何で僕だけ「あらゆる手を使おう」
罠を張っておき、そこへと誘導してハメる。僕は罠でゴブリンの数を減らす戦法を取って「八体」を乗り越えた。
「いやー、流石にきついぞ?それでも罠を使う分、魔力消費は抑える事ができるから良いとして。」
武器屋で僕はスコップ、いや、シャベルか?コレを買っていた。呼び名はどちらでも良いのだが、何で武器屋にソレがあったのかは分からない。
普通なら道具屋に在る筈のものだと思うのだが。しかしこれ、使い勝手が良い。
頑丈で、耐久力もあり、そして振るえば鈍器、或いは剣としても使えてしまう。おかしい、実に、おかしい。
「僕は師匠から使い方なんて教わって無いんだけどねー。」
実を言うと、ショートソードを手放してしまったのだ、残り二体と言う所で。
ソレは本当に偶然と言えるのだが、地面の微かな窪みに足を引っかけて転びそうになり、その際に持っていた武器が木に当たってそのまま弾かれてしまって落としてしまった。
情けない限りだが、そんな突然の事で少々パニックになり、腰に備えていたナイフを使わずにインベントリからスコップを取り出して構えてしまったのだ。
これには僕も「あ」と短く漏らしてしまったのだが、しょうがないと思い、そのままスコップで戦闘を継続してしまった。
何せナイフとは違ってリーチがある。そして土を掘る部分は鉄製で鋭く、そのまま武器として使えてしまうからだ。ナイフではリーチが短いので安心感と言ったものが違う。
そしてソレは功を奏した。このゴブリン「八体」には短弓を持っていた個体が居て、この時に矢を射かけられていたのだ。
咄嗟にスコップを前に構えれば金属部分に矢は弾かれて事無きを得た。そう、盾としても使えると言う便利さがスコップにはあった。
でもこれ、すべてが一体化していると言って良い。なので防御をしていると武器として使えず、武器として使うと盾として使えないと言うデメリットがある。
「本当に緊急用だよな、コレは。」
そんな事を思いながら損耗確認をする。減っているのは自身の魔力だけ。このまま「九体」も今のステータスならイケると判断できる値は残っていた。
こうしてスコップの活躍で僕の「HP」は満タンなのだ。一撃も貰わずに無事「八体」をクリアしている。
「でも、罠をもう一度張り直ししないと駄目だよなー。」
バネの様に木の枝をしならせてぶつける罠もあれば、足を縛って釣り上げる罠も張っている。単純に足首の高さにロープを張ると言った子供だましの様なモノすら仕掛けてあったり。もちろん落とし穴も。
落とし穴を掘る際にはそこまで深い物にせずにゴブリンの足止めが少し長めにできる位に留めてある。1mくらいだろうか?
まあそれでも掘る時間はかなりかかるが、この森のフィールドを出なければリセットされないらしく再度使用が可能だった。
「いや、便利だけどね。それでもちょっとなー。もう少し罠数を増やさないと駄目か。あ、増やすだけじゃ駄目だな。戦略を練らないと・・・」
罠を警戒したゴブリンが僕を追ってこなくなる、或いは逃げ出すと言った事も考えられる。
そこら辺を解消するためにも他にも自分の手札を増やしてありとあらゆる方法を取らないと師匠からの「30体」はクリアできないだろう。
「あー、それにしても、次にどれだけ経験値必要なんだろ?多分もう他のプレイヤーなら「3」或いは「4」は軽く行ってる様に思うんだよなー。」
そう僕はぼやきつつも罠を張り直す手を休めない。次は「九体」のクリアを目指す。
レベルが「2」になった際のステータスの上り幅はかなりの物である。正直に言って真正面から戦っても「九体」はクリアできるだろうと言う見込みを僕は立てていたりする。
「それで死んだら元も子も無い。慎重に行くか。僕はどうせ出遅れだし。追いつけ無さそうだよな、最前線。・・・あ、今どんな状況なのか最近は掲示板とか見て調べて無いなぁ。」
今の僕はそもそも自分の事で精一杯だった。他人の動向をとやかく言う前に目の前の問題を一つずつクリアしていかねばならないのだ。
労力を他の事に割いている暇は無いし、エネルギーを他所に回している余裕は無かった。
その手間と労力を今はロープを編んで投網にしていく。地味に時間が掛かってしまった。
だがコレが掛かれば「九体」など一網打尽にできて時間節約にもなる。網を作り終えればメンテナンスはかなりかかるが、使い回しは可能だろう。ゴブリン狩りに大いに役に立つばかりか、この先も結構有用な道具として長く使えると見ている。結構な数の集団にも通用すると考える。
「よし、今回の報酬が出たらもう一つは道具屋に注文して作って貰った方が良いな。・・・製作費用と手間賃がどれくらいになるかで優先順位も変わるけど。」
準備が終わって僕は再び森を歩き始める。まだ昼には時間があるのでここでゴブリン「九体」を見つけて挑んでおきたかった。




