何で僕だけ「連続して受け続けると・・・」
コレが亀の歩みというモノだろうか?確実に前に進めている、そう思えても踏破した距離に全くの手応えを感じられない。
一歩一歩進められていると思うのだが、どうにも同じ事の繰り返しに飽きて来てしまっている自分が居る。
「これで二十体はクリアできた。心配していたけれど、特に問題が無かったのは只運が良かっただけ?」
あれから五日過ぎている。懸念していた数の暴力も難なく捌けている。師匠の言っていた「三十迄なら」の背中が見えてきたと言った所だ。
一度「ゴブリンマジシャン」が混じっていた事があり、その時には少々焦ったのだが、最初に弓でそいつを射殺したら残りは別段何も危ない場面に逢う事無く処理ができたのは大きかった。
「罠の作り方も上手くなったし、早くなった。仕掛けるのにも手早くできる様になってかなり成長している。数を設置するのに絶妙な位置に設置したりして上手く誘導で来てる。全く問題が無い。」
罠に誘い込むのを失敗して囲まれる事が二度ほどあったが、躊躇せずに一気に突撃して包囲の輪を抜けると言う挑戦をしたりしてどれも突破を成功をさせていた。
今のステータスでゴブリンへとこうして包囲の突破を図って成功できると言うのは自信に繋がった。確実に三十はクリアできると。
「あるとするなら・・・問題は僕のメンタルだな。」
ゴブリンの顔を毎日見るのは飽きてきた。しかし今の状況を一段落着いたと思える時までは変えられない。
その一段落がどの様な結果になって何が得られるのかと言った事も判明していないのだが。
それでも今はこのゴブリンの数が増加していくイベントに集中せねばならない。中途半端に終わらせるのが一番いけないだろう。
「それにしても進まない。ストーリーが進まない。進められない。」
これ程までに同じ場所で足踏みし続けたプレイヤーが居るだろうか?僕以外で、始まりの街で。
普通ならさっさとある程度のレベルが上がったら他の地域へと移動するか、もっと別の何かをしている事だろう。
「何で僕だけこんな事してるんだろうなあ。駄目だ。気が滅入って来た流石に。師匠の所にでも顔を出して気分転換でもした方が良いかな?」
この始まりの街で僕が相談を持ち掛けれるのは師匠しかいない。未だにプレイヤーで僕との接触を図ろうとして来る相手はいないし、そもそもプレイヤーたちは僕の事など全く知らないんじゃないだろうか?
「まあ流石に僕が「無職」とか知ったらどんな反応をしてくるかは大体察しがつくよね。」
僕は冒険者ギルドに帰還する間にそうぼやく。珍しがられて珍獣扱いだろう。もしくは馬鹿にする対象か、それとはまったく変わって観察され続けるか、検証実験に付き合わされるか。
「ロクでも無い。最初は太っていたから声を掛けてくるプレイヤーなんていなかったけど。ダイエットと連動してこのアバターが細くなったらなったで見た目が「普通」だもんな。そんなの気にしたりなんかしないよね。しょうがないよ。」
一匹狼、そんな表現をするとかっこよさげに聞こえるが、所詮ボッチである。
「すいません、報酬ください。」
ギルドに到着して受付に慣れた感じで今回の報酬を求める。するといつもとは違う会話を返された。
「ここ最近何故かゴブリンの数が急増してきていまして。大丈夫でしたか?」
「ああ、問題無い。それで、次の仕事もゴブリン狩りを頼みたいんだけど。」
「あの、私の話聞いてましたよね?」
受付とのやり取りを半ば無視して手続きををして貰う。
(コレはイベントが枝分かれしたのか?次の戦闘は一筋縄じゃ行かないのかな?)
どうにもこのゴブリン討伐を繰り返し続けると、何やらこうした別のイベントへと派生するのかも知れない。
「まあまだ確定とも言えないし、行ってみない事には始まらないか。・・・よっし!」
そんな気合と共に自分の頬を叩くとパンパンと綺麗な音を立てた。
そのまま森へ、とはいかずに師匠の所に行って受付に言われた話の内容に何か分かる事が無いかを聞きに行った。
老子などと言われているのだ街の人々に師匠は。なのでこうした事にも何かしらの情報を持っているかもしれないと思ったのだ。
そして師匠の家に到着してその話を振ってみたら。
「ふむ?ゴブリンの数が増えとると?・・・ちょっと待っとれ。」
険しい顔をして奥の部屋へと師匠は消えてしまった。




