表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
392/406

328.5

曖昧な存在であった、神様は………。



己の怒りが何なのか、ずっとわからなくなっていた。


誰かに馬鹿にされた事?

何か危害を加えられた事?

自分の存在を無視された事?


そもそもそんな事があったのかすらわからない。

自分が何なのか、何に怒っているのか、誰を呪ったのか…。

全部全部、わからなかったのだ。



今まで曖昧な存在として、流されるように過ごしてた。


生まれた時、側にあったのは悪意だけ。

愛すべき存在だったであろう人間の…悪意。

それを浴びて生まれ、それでも曖昧な己自身…。

後から気付いたのは、元の存在が曖昧だから仕方なかったらしい。

そんな事は何も知らず、

悪意を寝床に…悪意の根源を写し身にしていた。


衝動のままに怒りを爆発させた時も意識自体は曖昧で、

腹立たしくて憎たらしくて堪らなかった。

招かれたわけでもないのに苦しい場所に居てしまい、

光の弱い部屋だけが…息つける唯一の場所だったのに、

そこを侮辱された…気がしたのだ。

……だけど神々の御前へ連れられた時は、

特に苦しさを感じずに過ごせた気がする。


怒りを爆発させたまま、それは恨みに繋がった。

どこかでそれ程の事でもないだろうという気はしつつ、

かつての女の気分を少しだけ理解できた気がしたのだ。

沸き上がる怒りを他者へとぶつけ、

そのまま取り殺す程の…凄まじい感情を。

恋慕う想いが憎悪へと変わる、その感覚を。


だから…意思の無い己に沸き上がるものを見つめ、

そのまま身を任せた結果は誰もが知る通り。

神を…人を…全てを呪うモノになってしまった。

こんな結果は、望んでいなかった……筈なのに…。


別に人を巻き込むつもりも、巻き込んでる自覚も無い。

ただ、怒りに身を任せただけ。

今更ながら、無責任な行動だったと恥じている。

だが過去は消し去れない。

罪は、消えないのだ。


かの地の池で見た己のかつての依代が、

それをありありと物語っていた…。



分かたれた善の心の存在が、己の意思を教えてくれた。

本当はこんな事がやりたいわけじゃなかった…と。

曖昧でも存在している時点で、

己は神だと認識せねばならなかったのだ。

悪意は、学ぶ事ではあるが真似するものではなかった。

たとえ神を恨もうとも、

人を巻き込んではいけなかったんだ…と。


それを全て理解できたのは、

元の存在がしっかりと意思を持った瞬間だった。



ずっと眠っていたのを何者かに起こされ、

言葉を交わしたであろう頃に…何となく感じた違和感。

だがその時は気のせいだと思っていた。

だから今まで通り、感情の赴くまま…。


時は流れ、あの日…欠片から引き剥がされた。

そして再びかの地へ送られた時、気付いた事実。

共に欠片へと入り込んでいた者の正体。

まさかそれが、己の元の存在だとは思うまい…。


その者が偽りの姿を脱ぎ捨て、

本来の姿で“遣いの役割”を頂いた瞬間、

元の存在が真に目覚めの時を迎えたのだ。


恩を知り、神の認識を確立させ、意思を…持った…。

己が…私が…この身を拘束されている時の事だった。








消えぬ罪を背負ったとは言え、

償う機会が無いわけではないと…遠くの部屋から聞こえてきた。

呪いを解くための私の行動が、償いへの第1歩になる…と。

そして、決意した。



1番割りを食ったであろうあの子に…謝らなければ。

そして“私”の意思で、善の導く先へ往こう。

たとえ終わりの無い永久の道だとしても…。


もしいつか赦されるなら…今度こそ、間違えない。

その先でいつの日か…胸を張れる、神で在りたい。



私は最後の思いを伝えるため、

“希望の子”を…闇へと(いざな)った…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ