プロローグ
TCG、俗にトレーディングカードゲームと呼ばれるそのゲームは、世界に誕生して以降ルールや姿形を変えながら一つのジャンルとして大きく発展していった。
買い切り型のゲームとは違い、集めたカード達で組み立てたデッキを使った様々な戦略で相手と一対一の戦いを楽しむ遊びは、全世界の子供達を中心に盛り上がり今では全世界どこでも年齢性別関係無く大きな大会が開催されるまでに盛り上がっている。
そして、中にはカードゲームをメインとした漫画やアニメ作品も存在し、その大抵がメインのカードゲームを異常な程に世界の中心として扱う販促コンテンツ以上に壮大な物語となっている。
そんな作品達を子供ながらに面白いと感じていた俺は、この世界が本当にカードゲーム中心の世界だったらと言う妄想で幼馴染みとよく盛り上がったものだ。
それがカレコレ十年前、小学校二年生の事である。しかし、カードゲームで栄華を放つのは一瞬でもその栄光を長く続けて伝統にするのは難しいもので、子供の頃好きだったT C Gもいつの間にか鳴りを潜め、下火になったままその姿を消してしまったのだった。
そうして俺は、現実を見続けながら中学生活の三年間を気楽に過ごし続け、この立木高校へと進学したのである。
立木高校の三階にある教室の一つに、正式名称を戦略型紙遊戯研究同好会とする俗称T C G部の部室は存在する。
「純真な乙女ルルルでメインにアタック」
部室からは笑顔はつらつとした女子生徒が友達か部活動仲間だろうか、対戦相手に向かって元気いっぱいに声を出しながらカードゲームする声が聞こえてくる。きっと何も知らない人なら友達と仲良く放課後の遊びをしている様な印象を承ける事だろう。そんな事だろう!
いや、声を聞く限りはそれで合っているのだ。ただ目の前にいる人間として言わせて貰うと、その説明だけでは今の状況に不十分なのである。サウンドオンリーの印象とカメラ付きの視聴体験とじゃ全然違うのである。
実態はこうだ、人を笑顔で狩るピエロみたいなトラウマを植え付ける程に怖い笑顔を向ける女が、行為が終わるのをただ待つかのように震えるエモノのようにか弱くいたいけな少年を補食しているだけである。
明らかに、楽しいピクニックとかそういうのではない。これを実際に目の当たりにした生徒ならきっとこう証言することだろう。
「あれは部活というよりも、カードゲーム界の虎の穴に迷い込んだ感じですね」
「じゃあ、シールドで」
「クロスマウスでシールド破壊、ルルルでアタック」
「はい、ライフで受けます。残り体力はニつです」
「ターンエンド」
いたいけな男子生徒の言葉を一蹴しながら女子生徒は自分のターンを粛々と終わらせる。
男子生徒はただ、震えながら自分のターンを始めることしか出来ない。
「じゃ、じゃあこっちのターンドロー」
今ここで一つだけ言えることがあるとすれば、自分の人生に何かしらの覚悟を持って勝負してくる人間を相手にした時、そこまでの覚悟や確固たる信念すら持たない人間など万に一つの勝ち目も無いというのは明確なわけで、じゃあ今の俺は無駄な抵抗をしている事になるのだろうかという疑問に行き着くのであるが、いや、無駄な抵抗などこの世に存在しない、無意味な抵抗があるだけだ。これは無意味な抵抗なのだ。あ、終末の時間がやってきた。何もする事が出来ずに、男は声を震わせながら自分のターンを終わらせる。
「ターンエンド」
「じゃあ、私のターンドロー。テンテングにライズアップしてメインに攻撃!」
「負けました」
震えるいたいけな男子生徒、それを恍惚の表情で見つめ続ける女子生徒。
改めて言おう。これは、部活動である。
どうしてこうなったのか、時は二日前の始業式に遡る。
主にオリジナルのゲームをメインに話が進みます。他のTCGが名前のみ登場することはございますが、遊ぶことはありません。ご了承ください。




