何で僕だけ「持ち物検査」
現れた師匠は革の胸当て、手甲に脚甲、ヘッドギアを付けて腰には剣を佩いている。
「あの、もしかして師匠も一緒に森に行くと言う事でしょうか?」
「一度このままギルドに顏を出すぞい。それと、今のお前の準備している道具や武器を見せてみろ。」
僕の疑問に答えてはくれず、代わりに僕の持ち物検査になってしまった。
「盾はどうした?まだ買っておらんのか?弓、剣、ナイフ、ふむふむ。それと縄罠にシャベル。回復薬か。まあ良いじゃろ。ギルドに寄ったら其の後は武器屋に行くぞ。」
僕はこれに何がどうなっているのかさっぱりだった。だけどもこれに分かる事はと言うと、師匠が今回は参戦すると言う事だ。
絶対に何かが起きる。そう思うのだが、逆に何も起こらないと言う運営からの「トラップ」かもしれない。
(こうして師匠に一緒に参戦して貰う事になると称号やスキルが貰えないとかな)
失敗ルートと言うヤツだ。最悪の事を考えると。
こうして一緒に冒険者ギルドに到着して師匠だけが受付と話しをした。僕は外で待っていろと言われたので素直に待つ事3分。
出て来た師匠は「行くぞ」とだけ口にして今度は武器屋へと歩き始めた。その武器屋とは僕が贔屓にしている店であった。
「おうい、邪魔するぞい。」
「あ、老子!久しぶりですね!何を御入り用ですか?」
どうやら顔見知りらしい。しかも結構な。そこに続けて店番NPCは僕の事に気づいたらしく。
「あれれ?もしかして老子の弟子だったの?あちゃー。ならもっとオマケしてあげれば良かった。何で早く言ってくれないかなー?」
「マジかよ。師匠どれだけなんスカ?あーもう、それを知っていたら道具屋でもオマケして貰えた?」
店番NPCは僕のゲンナリした気分へと追い打ちをして来る。
「道具屋?あそこは老子に昔だいぶ世話になってるからかなりの値引きをしてくれてたかもね。」
これに僕は手で顔を覆う。早く知りたかった、その情報は。
「小さいモノで構わん。そこまで耐久値も無くて良い。腕に装着する形の盾を一つくれ。」
師匠は俺と店番の会話を無視してそう注文をする。それを受けて店番は「ちょっと待っててください」と言って奥へと消えていく。
そして戻って来た時にはスモールシールド、円形の物を持ってきた。
「これで良っすか?中古品ですけどまだまだ使えますよ。老子が使うので?」
「いや、こやつの腕に合わせてくれ。」
「へ?」
この時の僕は随分と間抜けな声を上げていた。師匠が俺に盾を付けろと言っているのだ。
「あの、金無いですよそこまで。ローン組める?ここ?」
「馬鹿者。ワシがお前に与えてやるんじゃ。死ぬんじゃないぞ?」
不穏な師匠のその言葉に僕は「はぁ?」と疑問の声を上げる。これに師匠は答えをくれた。
「どうやらゴブリンの異常繁殖の兆候が見られる。ワシも森に入ってお前と狩りをする。が、お前が無様な姿を見せたらの話じゃがな。」
どうやら先ず僕ができるだけ一人でゴブリンの討伐をしなければいけないらしい。
そこで限界、或いは危険だと言った判断を師匠がした時に初めて参戦してくれるようだ。
(ここで助っ人の力を借りてクエストクリアとかイベント終了になると・・・もしかして称号もスキルも得られない可能性が出て来るぞ?)
こうなると師匠がここで買ってくれる「盾」の使い方が問題になるんだろう。
師匠からの持ち物チェックはきっとこの「ゴブリン異常繫殖」をクリアするのに足りないモノがあればここで師匠が買い与えてくれるようになっていたのだと思われる。
盾では無く弓矢が無ければソレを。罠関連のアイテムが無ければソレを。回復系のアイテムが足りなければソレを。などなど。
もし持ち物検査で全てが合格ラインに達していればもしかしたらボーナスポイントが貰えていたかもしれないのだが。今更だ。
もう後戻りもできないし、最初からやり直しする事もできない。
(気合を入れなきゃな。ここで師匠からの合格が貰えるような戦いを見せられなきゃ、きっと貰えるモノが貰えない)
このゴブリンイベントをどうにか高評価でクリアでき無ければこれまで頑張って来た努力が無為に終わる。
それだけは勘弁だった。だからここで僕は気合を入れる。
「よっし!師匠が手出しをしなくても良いくらいにゴブリンどもを一人で全て食らい尽くしてやりますよ!」




