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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
12/54

1x. 閑話休題・10. にするつもりだった前日譚 @

4/28 あとがきに登場人物紹介追加

 大蛇退治から一夜明けた朝、


「午前中は倉庫整理じゃ。と言ってもワシが作った剣を引っ張り出すだけじゃがな」


 バウロは地下の作業場とは別に玄関口崖下近くの岩肌を刳り貫いた、保管用の部屋を用意している。

 中を覗くと魔力で自動着脱可能な鎧だとか超振動で小突いただけで岩をも砕く小手といった仕掛け(ギミック)満載の発明品が棚や地面と言わず所狭しと置かれていた。


「おっと、無暗に触るんじゃないぞ? ソイツは岩をも砕くが同時に腕の骨まで粉砕するし、ソッチのは閉じると締め付け過ぎて呼吸も出来なくなるぞ」


 失敗した発明品ってどうしてこう役立たずか命懸けの両極端な結果になるのでしょうか? そう思うのは俺の偏見かな?



 大倉庫と同じく魔法照明のスイッチをいれて最奥まで見通すと入り口近くと違い奥の方はキチンと整理されている。その中でも部屋の半分を占めている見た目も大きさも同じな大量の片手剣(ショートソード)を売るらしい。


「なんでこんなに沢山あるの?」

「形状は勿論、大きさ、重量、重心と、まぁ一定の品質を狙って作り続ける鍛冶の練習でな。丁度いい機会じゃからついでに売っ払っちまうんじゃ」

「量産品の練習かぁ、粘土や絵付けでも同じ形同じ柄って難しいもんね」


 大部分が手作業の鍛造での量産は、型に流し込む鋳造と違い同じ品質を保つのが非常に難しい。

なので幼い時分の遊びは専ら粘土遊びやお絵かきで練習している。


 部屋から大倉庫へ運び出すと全部で256本もあった。


「多過ぎるな~木箱の数足りるの?」

「心配するな、箱は沢山あるし足りなくても材料の木材は周りにいくらでも生えているじゃろう? そうじゃ木と言えば昨日薙ぎ倒した森の木がほったらかしだったのう。エルドや、ワシは箱と詰め物の用意してるから昼までに森の端まで倒れとる倒木を拾ってこい」

「何で昼までに?」

「エリーの手伝いで運ばされるか自主的に終わらせるかの違いじゃ」


 昨日は甘いケーキに感動したけれどもそれでトラウマが消えてなくなる訳が無い。

 母は肉体運働的なことになると人が変わったように厳しくなる。限界を見極めてギリギリの綱渡りを強制する。

 青い顔になりながらも出発する前に一応現在の居場所を聞いておこう。


「ところでお母さんは?」

「昨日採りっぱぐれた骨や牙を回収に向かったぞ。昼までには終わらすそうじゃ」


 なるほど、納得したところで森へ向かって出発した。


__________



 大玄関(搬入口)前のちょっとした広場から森の奥へ続く獣道、頭上を覆うはずの木が無くなり、程よく光が差し込み、固く地面が均され両脇の荒れた地面や倒木さえ処理すれば立派な道路になりそうだ。

 この道の手前にはまだ赤黒い染みが生々しく残っていて顔をしかめざるを得なかった。

 とりあえず倒木を拾いに行く訳だが手前から始めるかそれとも奥から始めるか、気分的には手前からとっとと始めてしまいたいが、体力のあるうちに一番遠くから済ませた方が効率的なので状況確認を兼ねて歩いてみよう。


 森の中は基本的にもの凄く暗い、同じような樹木がどこまでも並んで枝と葉っぱが樹上を密集し光をシャットアウト。暗い上に似たような景色&地形が続くので、バウロでさえ森を真っ直ぐ横切ることが出来なかった迷いの森になっている。

 その為道は広場から森の外側までゆるく湾曲した一本道になっている。

 距離は約1㎞、道幅はエリーの運鉄板(ソリ)の幅8m分だが、木の幹だけで2mもあったことや樹木同士が付かず離れずに生えてたお蔭で道幅以上に太陽が降り注ぎ余計広く感じる。

 不思議なことに暗く鬱蒼としている割に枝から地表までの風通しが良く、湿気もジメジメしていない上地面に光が届かなかった所為か雑草どころかキノコも生えていない。

 この道を使えば街へ行くのも楽に行けそうだ……もしかしてそれを見越してソリで均させたのか?


「明るくなるだけで結構印象が違って見えるなぁ」


 太陽光のお蔭で目に力を籠めずに周囲の状況がわかるだけでも随分と歩きやすい。

 道から外れた森の中には倒木が転がっているが数はそれほど多くなかったのは幸いだ。


 道の端まで来ると急に木々が途切れて森の内外がはっきりと別れ、出入口付近が大きく抉れて昨日ソリで擦った道が森に沿って西へと続いている。


 昨日は暗くなり始めの夕方だったのと必死だったのとで気付かなかったが、鬱蒼とした樹海の向こう側は嘘のように広大な草原が広がっていた。

 足の毛深い馬が自由に走り回り、大蛇を仕留めた湖の方角から流れる川の水を飲み、群れで一緒に草を食んでいる光景に感動すら覚えた。

 スケッチブックやカメラがあったら額縁に入れて保存したくなる風景だ。


 心地良い風が吹く、この大草原に寝そべって日向ぼっこがしたい

 馬のように草原を走ってあの小高い丘に登り、反対側へ流れる川の先を見に行きたい

 馬と川以外は木と草が延々と続く景色に初めは感動こそすれすぐに飽きた、所々突き出た丘に地平線の下が隠れてしまい、思う以上に狭い範囲しか見えていない所為もある。

 こういう時、無邪気な子供なら駆け出して行ってしまうだろうが、俺の頭脳は大人、大人しく寝そべって今はこの草のベッドを堪能しよう。慌てなくても数日でもっと遠くへ足を運ぶのだから...。


 ゴロンと草原に身を投げ出し雲一つ無い真っ青な空を見つめていると吸い込まれそうだ、ポカポカ陽気に包まれて目をつぶると気持ち良く眠れそう…ぅ…

 ……しかしそうは問屋が卸さない


ビシィッ


「ンギャッ!?」

「おはよ~エルドちゃん、こんなところで寝てたら恐~いヘビや人攫いに遭遇するかも知れないわよ~?」


 お、恐るべき鬼に遭遇して絶賛頭蓋が危険信号を送受信しております!


「い、痛いよぅ…」

「あら、今のでその反応なら頭で岩砕き出来るんじゃないかしら? ところでここで何してるの?」


 一体どういう基準で加減をしているのだろうか、ニコニコしているのが逆に恐ろしい。ここは誠実に答えよう


「昨日倒した樹を拾いに来たんだよ、でもここ気持ちよさそうだから横になってみたくなったの」

「正直なのは良いけどホントに気を付けてよね? 森と違ってここまでは偶~に人が来るから、何も知らない人だと勝手に保護されちゃうかも」


 このゴブリンの森及び西の湖を越えた先は危険地帯として立ち入りが制限されているらしい。

 バウロとエリーがここに住み始めたのは制限される遥か前なので、(当時の)近隣の村人には(この時初めて近くに村があると初めて知らされた)土地の番人的な認知をされているが、その子供であるエルドワーフは見た目はただの人間(・・)の子供なので見つかったら無理矢理にでも保護される可能性がある。

 幸い言葉にはもう不自由しないので、ちゃんと説明すれば何とかなると思っているけれど厄介事はなるべく避けたい。


「ごめんなさい」

「謝らなくてもいいのよ~、エルドちゃんなら攫われたってどうにか出来そうだし、なんたってあんな大蛇を討伐したんだもの~」


 そう言ってエリーが自分の背後を指差すのを起き上がってのぞき込むと、昨日の運鉄板(ソリ)に巨大な蛇の骨の一部と割れて小さくなった牙付きの頭蓋骨が乗せられていた。

 改めて近くで蛇の頭蓋を見ると大き過ぎて今更ながら本当に自分が倒したのか自信がなくなってきた。


「それに謝るのは私の方よ、甘い観測とそれに伴う準備不足でエルドちゃんを何度も死にかけさせたし、焼きが回ったのかしら…兎にも角にもゴメンね。あ、お母さんもまだ始めたばかりだから頭とちょっとしかないけど、何往復かするつもりだからその途度手伝ってあげるわ」


 正直、決して準備不足では無かったと思うが死に掛けたのは事実だしトラウマだし…、ありがとうと一応は返したがその時の顔はきっと蒼白く血の気が引いたかも。

 エリーは苦笑いを浮かべた後、あの奇妙な仮面を取り出した。


「それ何?」

「ん? これのこと?」


 よく見ると仮面はエリーの顔の形に合わせて作り込まれており、口の内側に向かって(・・・・・・・)変な突起が出ている。


「そうねぇ~、今教えてあげられるのはこれが自強化の魔道具で、これがあれば昨日のヘビを倒していたのがお母さんになっていたかも知れないってことかしらね~?」


 詳しいことは教えてくれなさそうだ。しかし非常に興味深い代物には変わりなく、あの変てこな突起は異世界(ぜんせ)で言うならマウスピースと呼ばれる物かな?


「そんな目で見なくてもいつか独り立ちする時が来たら作り方を教えてあげるわよ? 特別サービスで教えてあげるけど、重要なのはこの部分、口銜(くちはみ)さえあればあとはオマケなの」


 なんだかんだ言って結局教えてもらえたのはマウスピース部分が重要なのと素材に魔獣の肉片を使うことだった。

 仮面の部分はあっても無くても構わないが基本、完全一品物(オーダーメイド)なので同じものが2つと無い自分だけの物と言う所に無性にときめいた。


「さてと、立ち話はこれくらいにしてそろそろやるべきことをしましょ? 日が暮れちゃうわ~」


 仮面を被ると昨日みたいな殺気を放ったりはしなかったが、相変わらずの膨大な魔力が辺りに充満した。しかしエリーが深く息を吐きだすとともに魔力的な圧迫感がどんどん薄れていった。


「魔力は気配と同じく殺すことが出来るの。(魔力を)放出しながら無気にする事は不可能だけど希薄にすることは可能よ。出来て損は無いからエルドワーフも練習してみるといいと思うわよ」


 言いながらソリに結んだ綱を担ぎ上げる。運鉄板は大・中・小ある内の一番大きいサイズだ。

上に乗っかっている荷物(骨と牙)も超重量、それを雪上のソリの様に軽々と引っ張って行く。


 普段のエリーの限界はわからない、恐らく腕力ではバウロには届かない程度でも総合的には少し強いと思う。しかし今のエリーはその3乗倍くらい強くなっているかもしれない。

『綱を担ぎ上げ』なんて表現したがすぐに『スクールカバンを肩越しに指を引掛ける感じ』で楽~に歩いている。

 そういえばデコピンされるまで近づいてきた事はおろか引き摺る音にも気付かなかった。気配は今ので説明がつくけど音は別の技術なのかな?



 森に戻ってすぐ、最初の倒木の状態を調べた。

 張り倒した樹木は全てバウロの拳で両脇に吹き飛ばされ、根元から千切れたり引っこ抜けたりし、幹には拳で穿たれた跡が残っている。

 思い返すに、バウロも腕のリーチ以上の距離から樹をぶっ飛ばしていたと記憶している、なんだか両親こそが怪物じみていて複雑な気持ちに苛まれてしまう。

 あ、じゃあ俺はバケモンのせがれってことになるのか? そんなアニメ映画あったね、懐かしいわーあははは……。


 元々大きな木なので木材として加工する分には問題無いが、なんだか無残な姿に同情してしまった。

 イヤイヤ、こいつらの仲間に土の肥やしにされかけたんだ、同情の余地は無い!

 さて、とりあえず要らない枝葉や根元を千切り落として土に還るように辺りにばら撒いたら残った幹をどう持って運ぼうか…。


 ふと振り返るとエリーは当然のように倒木を拾い上げている。

 持ち方は堂々たる鷲掴み、手の小さな俺にはとても真似できないぞ。

 なので俺はへこんだ傷痕を取っ掛かりにして肩に担ぎ上げた。クソ重たいな。

 勢いをつけてぶっ倒すのは簡単だけど、持ち上げて運ぶのは力は勿論、バランスにも意識を集中しないと厳しい。

 魔力ロータリー出力7割でやっと安定するくらいだ。


 二人は縦に並んで歩く、先頭はエルドワーフ。エリーの引く鉄板(ソリ)の幅が道幅と同じだからだ。


 森の中はとても静かで鳥の囀りさえ聞こえない。聞こえるのは一歩一歩地面を踏みしめる音と………?

 ……やっぱり地面を抉るソリの音がしない。自慢の耳を澄ませてもまるで雪の上でソリを曳くような音が聞こえてくる程度だ。


 重いソリで均したとはいえ、地面は根っこが抜けたりだとかで所々大小様々な石ころが顔をのぞかせたりしている。いくら真っ平らにしても金属と石がぶつかったり擦れればガリガリ音が鳴る、筈。

 身体の動かし方にしろ魔力の扱い方にしろ、きちんと勉強し始めたのは昨日今日の事だからまだまだ知らない何かがあるのかも。でも質問する相手が相手だけに素直に質問をぶつけるのは戸惑われるなぁ。


 担いだ樹木と一緒にグルリと半回転、エリーは鼻歌交じりに綱をへその辺りに引掛けて樹は体の前でお姫様抱っこして歩いている。

 足元に注目する。影が出来て若干わかりにくいがやはり足跡の微妙な窪みは見受けられない。

 俺とエリーの間には俺がつけた足跡が残っているので俺以上に強力な踏ん張りを要するエリーの足跡が残らないのはやはりおかしい。

 うーん、これは技術どうこうじゃなくってもしかしたら魔法的な問題なのかも知れない。

 その証拠にエリーは足元に注目しだしたと見るや否や微妙な小匙加減で魔の気配を緩めた。

 ここまで御膳立てされて気付かない訳にはいかないな。


「……ねぇ」

「なぁに?」

「気功は身体だけじゃなく物にも流し込んで強くすることができるの?」

「ええ出来るわ。じゃないと魔道具は作れないし、いくらこのロープが魔蜘蛛の糸を縒り合わせた特別製でもこの重量を引っ張るには少し心許無いから今もやってるわ~」

「(どうやって喋ってるんだ?)ん~、じゃあそれって地面とかにも同じことが出来るの?」


 仮面に開いた穴から覗き見える双眸の表情がにんまりとした気がする。


「どうしてそう思うの?」

「樹一本持って歩いたくらいで足跡が着くのにお母さんの足跡は無いよね? 靴に気を流し込んでも踏むのに変わりないから地面なのかな? って思って。

 せっかくこんなにきれいな道だもんこの状態を出来るなら維持したいよ」


 新雪の上に足跡を残す快感ッていうのがあるらしいが、俺はそのままの景色の方が好き。

 この森は年中葉をつけたままの常緑樹で四季もくそもないが、これはこれで好きなので風景の一部である地面が荒れるのはなるべく抑えたい。


「なら同じことが出来なくちゃね」


 だからただの薪樹拾いが訓練に移行してもモチベーションを維持出来る。かも。

 なあに、死ぬようなことは無いでしょうよ。たぶん。


 地面に気を流して強固にする予想は当っていた。曰く、


「盤石な足場は意外と馬鹿に出来ない要素なの。今の私なら3割の力でここら一帯の地形を変化させるくらい訳ないわ。だけど昨日みたいな大物相手じゃなくても、軽い運動で地図を書き換えていたらキリがないからこの歩法を用いてた訳。地形云々以外にも足跡を消して追跡を振り切ったり、水の上を歩いたり、それから空をスキップしたり…は話でしか聞いたことないけど、いろいろ応用が利くわ。少なくとも第二次旧文明中期くらいに誕生した技術で、私より強い生命体なんて今も昔も沢山いるんだから必然だったのね。」


 と、長々と話していたが要約して「馬鹿力で起きる天災的被害を防ぐ為」だと理解しよう。

 ていうか仮面装着エリーより強い生物とかまるで想像つかないんだけど、この世界怖すぎでしょ。


 また、地面を強固にすると擦れて移動する粒子が減るのでその分消音効果が生まれるそうだ。


「で、やり方だけど実は教えてあげられるほどのことは無いのよね。しいて言うなら段階を踏んで肉体→服→鎧やマントor武器や手荷物って感じで慣れてきたら、いよいよ地面や水といった環境に気を流す準備が完了するって具合かしら? ま、昨日みたいに怪我する度に服までボロボロになっているようじゃまだまだね」

「一体誰の所為なんでしょうねー」

「う……そんな無駄口叩けるまで成長したのね、だったら家まで走っても大丈夫そうね~」

「わー怒ったー(汗」


 親をからかうもんじゃないけど、かなり久しぶりに親子の雰囲気を楽しんでいる。たとえ親が変なマスクを付けて手に樹木を掴みソリに巨大な怪物の頭骨を載せながら『母上狂走曲』をおっ始めても、少しの間だけ昨日のことを忘れてはしゃぐつもりで走った。


 じゃないと精神的に死にそう。


__________



 楽しそう(・・・・)な時間はすぐに終わりを告げる。1km程度、魔法の脚力があればあっという間なのだ。最後の数十mで死ぬほど怖い気配に包まれて体感する世界がゆっくりしていっててもね。


 搬入口前の日当たりの良い場所に木を並べたら次は鉄板の荷物を搬入する、と言ってもソリごと倉庫に突入してテーブルクロス引きの要領で荷物を置き去りにするので俺は見ているだけだった。


 エリーが骨を大きさと種類別に簡単な選別をしている間、ソリに使っている鉄板を観察してみた。


 全長15m、幅8m、巨大な面積を持つ一枚板の鉄板は、前方に返しの無い反りが付けられ淵に荷物を固定するためのロープを通す輪っかがくっ付いている。

 それら以外に飾りらしい飾りのないシンプル且つワイルドなそれは、直に触れる程にただの金属の板ではないことがわかる。

 例えば、紙のように薄いのに一角を持つと一切の弛み無く持ち上がり、持つ手を上下に強く揺すっても全くの軋みすら無く、極めつけは腕試しに全力で握ってもビクともしないことから相当頑丈な素材で出来た板のようだ。


「何やっとんじゃいこんな所で?」


 倉庫の中から木屑まみれのバウロがやって来た。どうやら木を回収に来たようだ。


「んぐぐ……いや、がんじょうだなーって、これ何で出来てるの?」

「ほう、そこに目を着けるとはな。いいじゃろう、これはな“皇甲鉱石(アダマンタイト)”っちゅー滅茶苦茶硬い金属で作った板ソリじゃ」


 何でもどんなに強力な力や魔法を用いても精々僅かに歪める程度にしかならない程頑丈な希少金属であるが、精製~成形加工までの間しか形を変えることが出来ない厄介な(扱い辛い)素材だそうだ。

 アダマンタイトといえば某ファンタジーゲームにも登場する超硬質金属鉱石の名前だった筈、前世と同じくここでももの凄く硬い金属という扱いなのか。

 そんな代物をただの鉄板に加工して荷運び用のソリに使っているので、凄さとか説明されてもイマイチピンと来なかった。


「鍛造(叩いて延ばす)なんて出来ないし、ピカピカに磨いたり研磨して鋭くしたり出来ないから、刃物なんて作った日にゃよっぽど工夫しないとなまくらが出来上がっちまう。ただ、こいつを加工出来るようになりゃあ文句なしに一流じゃな。ちなワシは超一流じゃ! ンアッハッハッハ!」

「てことは、武器とかに加工できちゃうの? へー凄いねー、じゃ、もう行くね。まだまだ木、残ってるし」


 なんか面倒臭そうだから機嫌の良い内に話を適当に切り上げて戻ることにしよう。

 その後は木を拾っては持って帰ってを繰り返して、作業が終わったのは昼を跨いでしばらくしてからだった。



 昼食後、


「午後は箱詰め作業、その後で荷車の調整、場合によっては新しく作るからエルドも手伝うんじゃよ」


 256本の剣は16本1セットで直方体の細長い箱に納められ、計16箱。

 更に剣同士の接触を防ぐ緩衝剤に水粘土と呼ばれる森で採れた芋の澱粉質から作られた液体を満たしているので、1箱当り40kg弱、合計640kg以上にも上る。

 因みに俺はこの水粘土のことを密かに片栗粉DXと呼んでいる。何故ならこの片栗粉DXは衝撃を与えるとコンニャクのように固くなるが何もしなければさらさらと零れ落ちて汚れない上に美味しい優れものなのだ(所謂ダイラタンシーと呼ばれる物は手に付くとベタベタして中々取れない、片栗粉Xは食品ですよ?)。


「この位ならちょっと補強してやれば荷車は一つで足りそうじゃな、軸受と車輪を交換するか」


 軸受、つまりベアリングは古代エジプトや古代ローマでも使われていたので別段珍しいものでもない、ただバウロが持って来たソレはピカピカの金属光沢を持つボールベアリングで、滑らかな回転運動は見ているだけで癒されるものだった。


 鉄の荷車(蛇皮用と量産剣用の2台)の準備は完了し、荷物を積んで縄を張る。

 軽く引っ張った感じ、なぜか剣より大蛇の荷車の方が重かった。


「見れば見るほどホントにコイツはレイク・サーペントだったんか? 巨大化して表面の密度が高まるのは大蛇に限らずほとんどの怪獣魔獣の特徴じゃが、ブツブツ………」

「そのことについてはもっと詳しく調べておくわ」


 荷箱の前でなにやら両親がブツブツ話している。だけど今日は朝から晩まで慣れない作業で疲れ切ってしまって無茶苦茶眠い。


 剣や甲冑、革の鎧が現役の中世なのかと思えば、バウロの工房や大倉庫の照明器具のような現代に通じる物が出て来て実に面白い。

 明日になるのが待ち遠しくて、さっさと寝床へ…zZ乙

シルバー「寝落ちしたエルドワーフを運んだのは私だ」


______________________________


登場人物紹介その①・・・・・


「エルドワーフ」【エルドワーフ=アームストロング】

 身長・144cm(成長期) 体重・69kg(成長期) 髪色・ほぼ黒の焦げ茶色 目・黒色


 主人公。記憶が所々抜けているが、大学生だったらしい。建築系の大学に通っていたが留年の危機と補講を繰り返し、癒しを求めて故郷の祭りに参加した所で事故死した。享年21歳。

 メカニズムオタクで特に、金属工学とそれに基づく銃・刀剣類や車輌等の構造に詳しいが、入る大学を間違えた上に日の目を見る機会が無さそうである。それよりも子供の頃にブルー○・リーに憧れ、見様見真似で覚えたジークンドーの方が余程役に立っている。

 死後にヱルメスを名乗るどっかの煙ンみたいな青年から異世界転生の説明を受けて第2の人生を歩む事に、その際、青年から贈り物(チート)は何が良いかと聞かれて長生きしたいと願った。

 転生後は母親がエルフで父親がドワーフと言う、両親共に長命種の家に誕生する。そして両親それぞれの遺伝によりエルフとドワーフの中間的な白くて線の細い体格の内側に鋼の様な筋肉を持った、つまり見た目上は人間の様な新人類に生まれ変わった。更にその身体的特徴は前世の自身に瓜二つでもあった。

 現在10歳にまで成長しており、身長は父親(ドワーフ)であるバウロに届きそうだが、筋肉自体の()が成長し切っておらず、そのままでは掴まり立ちが精々。しかし掴まり立ちの翌日、母親であるエリーに連れられ生まれて初めて外出、外出先で教わった気功と魔力の扱い方により尋常ならざる力を手に入れるも代償に命を落とす、がエリーの霊薬(エリクサー)で復活。その後、紆余曲折を経て超大型の蛇の素材を売る旅に出るが……?


才能(センス)・・・固有の才能は未だ不明。先天的な才能として聴覚が異常に優れている。前世では隠し芸を10個も持っていた。

・肉体・・・平均的なエルフやドワーフと比べて成長が早い、しかし筋肉量は伴っていない。

・魔法・・・元々感覚的に優れていたのか、イメージを明確にするだけで大量の魔力を生み出すことに成功。それにより火の魔法に目覚める。

・頭脳・・・エルフは総じて記憶の忘却の無い学習チートを持っている。これによりあらゆる言語を解するマルチリンガルであったり、前世の記憶を呼び起こして将来に役立てようと画策したが今は役に立っていない。

・性格・・・お茶目。痛い目を見ても自身の感情を優先し、自分の倫理感に基づいて羽目を外す機会を窺っている。機嫌の良し悪しが激しいので悪い時は短気であるが、幾度も瀕死の重傷を負う事を反省して自重を意識し始めている。むっつりスケベ。


・称号[蛇殺し] ・座右の銘[死ねば最悪、生きて万歳]



「エリー」【エリーザ=アームストロング】

 身長・186㎝ 体重・je te tue? 髪色・プラチナゴールド 目・深緑色 


 エルドワーフの母親。エルフで自称・錬金術師。そしてエルドワーフが死ぬほど恐れるうっかりさん。どのくらいのうっかりかというと、エルドワーフの致命傷のほとんどは彼女の所為。そして転生後最初の直接の死因でもある。因みに教育方針が合理的を通り越して物騒なのは、エルドワーフの祖父の所為。

 相当な手練れでエルドワーフの肉体的そして魔法に於ける師であり、長い人生の中で多くの弟子が居る。特に戦闘能力が高く、ドワーフやオーガなんかよりもかなり腕っぷしが強そう。奇妙な仮面を持っており、これを装着することで更に強くなる模様。

 収入は有って無いようなもので全てが自給自足で事足りている。一応貯金はキチンとしているのか、旅の資金は全額エリーの自腹。

 家事全般は問題無い。多関節や軟体生物、実体を持たない生き物が苦手。夫婦関係に上下は無いつもりだが、エルドワーフを身籠っている間にバウロを折檻したことがある。


・才能・・・広域身体強化(ブートキャンプ)。自分を含む半径5m内の生き物の肉体を強くする。肉体改造も可能。

・肉体・・・鍛錬により無意識下でも常時才能を発動させているお陰で化物じみて強靭。

・魔法・・・風と土の魔法が得意と言うが、基礎的な魔法もかなりの高水準。

・頭脳・・・エルドワーフの知識の基を築いただけあって色んな知識を持っている。だからといって賢いとは限らない。しかも時代に追い付いていない事に後で気付いて、法律については触れていない。

・性格・・・朗らかに凶悪。死ななきゃ大丈夫と思っている。優しいけど易しくない。


・称号[拳の精霊] ・座右の銘[全賭汰難]



「バウロ」【バウロ=アームストロング<バーンウッド=ロードロー>】

 身長・145㎝ 体重・194㎏(平均値) 髪色・焦げ茶 目・燈色 


 エルドワーフの父親。ドワーフで自称・鍛冶師。炭焼き職人の家の跡取りだったが婿入りを機に趣味の冶金に没頭、元々斧や槌を振り回す方が得意で家業の方は趣味やエリーに頼まれた時用に作る程度。

 炎の精霊と交信出来る才能を持ち、その力で超高温を生み出せる。上限は無いそうだ。

 ドワーフなので酒が好き。自分で作ったりもする。基本的に趣味の鍛冶か酒の醸造で一日を過ごす。

 倉庫にある大量の蹉跌は鉄鉱石の代わりに魔法で山から運んできた物で、集め過ぎるわ、溶かしたら不純物だらけで炉が詰まるわ、で実家を追い出される原因になった。そして久方振りに帰ってくると、家はゴブリンに占拠されバウロの父親は亡くなっていた。

 身長がエルドワーフに追い抜かれそうなのが気掛かりだが、靴を脱ぐと同じ位であることに最近気付いた。

 婿入りしたからと言って遠慮はしないが、妻・義父双方から折檻を受けたことがある。


・才能・・・炎の精霊。荒ぶる炎を操る。温度が低いと拗ねる。

・肉体・・・ドワーフは生まれつき鋼の様な筋肉を持っている、一方でその筋肉によって血管が圧迫され血行障害を引き起こしやすい。なので竈の熱や酒を呑んで紛らわす。

・魔法・・・火と土の魔法が得意。専ら趣味の材料調達に用いている。

・頭脳・・・基本的な事と趣味の知識が大半。独身時代に鍛冶と冒険者を兼業していたのである程度の常識は身に付いている。

・性格・・・陽気でキレると何するかわからない一般的なドワーフ。酒を飲み干したら暴走する。


・称号[炎の精霊] ・座右の銘[大きく成れ]



「シルバー」【水銀有核液種(スライム)

 体高・25~550㎝ 体重・2㎏~4.2t 体表・銀色


 ペットの魔獣。元は野生だったがエリーに餌付けられた。雑食性、無機物・有機物・魔力物を問わない。食べた分だけ大きくなる。そしてある程度の大きさまで成長すると分裂するが、その行方はエリー以外誰も知らない。

 話すことは出来ないが意思の疎通が可能で、近くに居れば念じるだけで呼び出せる。意思表示は肉体言語(ボディランゲージ)

 水銀スライムは鉱石や石ころに成分として含まれる金属を取り込み水銀アマルガムとして排出し、躾ければ成分ごとに塊で吐き出せる。しかもただの水銀と違って生物なので、蒸発させなくても取り出す事が可能で、鉱物関係者垂涎の伝説的な生き物。

 魔力を与えると量や質、諸々の要素によって膨張・成長し、吸収させた者を記憶して追跡するようになる。これを利用して冒険者や商人が身分保証に使っているギルドカードのシリンジ部分に封入し、万が一の時の発信機や追跡装置にされる。冒険者カードの場合は膨張する性質を利用して、シリンジの目盛から簡易的な魔力量の物差しにも利用される。


・才能・・・魔獣とは魔法が使えて才能も発現し得る怪獣の総称だが、シルバーに固有の才能は無い。

・肉体・・・体液の主成分が水銀に似て非なる物質で、消化液に近い性質だがちゃんと水銀も含まれている。核の大きさは全体の5分の2。

・魔法・・・意思疎通(テレパシー)の魔法を使う。固有才能ではない。

・頭脳・・・主従関係はエリー>エルドワーフ>=バウロの通りに覚えている。

・性格・・・エリーに忠実。ペットだから。


・称号[便利屋(シッター)] ・座右の銘[主に逆らわない]

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