何で僕だけ「稼いだ金はすぐに消えていく」
以前よりも自由に動ける、そんな感覚があった。師匠との打ち合いはホンの30分程度であったが、もの凄く充実した時間だった。
何せ以前では一部の受けきれなかった師匠からの剣撃が受けきれるようになったからだ。とは言え、それもある程度師匠が手心を入れてくれていたからだと思うが。
それでもこの今の自分の強さが嬉しい。やっとこの世界で僕はマトモな戦いができる様になったと思えたから。
「で、師匠。僕は一人で今のままだと何体のゴブリンまで最大イケると思いますか?」
稽古が終わってから師匠に一言聞いてみた。今後の計画としてはゴブリン退治は行ける所まで行こうと考えていたのだ。
「ふむ?まあ力を出し切って、工夫を絞り出して、アリとあらゆる手を使って、まあ、三十が妥当な所じゃろ。それができればまたレベルが上がっておる頃か。せいぜい励めよ。」
どうやら僕は全力で挑まねばならないらしい。三十体と言う数は本当に今の僕で倒せるのかと考えると、無理だと思えてしまうのだが。まあ頑張るしかないだろう。
「有難うございました。これ、大事にします。」
僕は師匠からもっらったペンダントを首から下げて一礼する。
この後はまだ時間もあったのでギルドへと向かって一度清算をする事にした。
この後は受け取った報酬で剣を一本買わないといけない。それとショートソードの点検も出さないとならなかった。
「一回戦闘を熟したらこうして武器屋に持って行ってメンテナンスをした方が良いのは分かってるけど、面倒だな。耐久値が大くて減りも少ない武器が手に入るまでの辛抱・・・結構かかるな?」
冒険者ギルドに到着後は受付での手続きをさっと済ませる。余り長居をするとまた絡まれるからだ、チンピラ共に。
運良く、と言って良いのかどうかは知らないが、以前に絡んできた冒険者との遭遇はしなかった。
もしかしたらこのまま関わらないで済ませられるかもしれない、そんな甘い考えを持ちつつも次は武器屋へ向かう。
そうして武器のメンテナンス、それと折れた剣の引き取りを頼むと店番のNPCは「少し時間を貰うよ」と言って奥のスタッフルームへと行ってしまった。
「店番誰もいなくなっちゃったじゃん?良いのか?コレ?」
ディスプレイしている武器を盗んで行く客がいるかもしれないと言うのに無防備過ぎる。そんな事を思った。
折れた剣はそこまでお金にはなりそうも無いので屑鉄としてタダで引き取って貰う。僕がそのまま持っていてもゴミだからだ。
その代わりと言っては何だが、ショートソードのメンテナンス代金は少し値引きして貰っていた。
「まだまだプレイヤーの出した武器屋には入れないよな。あっちはガンガン稼いでる奴らの御用達だ。」
僕の稼ぎは余りにも少ない、今の現状。ゴブリン退治の報酬はこうして直ぐに消えてしまい、手元にはなかなか残らない。
この後も道具屋で罠に使うための道具を揃えなければならないので、それを考えればスッカラカンである。
「あいよ。まだまだショートソードは長く使える。大事にしてくれよ?それとコレはオマケだ。ウチを御贔屓にして貰うためのな。」
店番は戻って来て武器を返してくれるのだが、そこに一本のナイフがオマケで付いて来た。
言葉通りに僕がこの店で常連になって貰うための先行投資だろう。
「今となっちゃウチに来るプレイヤーの客は少なくなっちまったからな。ぶっちゃけ、アンタくらいだ、ウチを利用してるのは。その内に別の店に行っちまうかもしれないがな。アンタ一人だけとは言え、客が来てくれなけりゃこっちも張り合いってもんが無くてよ。」
「ああ、かなり長くここは通わせて貰う事になると思う。ナイフ、有難う。遠慮無く貰っておくよ。そうだなぁ・・・浮いた金でコレを買って行かせて貰うよ。」
僕はソレを手に取ってカウンターに置く。
「おいおい、良いのか?と言うか、何でこんな物を買うのか分からねえが。まあ、いいさ。マイド!」
ショートソードはまだかなりの耐久値が残っているようだ。コレをメイン武器にしてナイフを補助、予備に回せば良いだろう。
本当はここで前回と同じ使い勝手の剣を買おうと思っていたが、それは中止だ。
それで浮いた金で必要な道具を買えば残りの資金はカツカツだ。道具屋に行ってこれまた必要な物を買えば終わりである。
こうして武器屋を後にして道具屋に次は寄り、必要な準備を整えたらギルドに戻って来る。
当然受けるのは同じ依頼「ゴブリン討伐」だ。




