332.結希が見たモノ
私視点では、反対の手に分霊体の器を持ってた。
私の視点という事は黄昏時の神様本体の視点だろうし、
2つの器を持って行ってる筈なのに…。
〔分霊体の依代となる予定の器を持っていたのはて…、
辛うじて、見えた。だがその後の意識が無いのだ…。〕
やっぱり、叩きつけられて気を失いそうだったんだ…。
私が地面に叩きつけられた時に意識を失ったのと同じタイミング。
私の場合はその時に割れたんだと思ってたけどね。
男が器を持ってるのを覚えているなら、
そこまでは意識があった。
その後に、記憶がない=意識を失ったって事だろう。
それなら入ってないとは言い切れなさそうだ。
でも私の視点は何?何視点?器視点?
…器視点って何それ。
って言うか……、
『知らんがな!!!』もうこれに尽きる。
記憶がない意識がないとは言うけど、
私が見た事との相違とかあるらしいけど、
結局わからない事はわからないとしか言えないし、
わからない事はどうしようもない。
それに私が考える必要はないみたいに言いながら、
私に視線を送ってくるのだ。しかも無言で。
意見を聞きたいってか?それともまだ何か言えと?
どうしよう…。イライラが、止まらない。
「記憶がない事を突き詰めて、何になるの?」
〔……?どういう意味だ。〕
「記憶があるのに思い出せないんじゃなくて、
記憶がそもそもないなら考えても仕方ないでしょ?
それとも、術か何かで記憶を持ってくるとか?」
半分嫌みの半分事実…。
繰り返すようだけどどうしようもない事なのに、
目の前でうんうん唸られても困ってしまう。
何かそこに手がかりがありそうならわかるけど、
それ自体が不明となると話は別。
ちょっと、無駄かも…としか思えない。
でもこれは、神様が悪いんじゃない。
私が余計な事を馬鹿正直に話したのが原因だ。
面倒だと思ったのは間違いじゃなかった。
謎視点も黒い奉納品も、
“呪いのモヤ”と同じく私にしか見えないモノでいい。
あれは結局呪われた血筋の証だったってだけだし、
今回のやつもきっとそう。
……うん。私が悪かった!!
そう気持ちを落ち着かせた私が謝ろうと口を開いた瞬間だった。
〔術…記憶………それだ!!!!!〕
「どれだ!!」
突然の大声に驚いて、つい…反射的に……。
まぁ、それはいいや。
何か妙案を思い付いたような表情で私を見ている。
この神様もなかなかの美丈夫で、
真正面から見つめ返すには勇気が必要……違う違う。
な、何で私を見るの?
〔君の記憶を見ればいいじゃないか!記憶を覗くんだ!
……あ、いやだが私は“遣い”だから使えないな。
そうなると誰かに頼まないといけないが、誰がいい?〕
自己完結からの質問。…待ってよ。
記憶を覗く術で、私の記憶を見るって事?
神様は神様でも“遣い”の立場なら使えない術?
前にこの術を使ってたのは…瑞樹様だ。
水神様の過去を見た上で、喋らせていた時のやつ。
それを、私に使うの?断る選択肢は無し?
「…誰かって言われれば、……瑞樹様?」
〔では行こう。〕
何で答えたの私…。
その方がスムーズだと思ったからに決まってるでしょ。
自問自答で何言ってんだろう。
でも実際いろいろ聞くよりも、流れに乗った方がいい。
そんな思いで、手を引かれるままに歩き出した。
もう余計な事は言うまい………。




