327.過去を見て思う事
ずっと信者だと思っていたのに、違った…。
何で信者じゃないのに、こんな儀式…。
信者じゃ、ないから…こそ…?
〔信者達の集落の者であることは確かなんだが、
どうも信仰心は殆ど持ち合わせていないようでな。 まぁそれに関しては人それぞれだから文句は無いんだ。
だがこんな事態になるとわかっていたら…、
分霊など許さなかったのにな…。〕
たらればを言ってもしょうがないのは、
きっと本人もわかっているんだろう。
何処か遠くを見つめる瞳には、諦念の色が滲んでいた。
黄昏時の神様の記憶を見て、知れたのは5つ。
割れたと思っていた器は壊れておらず、ずっと見ていた事。
私達を呪いに巻き込んだ黄昏時の神様という存在は、
目の前の神様の分霊体だという事。
信者ではない3人が分霊の儀式に立ち会い、
それぞれがそれぞれの悪意を持っていた事。
それを気に入った分霊体である黄昏時の神様が、
主に男、サブで男の子の姿を真似た事。
悪意を持つ者を気に入る事は、神様達的に良くない事…と。
なんで2人分の姿かは…まぁ想像がつく。
別に2人分の真似をしたつもりは無いんだろう。
偶々2人は兄弟で顔も似ていた。
男の子が成長したらきっと男のようになるだろうし、
男が小さい頃は男の子のようだっただろう。
だから2人だけど1人分のようなものだから、
女性だけを真似してないように見えただけ。
まだよくわからない事もあるけど、
過去の事を事細かに知れるわけもない。
記憶を見せて貰ったとは言え、あれが全てでもない。
でも元々気になってた事は知れたし、
あまり知りすぎても困るのは私だ。
この辺でやめておこう。
しかしいつになったら帰れるんだろうか?
結構歩いてる筈なんだけどな…。
「これ、どこまで続くの?」
〔あ、あぁ……。
んー…本当はな、もう帰れるんだ。〕
「は?」
言いづらそうに、黄昏時の神様はそう言った。
じゃあさっさと帰してよ!…と言いたかったけど、
まだ話が終わってなさそうなので黙って聞く事にする。
〔黄昏時の神が君に伝えたい事は何なのか、
何か語りかけてくる事があるんじゃないか…。
そう思って、暫く歩き回ってもらったんだ。
だが特に何も無かった。
私が来る前に過去の記憶を見せられていたようだが、
それ以外には…何も。〕
確かに…。
器に団子状の神様を入れてからこうなったのに、
結局何もなかったって言うのは後味が悪い。
言いたい事があるならさっさとして欲しいんだけど…。
もしかしたら最初に見た景色は分霊前だから、
黄昏時の神様本体からの視点だった…とか?
伝えたい事が何なのかを考えている時、
ふと思い出した事があった。地下での事だ。
「……そう言えば、黒い奉納品を見たよ。」
〔黒い…?そんなものあったか?〕
「え、地下の祭壇に供えられてた神饌とか御神酒とか。
上の祭壇とお皿の数が一緒だったし、奉納品でしょ?」
そう。投げ捨てられる前に見た、小さな祭壇の奉納品。
知りすぎてもよくないとは思ったけど、
何か気になったのだ。
〔…私は見てないぞ。
地下に入った記憶など無い。〕
目の前の黄昏時の神様が見せた記憶で、
黄昏時の神様の視点で見たのに…何を言ってるんだろう。
「男が黄昏時の神様の器2つを両手で持ってたじゃん。
そのまま地下に入って、祭壇の前に…。
男は焦ってたみたいだけどさ…。」
〔………………違う。
そんなわけ…ないんだ……。〕
意味がわからないと言うように頭を振る黄昏時の神様。
意味がわからないのはこっちも同じなのだが、
どうも様子がおかしい。
酷く狼狽えたまま、その場で立ち止まってしまったのだ。




