334.5 ①
記憶を覗く事になってしまった瑞樹様は………。
結希が…無事に、戻ってきた…。
ホッとしたのも束の間に、あいつも一緒に戻ってきた。
迎えに行ったのだから当然と言えば当然だ。
だが…これは本人には絶対に言えないが、
あんまり信用していなかったし、今もそう思ってる。
遣いとしてここに来て、
私に『お嬢さんをお願い』と言ってモヤへと消えた。
語りかけるといいながら…消えたのだ。
私も結局、結希を引き上げる事が出来なかった。
だがその理由は、
結希が想定以上に深く引き込まれていたからだろう。
そのため私の手が届かなかったというだけ。
あいつが消えたのも、深くまで迎えに行っただけ。
だから別に嘘を言ったとは思ってない。
そう…。思ってはいない…。
だが万が一という事もある。
分霊の儀で分かれた同じ神だから、
我々を呪った黄昏時に共鳴してしまうんではないか…。
そう疑ってしまうのは仕方がないだろう。
いくら私が目覚めさせたとはいえ、な…。
そんな私の感情は、一先ず置いておくとしよう。
あいつ自身は何も悪くはないんだから。
さて、帰ってきた結希が手にしているのは、
ただの煤だ。依代である器だった筈の、煤。
という事は、2人は、もう既に…。
そう思った時、黄昏時の神が私の元へとやって来た。
彼が言うには、
何やら結希に伝えたかった事があったらしいという事。
詳しく話さない内に結希の元へと行ってしまい、
あまりよくわからなかった…。
ただ1つわかるのは、権限の譲渡は完了したという事。
奏多に引っ付けていたあの子と共に、
己の意思で進むべき道を…往くべき道を見つけたのだ。
権限を譲渡された側である彼には、
一刻も早く交渉しに行って貰いたい。
欠片の神と呼ばれていた子達が、
解放の時を今か今かと待っている筈だから。
まだ待たせる事を、許して貰わねばならんのだ…。
が!
あいつは結希との話が途中だのなんだのと言って、
1人で舞い上がっているようだ。
何か気になる事でもあるんだろうか?
だがあまりグズグズしているわけにもいかない。
いい加減止めようかと思った矢先、
こちらへ向かってくる姿が見えたのだ。
……結希の腕を引っ掴んだままで。
勢いそのままに私に訴えかけてくる。
“地下での儀式”“黒い奉納品”“自分は記憶に無い事”。
それらの事を知るために、記憶を覗いて欲しいらしい。
彼には使うことが許されていない術だからこそ、
私に頼みに来たんだろう。
仕方がないので条件を取り付けた上で、引き受けた。
私が見た内容を聞いたら、
理解出来ようが出来まいがやるべき事をやれ…と。
彼も受け入れたので、奏多と話す結希の元へ行く。
……正直、私もかなり気になるのだ。
過去で結希と共に訪れた祭壇の、あの地下なんだろう。
分霊の最終段階で間違いないとは思うが、
素人の儀式らしいから何とも言えない。
それに地下地上関係なく、奉納品は普通の筈だし…。
その辺も含めて、見ればいいか…。
〖兄上ならば余程の事でもない限り失敗などされないし、
そなたの安全を最優先で考えてくださる。〗
最初に結希へと説明しているのは黄昏時の神。
その不足分を珍しく饒舌に説明をする水神が言った、
あまりにも失礼な言葉。
そんな事は説明するまでもなく、
当然に決まっているだろう!
これ以上ふざけた事を抜かしたら、蹴り飛ばしてやる!
そう思いながら、私は結希へと手を伸ばすのだ。
……では、速やかに始めよう。
結希が闇の中に引きずり込まれた所から、な…。
1つずつ、追っていく。…見落とさないように。
少しずつ、力を使う。…結希に影響を出さないように。
そして見えてくる景色、
結希の見た記憶を…探っていく。




