何で僕だけ「この先を見据える」
ゴブリンの知能は低く設定されていると言っていい。僕はそれに助けられている。
「・・・九体はもの凄く簡単にいったな。罠に嵌めまくるだけで良いとか。ヌルゲー?」
戦い方を少しだけ変えた。先ずは最初に魔法で戦闘不能を狙う数を減らした。腕や肩などをある程度怪我をさせる程度に。
その後は怒り狂って走って来るゴブリンたちを罠へと誘導、そしてソレで死ねば良し。死なず足止めでもまだいい。
怪我をさせられたらそれもソレ。取り敢えずゴブリンと一対一、或いは最低でも二対一の状況にしてなるべく勢いと速度を落とさずにササッと連続して片付ける事を意識して臨んだ。
こうしてゴブリンを操る様にして「九体」へと挑んでみたらコレがなかなかにスムーズに終わる。
ゴブリンに「自分たちがまだ有利」と思わせるのがコツみたいで、こいつらは数が自分たちの方が多い事を根拠に次々に僕へと攻撃を仕掛けてくるのだ。
そして連携など取れていないから簡単で。僕の上がった攻撃力に一撃で沈んでいく。
手早くこれらを片付けると次々に数は少なくなっていく。これに逃げ出そうと言った行動を起こしそうなものだが、それをゴブリンは怪我させられた怒りで忘れてしまっているのか、こちらに背を向けたりもせずに突貫して来る。
ソレを捌いて行くだけで僕は「九体」をクリアできてしまった。
「だけどこの戦法も十体迄なら良いけど・・・ソレを越え始めると恐らく上手く行かなくなってくるだろうな。」
幾ら今の状態でゴブリンを相手にしても楽勝ではあると言っても、この先は「数の暴力」が立ちはだかる。
数が増えてくればその「制御」を少しでも外せばたちまちのウチに僕はゴブリンに嬲り殺される事になるだろう。ハードモードだ。
囲まれない様に立ち回り、その立ち回りにはありとあらゆる手を使わざるを得ない。単純に力技だけで勝てる様なステータスでは無いのだ、今の自分は。
「必殺技が必要か。でも、このレベルで覚えられるモノはハッキリって無いんだよなぁ。」
しかもそもそも無職の僕に覚えられる戦闘系の必殺スキルはあるのかというのが先ず疑わねばならない所だった。
戦士系のジョブなら「3」或いは「4」で一つ覚える。結構早いタイミングだ。魔法使いも同じくらいである。
しかし今の僕はジョブが「無職」であり、生産職ですらない。そこでスキル、しかも戦闘系のモノを覚えられるかが心配であり、そしてそもそも今の僕はレベルが上がり難いと言う点がある。
ここで心配していても何ら解決の糸口は見えないので僕は街へと帰還する事にした。既にこれで最低ラインの十体は超えている。
まだ余裕はあるのだが、帰還して報酬を貰ってからまた戦略を練り直した方が良いと判断した。
「師匠は30までは今の僕でもイケるとか言ったけど。結構これ最後の方には死線を潜る事になるよね??コレ?」
僕はこのゴブリン討伐の目標を師匠の言う「30」に定めた。ならば痛みも覚悟、キルされてリスポーンも覚悟で挑まねばならないだろう。
「武器、飛び道具だな。弓矢の出番かな。罠のバリエーションも増やさないと。罠の数も増やして。そうなると準備だけでも時間が掛かるなぁ。ほんと、僕何やってんだろ?」
未だにゴブリン以外では狼を一体のみ。平原で戦う事ができる初心者向け魔物の「一本角ウサギ」すらもまだこの目にお目に掛かっていない。
「大器晩成型、そう思って無いとやってられないけど、さて、僕はいつになったらこの街から自由に他に移動できる許可を貰えるのかなあ。」
ぼやきつつも街へと戻って来た僕はギルドに行って報酬を得る。その後はあの武器屋に顏を出して弓と矢を買わせてもらった。
その際には矢の数を二十本ほどオマケで追加してくれたのが有難い。これも客の僕を引き留め続けるための涙ぐましい経営努力だと思うと何だかこちらも頑張ってもっと金を稼いでこの店で買い物せねばと思える。
「よし、それじゃあお昼を食べたらもう一度挑戦かな。」
その後はログアウトして宅配の昼飯を食べて「一日十分ダイエット」を熟した。




