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GatePair: Link〜【いいね】で始まる異世界マッチング〜  作者: 愛崎 朱憂
第一章:エルフ編

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45/67

ep.45[Side Y/異世界]Link: エルフ-16(後編)

 僕はそのまま宴の灯りから外れる。

 村の広場の喧騒が背中へ遠離って行く。

 少し離れるだけで、火の色は木々の隙間に千切れて、笑い声も葉擦れの音へ混ざってしまう。


 足を止めなかった。


 今止まったら、振り返ってしまう気がした。


 やがて、背後にもう一つ足音が増える。

 知っている足音だった。

 軽いのに、僕の心臓よりずっと確かだった。


 村の灯りが枝の向こうへ隠れる。

 広場の騒めきも、もう届かない。

 誰からも見えないところまで来て、漸くシルヴィが口を開いた。


「ユウキ……どこまで行くの?」


 僕は応えない。


「ユウキ、主役が居なくなったら皆、心配する」

「もう少しだけ」


 歩く度に胸元で文庫本の角が薄く当たる。

 『異邦の騎士(改訂完全版)』。

 そう言えば、結局一ページも読めなかった。


──この世界は楽し過ぎた。


 僕は振り返る。

 シルヴィが僕に向き合って止まる。


「……あ、直接してあげるって言──」

「シルヴィ」

「はい」


 森の夜は静かだ。


「あのね……」

「ユウキ……駄目……」


 森の夜は静かだ。


「駄目……聞きたくない」


 森の夜は静かだ。


「嫌……」

「僕、帰るよ」


 シルヴィの目が大きく見開いた。


「何、で……」

「決め──」

「何でっ!!」


 今まで聴いたシルヴィの声で一番大きな声だった。


「何で!!嫌だよ!折角、ヒュドラを封じて、やっとユウキと二人で居られると思ったのに……やっと、ユウキとずっと一緒に居られると思ってたのに!」

「……」

「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!」

「シルヴィ」

「嫌だ嫌だ、嫌だよ!止めて!」

「……シルヴィ」

「聞きたくない!聞きたくないよ!嫌だよ、嫌だ!一緒に居てよ」

「……」

「一緒に居るって言った……そうだ!あの日、ずっと居られると良いねって、ユウキ言ってた!」

「……」

「言ってた!私、覚えてるよ。こうやってブレスレットで──」


 チリン、と鳴る。


「一回は『うん』、二回は『ううん』……そうやって、ユウキと話した。私、覚えてる」


 チリン。


 頷いた僕の胸の鈴が鳴る。


「嘘吐くの……?」

「……」

「あの時、ずっと一緒に居たいって……嘘だったの?」


 チリンチリン。


 首を振った僕の鈴が二回、鳴る。


「嘘じゃん!嘘じゃん!ユウキは今、帰るって言った。嘘吐き!嘘吐き嘘吐き嘘吐き!!」


 僕は一歩、シルヴィに近付く。


 チリン。


 森の静けさの中で、鈴の音は大きく響く。


「嫌だ!来ないで!私に近寄らないで!!」


 また一歩近付く。


 チリン。


「こっちに来ないで!!……嫌だ!」


 チリン。


「ユウキ!!」


 チリン。


「ユウキ!!」


 僕はシルヴィの頭に優しく手を置く。

 シルヴィの柔らかい髪の毛。

 いつも、寝る時に触っていた髪の毛。


「私に触らないで!」


 シルヴィの声が震えている。


「ユウキ……」

「……」

「ユウキ……このままずっと……私に触れていて」

「……ごめん」


 シルヴィが大きく息を吸った。

 深く、震えながら息を吐く。

 その息が、胸に温かい。


「……何で?……何で帰るの?」

「……シルヴィと居ると、凄く幸せな気持ちになるんだ」


 シルヴィが、また大きく息を吸い込む。


「ずっと一緒に居たいなって、ほんとにそう思うよ」

「……」

「だけどね、僕は分かったんだ」

「……何?」

「きっと、シルヴィも同じ気持ちなんだろうなって」

「そうだよ、私、ユウキとずっと一緒に居たい」

「そう、知ってる。だけど、それが僕には出来ないんだ」

「……」

「僕は、どんなに頑張っても、あと百年も生きられない」

「……」

「シルヴィは、どれくらい生きるの?」

「数百万年」

「マジで?」


 シルヴィが鼻を啜る。


「……マジ」

「想定外の数字にビビるんだけど」

「……続けて」

「うん。だから……シルヴィの数百万年のうち、たった百年しか一緒に居てあげられない」

「良いよ。私、それで良い」

「駄目」

「ううん。それで良い──違う、それが良い。ユウキと一緒に居られるなら、百年だけでも良い」

「駄目」

「……何で?」

「そこから先、シルヴィは一人で生きることになるんだ」

「……」

「ずっと、一人だよ?」

「……ずっとユウキのこと、大好きで居る。それで私は幸せだよ」

「ううん。もう届かない想いは『呪い』になる」

「……」

「ずっと僕と居た──たった百年を想いながら……シルヴィが生きてるなんて、僕は耐えられないから」

「……」

「だって、たった二週間足らずの時間で──コレだぜ?」

「……幸せだった」

「ね、僕ってホラ……良い男だから」

「格好良い」

「何番目?」

「一番」

「良く出来た僕のシルヴィだ」

「えへへ」

「だから……ごめん」

「……」

「……」

「……どうしても?」

「どうしても」

「『私が』行かないでって言っても?」

「あ、コレ進研ゼミでやったとこだ」

「シンケンゼミ?」

「あははは」

「何よ、それ。シンケンゼミって何よ?」

「あははは」

「もう!ほんと信じられない!」

「ごめん。泣きながら別れるの、得意じゃないんだ」

「……」

「じゃあ、皆には無冠の遣王はこう言って旅立ったって伝えておいて」

「……何?」

「もし私の治める国があるなら、それは私自身でさがしたいのです」

「……どう言う意味?」

「ドラクエのエンディング」

「ドラクエ?」

「良いから。銅像とか建てたらその言葉を彫っておいて」

「……分かった。『もし私の治める国があるなら、それは私自身でさがしたいのです』」

「流石、シルヴィだ」

「『ユウキの』シルヴィだよ」

「うん、『僕の』シルヴィだ」


 その時、ルージュの声が聴こえた。


「おーーーい!ユウキ、どこだーーー!また、ピクルスの……ぶわははははっ!!」


 タイミングが、ある意味良かった。


──このままじゃ、いつまでもココに居たくなる。


「じゃあ……」


GatePair: Link


【ブロック】


[ブロックしますか?]

[この操作は取り消せません]

[リンクが遮断されます]


「行くよ」

「……うん」

「シルヴィ」

「ユウキ」

「ありがとう」

「私こそ……初恋がユウキで良かった」

「二回目の恋のハードル上げちゃったかな?」

「馬鹿」

「僕、それ好きだよ」

「……馬鹿」

「じゃあね」


 チリン。


「ユウキ」

「ん?」

「一番大好きだよ」


 チリン。


【ブロック】


[リンク遮断中…]

[GatePair: Link]

[接続が解除されました]

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