328.光の中で
ちょっと面倒な気配がする。
私には見えて、神様には見えない…とか嫌すぎる。
今更気のせいかもと言うわけにもいかないし…。
もしかしたら、これが“伝えたい事”なのかもしれない。
…と言っても、意味は全くわからない。
そもそも本当に“伝えたい事”なのかもわからないし、
何で私が察してあげないといけないの?
口が無いわけじゃあるまいし、
言いたい事があるならハッキリ言えよ!!
〔そ…それは、そう…だな…。〕
「…………うん。」
黄昏時の神様の反応で、無意識のお喋りを察した。
でも元々これに関しては気にしてない。
嘘偽りの無い心からの本音だし、
私の口に戸は立てられない…ってね。物理的に。
そんな事はいい。
“伝えたい事”かどうかもどうだっていい。
男や神様の反応からして、
黒い奉納品は異常な物なのはわかってるのだ。
それを敢えて言う必要が無かった私のミスを何とかせねば。
「あんまり良い事じゃないって理解だけしてればいよね?
あんまり知りすぎるのもよくないよね?
それに意外と、“伝えたい事”なんて無いのかもよ?
これだけ待って何もないんだからさ。」
無理矢理感はあるけどゴリ押ししたい。
屁理屈…ではない筈だろうし、
何でもいいから取り敢えず私は帰りたいのだ。
伝わるかな…?
〔それは、そうなんだがな…。〕
いい感じの反応だし、上手く行きそうだ。
このまま押し通して、さっさと帰ろう。
その後は神様の采配で何かするんだと思うから、
そこはもうおまかせだ。知らなくていい事は聞くまい。
「じゃあ帰ろう!今すぐ帰ろう!ね?ね?」
〔いやだがな…、黒い奉納品が気になるんだ…。〕
「帰ってからではダメなの?」
〔……まぁ、それでも問題無い。
本当に、伝えたい事は無いのか?〕
誰かに…ってのはわかりきってるか…。
黄昏時の神様が、黄昏時の神様に聞いているんだ。
最終確認をしているようにも見える。
……まるで、本当に最後だと言わんばかり様子で。
少しの間返事待ちをしていたけど、
やっぱり反応は何もなかった。
〔もう、仕方ないな…。
あまりここに居すぎるのも良くないと言ったし、
もうそろそろ時間的に危険域が近づいてる。〕
そう言いながら私の両手を取り、しっかりと握りしめた。
離れないように…なんだと思うけど、
何か…幼児扱いみたいな気がしないこともない。
『帰れるならなんでもいい』
そう無理矢理納得をして、その時を待つ。
そもそも私がここに居るのは想定外らしいし、
善悪で分かれてしまった神様は統合されたんだろうか?
そっちが元々の目的だったわけだし…。
黄昏時の神様が何かを進めている。
声の無い、口元だけが動く呪文らしきもの…?
呪文かどうかもわからないけど、それが漸く終わった。
それと同時に私達は光に包まれ始めたのだ。
足元から溢れた光が視界を遮った時…。
──ごめん…なさい…。
赦されるなら、またいつの日か…。──
馴染みの無い声がした…。
そして目を閉じる瞬間に、
2人の姿が見えた気がしたんだ…。
手を振っている。私には、そう見えた…。
意識が途切れる直前、
2人揃って…背を向けて歩き出す姿が見える。
去り行く2人を見つめながら、
私の意識も…途切れていく……。
ふと気が付くと、元の場所に立っている。
神様や叔父達の姿も見えて、ちゃんと帰ってきたと実感した。
手の中の器は、もう震えていない。
結局目的も伝えたい事もわからなかったけど、
少なくとも、ちゃんと償うという事を伝えてくれたのかな。
私は、きっとそうだと信じたい…。
……よくよく考えると、ごめんじゃ済まないけどね。
それにもう謝って貰って…あぁ。あっちは善性の子か。
やっと帰ってきたんだから、やるべき事を済ませたい。
ハイにでもなったのか、元気が出てきた。
結界が解け次第、義伯父と話さないといけない。
鎮めるべき隆延の場所もだけど、
朝倉の呪いを解いてもらう的な話もあった筈。
さて、まずはこの器をどうするべきかな…?




