。
これじゃあ背の低いエルドワーフがこれまた背の低いバウロを探そうにも人混みに紛れて一苦労しそうだ。
「おいおいガキンチョがこんな所で何やってんだぁ? ミルクが欲しいなら北に馬小屋がたくさんあるぜ~」
「ぎゃはははは!!!」
おまけに馬鹿騒ぎしている集団も一つや二つじゃない。冷静に見れば馬の買い付け商人や船の行きと帰りの護衛の終着点がここバンバー支部なので、みんな懐に余裕があるんだろうが今は鬱陶しい位に五月蠅いと思う以外にない。
「おいコラ聞いてんのか?」
もう出来上がっているのかやけに絡んでくるな……。面倒だから無視だ無視!
酒臭いし五月蠅いのとでさっきから息が詰まりそうだし耳がキンキンする。でもこれからやることは既に決めている。
親父は特徴的な笑い声を挙げる。その笑い声にだけ集中して探せればあとは一発ガツンとやってやるだけだ。
その前に酒場の梁に跳び移って上から酒場を見渡す。
ざっと見た所バウロ以外のドワーフも何人かこの酒場には居るようだ。
最寄りの酒場はここらしいけど当てが外れたかな? 不安になってきた。
梁の上にヘタッと座り込んで気力も練らない一番楽な体勢をとる。多少埃臭いのを我慢して規則正しい呼吸を繰り返し精神統一。
ただでさえ離れた場所の僅かなささやき声も聞き逃さない地獄耳に魔力を上乗せして声を聴き分ける。
まずは手前から、………ドワーフは居たが酒に酔った笑い声は全く似ていない、ガラも悪いしここには居なさそうだ。
次は真ん中、冒険者より商人風のが多いかも? バウロは両手斧を背負っていたし商人風の格好じゃないからここも居なさそうだ。
更に奥、カウンターの手前は冒険者たちが和気藹々としている。入口付近と違って老若男女入り混じった一番活気のある場所のようだ。種族も様々でヒトはもちろんドワーフやエルフ、獣人その他見たこともない種族が同じテーブルを囲んでいる。だがバウロの声は聞こえない。
最後にカウンター、L字型の対面式は客の一人一人が確認しやすいが角の隅から奥に少し延びている。背中を見せている客は見ればわかるが角奥は客が重なって見えにくいな。
…梁の上から見ているのに重なって顔も見えないってことはあれもチビのドワーフか、最後だしもっと集中してみよう。
白髪の老戦士に隠れてうまい具合に隠れて談笑しているようだ、しかし俺の大地獄耳からは逃れられない。
『……ハハハ、しかしお前も律儀な奴だな、わざわざこんな老い耄れを飲みに誘うとは』
『何が老い耄れだ、まだまだ気の衰えを感じさせん癖にのぅ』
むー? 聞き覚えのある話し方だぞ?
『ところでお前植物園にでも行ったのか? 薬草の青臭いのがこっちにも漂っているぞ?』
『下の質屋に行ったからの、かく言うワシもさっきから鼻がムズ痒いなんのって…ン…ハァ…ンァックション!! ンアッハッハッハ』
!! 見つけたぞクソ親爺ィ!!!
死ぬ思いをしてようやく手に入れたブツを勝手に飲み代にされるのは許せん!理由はともかく一発は殴らないと気が済まない、あとのことはその時考える。
梁の上を跳び移り頭上で一気に畳みかける!狙うはとんがり帽子のてっp…!!?
「子供がこんな所で何をしている?」
何時の間にかバウロと飲んでいた老戦士が梁上のエルドワーフの目前まで迫っていた。
騒ぎを最小にしておくよう気配は殺していたのに、もの凄い気迫をぶつけてくる。
「小遣い貰いに来たの」
「?」
…面と向かってわかる、この爺さん只者じゃない。
だから無邪気に笑って毒気を抜くのが無駄な争いをしない秘訣だ。
一瞬間の抜けた所へ魔力原動力限界で爺さんに飛びつく、ちょっと加齢臭がするぞ。
バウロに集中していて不覚をとったけど俊敏性では全力の俺の方が少し上かも。
すかさず爺さんを上に、自分は地面向かって蹴り出す!
ドダンッ!
「ンア?! エルドワーフ!?」
「こんの、アホーーー!!!」
ズゴンッ!! メドッズーーーン!!!
うわぁ、力加減間違っちゃったー(・ω<)-☆
…どうしよう、床に穴まで開けるつもりはなかったのに……
「どーも、お騒がs…」
気付いた時には眉間に鈍色のかかと落としが迫っていた。
あ、この加齢臭は覚えがある…!
………とか考えてから先の記憶がなくなっている。
―_―_―_―_―
……フーン、ってことはここは本当に牢屋で、俺は逮捕されたんだろうと容易に推測できる。
どれ位時間が経ったのかは見当もつかない、なんせこの部屋には明り取りの窓すら無い。しかも通路から冷たい風が入って来るので、窒息はしないだろうけどこのままだと凍えるかもしれない。
このまま幽閉されるかそれとも釈放かどうかわからないけど、果報は寝て待てって言うし起きたばっかりだけどあちこち駆け回った疲れが残っているし、一先ず横になって落ち着いて…あ、荷物とかどうなったんだろう? 親父はたぶん大丈夫だろ。そういや大蛇の皮は一体いくらになったんだろう?床の修理費は……
ふぁ、また眠くなって来た。もういいや、寝よ。




