何で僕だけ「突然大きくなる数とバックアタック」
そんな事を言っていた時が僕にもありました。早くも少々のピンチだった。
それもこれも師匠は森の中には入らずに入り口付近で待機すると言うのだ。
側で見守ってくれていて、危なくなったら手助けに入ってくれるのかな?そんな考えだったのだが、そんな安心感は持ち込めずに僕だけで森へと入る事に。
そしていきなり見つけたゴブリンは「30」という数だった。僕はこれに少々の驚きでガサリと草を揺らしてしまった。
危うくコレに見つかるかと思われたが、直ぐに木の陰に隠れたのが功を奏したのかゴブリンはこちらに寄っては来ていない。
(何でいきなり10も数が飛ぶんだよ!?・・・ああ、そうか。コレが異常繁殖イベントなのね)
僕の見込みが甘かったのだ。3体から始まって20体迄は一体ずつ増えて行った数。これに慣れてしまっていた。
ここでイベント補正が入って突如の「30」という数字になるのは別に驚く部分ではなかった。コレには参った。
(覚悟はまだ決めていないし、いつもの場所に罠を仕掛ける前に見つけちゃったよ。マジでどうする?!真正面からあの数を相手にするのか!?)
正直に言ってキツイ。だが今の僕のステータスならできない事も無い。しかしそれが問題だ。一つ間違えば、或いは小さな不運が起きれば、こちらの態勢を崩されてそのままゴブリンどもに滅多打ちを食らうだろう。
そうなれば僕は街へとリスポーン。きっとこのイベントは師匠が全て片付けると言う終わりになってしまう事だろう。それだけは避けたい。
(師匠から教わった事を思い出せ・・・罠を張っている時間は無い。だが、コレを長時間スルーするのもしちゃいけない。どうする?どうする!?)
どんな手を使ってでも敵を倒せ。
そうでなければお前が死ぬ。
使える手札は有れば有るだけこちらの取れる戦術の幅が増える。
なりふり構うな、生きていたければ。死んだら元も子もない。
恥も外聞も無くここは僕が駆け摺り回る場面だ。何としてでもここで生きてこのイベントを僕だけの力でクリアする。師匠の言葉が今やっと身に染みて分かった。
僕は今ここで取れる最善の手は何かと考える。考えながら移動し続けるゴブリンを追跡する。
(大丈夫だ・・・やれる。いや、やるんだ!)
この30体が終わりでは無いかもしれない。だから、高かったMP回復薬は温存するべきだろう。
減らすなら先ずはHP、こちらから減らした方が良いとここで判断した。
安価な回復量の低い体力回復ポーションは少し多めに購入してあった。コレをここまでに一度も使用してはいない。使うならば今この時、ここでである。
僕のレベルは「2」でこの少ない回復量でも体力が全快にできるのだ。後は大きなバッドステータスが付くような攻撃を受けない様に気をつけるだけ。
そしていつものようにやるのは「奇襲」と「誘導」で罠に嵌める事。
簡単な罠は追跡の間に3つ4つを仕掛けていた。ロープを張る罠だ。これに脚を取られて転べばそこに時間差が生まれるだろうゴブリンに。
こちらを只ただ知能の低いゴブリンが追いかけてくるだけなら今のこの拙い罠でも全滅はさせられる。バラけたゴブリンに1対1で斬り掛かれるような状況を作り出せれば。
でも、これに自分にダメージを受ける覚悟も必要だった。上手く捌けなくて囲まれる事も計算に入れてある。それでも多少のダメージで凌ぎ切れると判断している。別に楽観的に見ている訳では無い。
囲まれてもそれを以前に突破して囲いの外に出る事ができた経験からだ。成功体験、少しだけこの言葉に不安が浮かんでくるが、それこそ今の状況で失敗は許されないのだ。やってやるしかない。
「アイスニードル、アイスニードル、・・・しっ!」
ゴブリンたちの背後から静かに魔法を放って直ぐに弓を構える。バックアタックだ。
いつもの様に魔法は2発同時を2回。その後は矢を放つ。矢はギリギリ僕の腕とこの弓の威力で届く距離だ。狙いはするが、矢の方はゴブリンに怪我をさせるだけでいいと思って力を抜いて狙いを良く定めてから打つ。
余計な力が入っていると体が硬くなって充分に弦を引けなくなる。そしてソレは矢の威力も飛距離も出なくなってしまう事を師匠から教わっている。
運が良かった。撃った魔法は全てしっかりと急所を貫いた。土手っ腹、こめかみ、喉、鳩尾。4体が光となって消えていく。
矢は5本ほど連続で射たのだが、コレは魔法の様にとはいかなかったがどれも命中。脚、肩、腰、腕、手の甲などに当たり戦況はこちらの有利に傾いた。
「後はどうする?怪我をしたゴブリンを先ずは逃げられない様に始末した方が良いか?それとも僕が生き延びる為の戦法を取った方が良いのか?」
迷いは一瞬。すかさずまだ動揺を抑えられていないゴブリンの集団に突っ込んで行って怪我を負っているゴブリンを全て斬り倒す。矢が一体でも外れていたらこんな行動には出なかったように思う。勢いは大事だ。
こちらが即座に動いた事で動揺から抜け出せずにいた怪我をしたゴブリン。こちらの攻撃を避けられたりせずに始末を終える事ができた。これで合計9体を片付けられた。残りは21体。
「できない事は無い!だったらここから次にできる事は!」
仲間を次々に殺された所を見たゴブリンは激昂して僕に迫ってきている。
生き延びる事も大切だったが、ここで僕一人でゴブリンを殲滅できると言う証明もしたかった。
「ここで師匠に出てこられて堪るか!美味しい所だけ持って行かれたら僕がこれまで頑張って来た意味が無くなる!」
一体でも逃げられたら師匠に出張って来られてしまう可能性が否定できなかった。それは我慢ならない。
「来い!一体も逃さず僕が殲滅してやる!」




