338.5 ①
交渉を待つ黄昏時の神様は………。
黄昏時の神の件を片付けて、
いよいよ隆延の件だ。
…とその前に、
残った方の黄昏時には高天原へと向かってもらった。
解呪を待つ小さな神に解呪を待ってもらう交渉と、
ついでに神々への報告をするため。
別に報告はしなくても勝手に見ているだろうが、
まぁほんのついでだ。本題は交渉の方。
待って貰えれば最悪消滅は免れる…かもしれない。
隆延本人の意思を聞く事も不可能ではない。
…その意思が通るかどうかは別として。
もし待って貰えなければ、
怨霊化する直前の状態のままで高天原へと送るのだ。
穢れのモノにとって高天原の清浄な“気”は毒も同然。
苦痛のまま御前へと招かれ、
苦痛のままに裁かれる。
裁量は神々の意思次第ではあるが、
人の魂である以上そう長くは持つまい。
運が良ければ綺麗なままで消える事もあるだろうが、
隆延の場合は怨霊化以前に“呪った者”だ。
家族を、子孫すらも呪った者。
簡単に消えることすら許されないかもしれない。
そんな隆延の処遇については気にしなくていいのだが、
交渉が成功か失敗かによって変わるのは我々の対応。
そして結希の対応も変わってくる。
成功すればある程度鎮める必要があり、
対話可能な段階まで落ち着かせて
失敗なら速やかに朝倉の呪いを解かせて隆延を高天原へ。
私がその判断を水神から変わることで、
情による減罪を防ぎ公平性を期す事が出来る。
その後に結希を呼びつけなければならない、と。
それを待つ間は、
暴れないように落ち着かせておかねばならないのだ。
それは宮司に任せるとして、
私が今やるべき事と言えば想定外の事象に対応する事。
なぜだか森からやってきた隆延。
池の中にも…確かに反応はある。
あるのだが、意思を持って歩み進めてきているのはあちらの方。
あれだって紛れもなく隆延なんだろう。
だからこそ、ちょっとどうするべきか迷っているのだ。
森から来たのは恐らく、残留思念的なもの。
と言うより封印が解けかけている段階ではみ出たものだろう。
そちらは放っておいていいのか、何かするべきなのか…。
なにせ私も、初めての事なのだから…。
この残留思念体が、
封印の解けかけを示唆していたんだろう。
明徳や奏多の命に関わり、結希の前に遺影として現れた。
無関係ではない事を考えても、
どうしたものかと思ってしまうのだ。
とりあえず、話してみるべきか…?
〔お前は、還るべき場所に還りたいか?〕
…思念体だろうから、池の中の本体へと還るべき。
そう思った。
当然返事などは無く、ひたすらに黙ったまま…。
その代わり、黄昏時の神の様子は見ることが出来た。
水神ほど阿呆と言うわけではないが、
あまり上手い話の切り出し方が出来てない。
はっきりとは聞こえないが、
どうやら怒らせてしまったようだ…。
雲行きが怪しくなってきたな…。
〔還るべき場所へ、還れると思うか?〕
怨霊化した事・呪った事を含めて、
そもそも還る事を許されるだろうか…。
ある意味、これも罰の1つなのではないか…。
ほんの少しだけ、そう思ったのだ。
残念ながら、隆延とは言いつつ顔も姿は見えない。
ただの黒い影に過ぎないのだが、隆延だと言う事は確実だ。
そんな黒い影には当然表情なんてものも無いので、
返事と同様に反応もわからない。
そして見えた黄昏時の神の交渉は、
ほぼ完全に決裂したように見える。
小さな神達は、揃いも揃って背を向けてしまったのだ。
丁寧に聞く、と言う事をしていない。
そう、感じてしまった…。
そんな結果を見て私が導き出した答え。
それは…。




