331.面倒事の正体
大した事じゃないとでも言うような様子でそう言った。
……………は?
「そんな事って何?そんな事って。」
私にとっては話よりも重要事項だと言うのに、
何なんだその言いぐさは!
…と思いつつ、それが声に出ないよう注意して尋ねた。
相手にとっては話の方が重要事項なんだという事はわかるけど、
そこまで聞きたい話なのかが理解できなかったから。
〔だってそれは害があるものじゃないし、
君にちゃんと話して貰うための条件として丁度良い。
後回しにされる事はあんまり好きじゃなくてね…。
話してくれさえすれば、回収するよ。〕
早く帰りたくて急かした事を根に持っているのか…。
確かに私が自分で『帰ってから…』と言った。
本当はあの時すぐに聞きたかった筈の事なのに、
私の言葉を優先して我慢してくれた。
後回しにしたつもりはなかったんだけど、
あれはどう考えても後回しにしてるよね…。
私も嫌いだったな…、後回しにされるの。
…仕方ない。
手が一時的に拘束されてたとしても口は動く。
害の有無については信用ならないけど、
私が話せば済む事だし解いて貰えるだろう。
最悪の最悪の最悪これのせいで死んだら………、
まぁその時はその時だ。
心の底から、神を恨めばいい。
「じゃあ何を聞きたいの?どこまで話したっけ?」
〔君が私の過去を見た中で出てきたらしい、
地下についての話を聞かせてくれ。黒い奉納品も。〕
…そうだった。
黄昏時の神様の記憶の筈なのに、
本人には覚えがなくて私だけに見えたらしいやつだ。
面倒事の気配がしたから話を終らせたんだっけ…。
でも、“話す事は無い”ってのが正直な気持ちだ。
そんなに長い間見たわけじゃないし、
角度的に影だったから黒く見えたのかもしれない。
「詳しい事はわからないし知らないけど…いい?」
〔勿論だ。そんな事まで期待はしていない。
見た事だけを、話してくれればいいんだ。〕
「…………はーい。」
嫌みのような物言いは何とか受け流し、
私は言われた通りに見た事を語り始めた。
しばらく後─────。
それほど多くはない話をし終えると、
黄昏時の神様はじっと考え込んでしまう。
前も何かが気になるような様子だったけど、
そんなに変な事なんだろうか?
……そもそも怪しい儀式自体が変な事…か。
〔私には、君が見たような事は無かったんだ…。〕
「…だってあれ、黄昏時の神様の記憶なんでしょ?」
私が触れた事で私の記憶を見た…とかなんとか言ってたよね?
視点も黄昏時の神様視点だし、分霊体の器も見た。
それなのに、私が見たような事は無かったって何なの?
〔確かに…地面へと叩きつけられた後、
男が来たのは覚えている。〕
「うん、まぁそうだね。」
(お前の記憶だからな。)
〔だが、地下に入った記憶など無い。
私は地下に、入っていないんだ…。〕
それは1番最初に聞いた気がする。
だから面倒事の始まりだと思ったんだから。
自分の過去だと言う記憶が無いだなんて意味不明だ。
もしかして、叩きつけられた時に記憶が混濁した?
……………んん?
「私はって、何?」




