TCG部を作ろう!
立木高校は文武両道の対外的には進学校と属される高校として有名だが、その実は自由な校風を基にして純粋に生徒の質が良いので卒業生の二、三割が名門大学に進学しているという素晴らしい実績を持ち続ける高校である。
そんな立木高校に入学する理由など一つに決まっていて、勿論この俺、加堂 遊も部活動の自由さに憧れて入学を決めたのだ。
そんな俺がどうして紙遊戯戦略同好会などと言う奇々怪々な名前の部活に所属したのかと言うと…、
「ねえ、入ってよTCG部」
この目の前にいる幼馴染みで腐れ縁の冨山 蘭に勧誘されたからだ。
蘭と初めて出会ったのは小学校一年生の集団登校である。クラスも同じで住まいも近い同学年の存在、そりゃあ仲良くなる事もあるだろう。しかし、蘭と仲良くなるキッカケは、小学校一年生の頃に流行ったとあるカードゲームにあった。蘭はものの見事にそのカードゲームに大ハマりしたのである。しかし、悲しいことに何故か蘭と俺のクラスではあまり人気が無かったようで、古参大手の某モンスターものや某決闘ものだけが話題になっていた。そこで蘭が取った方法が、自分と同じ人間を増やすことであった。
要するに、蘭は仲の良かった俺を同じ沼にハマらせたのである。しかも強制的にハマる様に仕向けたのだ。自分のお小遣いで買ったスターターデッキを誕生日にプレゼントして与え、更に週一で開催されるカードショップの小さい大会に有無も言わさず強制参加させたのである。
結果、見事沼に沈んだ俺は、仲良くなるキッカケとなったカードゲームが下火となりいつの間にか消えてしまった後も、自信のハマったコンテンツを布教してくる蘭の熱意に折れる日々を過ごし続ける事になっていた。
だが、高校デビューした今、果たしてそれで良いのか?否、一人立ちをするべきだろう。蘭も俺も、自分のやりたい事を同じ仲間と一緒に広げるべきなのだ。
「ねえ、入ってよー」
ボール遊びをねだる子犬のような表情で先程から真っ直ぐにこちらの顔を見て語りかけてくる蘭に優しく声をかける。
「嫌だよ」
「どうして?」
「こんな色々部活あるのにどうして謎の部活に束縛されなきゃ行けないんだ」
「良いじゃーん、無いんだもん。無いなら作ろうよー」
拒絶され、うるうると涙腺を自由に緩める蘭、これである。この顔を断りきれずに話を聞いてしまっているのである。
しかし耐えて、拒否を続ける。
「作る必要ないだろ、人数足りるかわからない部活なんて」
「同好会って選択もあるよ?」
「同好会も四人だろ、条件。いるのかよ?」
「作れば増えるよォ」
「しかも、よりにもよってカードゲームだろ。持ち込み禁止じゃないのか?」
「部活動なら大丈夫!きっと」
とても自信に満ち溢れた表情で親指をピンと伸ばす蘭。確かに部活動に必要なら持ち込みの制限は緩くなるかもしれない。しかし、それは学生が持っても大丈夫だと確信できる物に限られるはずだ。
その点、コイツが作りたいのはトレーディングカードゲームの部活である。つまり、必要な道具は買い切りのグッズではなく課金し続けるグッズなのである。それを学生に持たせて登下校させる等、マトモな学校なら絶対に認めないのは明白であった。
「というか、どこから来るんだその自信は?」
「ふ、ふ、ふ、なんとこの学校にはボードゲーム部があるのです」
「だから?」
「つまり、遊戯を持ってくる事は可能なのです!」
バカがいた。自信満々の笑顔で胸を張るバカが目の前にいた。だから、ボードゲームは買い切りだから許されるだろうが、カードゲームは買い切りじゃないから許されるわけないのだ。というか、そんなにカードゲームを誰かとしたいのなら、部活なんて作らずに一緒に遊べば満足じゃないのだろうか?
「さっきから弱いんだよなあ、作る理由がさ」
「作る理由?」
「作れると思う理由は聞いた。だがそれは部活、今回の場合は同好会だろうが、作ってどうなるって納得のいく理由が無いんだよ」
「いるかなあ?」
「建前でも良いから必要なんだよ、じゃないと部活成立なんて無理だぜ」
それを聞くと蘭は、しょぼしょぼと肩をすくませ自分の席へと戻っていった。
どうやら、何も無かったようである。
きっと、諦める事だろう。そう思っていたのだが、翌日、俺はそんな自分の考えを改める事になる。
「作るよ、トレーディングカードゲームの同好会!」
そう、これが冨山 蘭の凄さである。
たった一日で作成してきたのだ。トレーディングカードゲームの同好会を作れるちゃんとした理由を。用意してきたのだ、納得のいくレポートの束を。
コイツはそういう女なのである。




