何で僕だけ「ソレはもうのびのびと、高く」
街へと戻るまでの道のりで僕は何度も何度もステータスを見返す。どうしてもレベル「2」ではおかしいと言える数値になっていたのだ。
「本来だったらもっと低い数値だけどなぁ。コレが師匠の言っていた例のアレなのかぁ。」
そう、異常なのだ。その数値の上り幅が。例を挙げるなら本来だと恐らくは戦士系ジョブであればレベルが「1」上がれば、パワーが平均で「10」程度上がるくらいだ。ちょっと偏りがあっても「12」が限度だろう。低くても「8」だろうか?
でも僕のステータスの上りが今回「30」を越えていた。コレは確かにレベルMAXまでこのまま行けば周りのプレイヤーのステータスと比べて頭2つ以上抜きん出る事になるだろう。
「・・・喜ぶべき部分だな、コレは。だけど、この事は黙っていないといけないな。そうじゃ無いと・・・」
僕のこの状態を知った他のプレイヤーが僕に群がって来る事、間違い無しだ。最悪ステータス偽装のアクセサリーをゲットしなくちゃいけなくなる。
そうでなければこの事を知ったプレイヤーたちが「チート」などと言って誹謗中傷をぶつけてくるのが目に見えている。
嫉妬、逆恨みを持って近づいて来るプレイヤーがきっと出て来る事だろう。もしくは僕の事を悪意を持ってして利用しようとする者も出て来るだろう。
「師匠に相談しないと駄目だなぁ。また師匠にどやされないか?」
どんよりした気分で僕は街に到着後に早速師匠を訊ねた。2回連続でこうして相談しに行くのは何だか情けないと感じるのだが、それでも背に腹は代えられない。
今の僕が信頼できる存在は師匠しかいないのだ。冒険者ギルドには相談なんてできない。どうせギルドだとこの情報が洩れるのが目に見えている。
「師匠、またもや相談したい事ができました。話を聞いてください。」
「来ると思っておったわ。入れ。」
そう言われ家の中へと入るとお茶を師匠手ずから出された。僕はゆっくりとそれを深呼吸してから飲み干す。
そうして心を落ち着かせてから話を切り出した。
レベルが上がった事。余りにも大きな数値の上り幅で戸惑いを覚えている事。この事でトラブルを招かない様にステータスを隠すアクセサリーが欲しい事も伝える。
すると師匠が小さな棚から何かを取り出して僕へと渡してきた。それは。
「お前の欲しいと口にした物だ。受け取れ。それはワシからお前への卒業品だ。もうワシには必要無いからのう。遠慮無く受け取れ。」
「有難うございます。って言うか、こんなにすんなりと欲しいアイテムが得られるとは思って無かったんですけど?」
僕は師匠からそう言ったステータス隠蔽のアイテムを作成するための素材のヒントくらいは貰え無いかと思っての相談だったのだが。予定が良い方向に外れた。
コレは嬉しい誤算だった。だったのだが。
「で、戦闘内容はどうだったんじゃ。まさか詰まらん終わり方をしておらんじゃろうな?」
こんな部分に勘が鋭くなくても良いのでは?と思うのだが、コレはゲームだった。データ上のモノであるのだ。
僕の戦闘結果が反映されてこのようにNPCに喋らせるセリフが決定していてもおかしくない。
「えーっと?その?上手く行きましたよ?ソレはもうすんなりと、ええ。」
ここでしどろもどろになってしまってはいけないと思って平静を装ってそう僕は返事をしたのだが、駄目だった。
「嘘をついているのが見え見えじゃ。庭に出ろ。その温い性根をもう一度叩き直してやるわい。」
師匠の鋭い眼光から逃げられずに僕は項垂れながら言われた通りに庭に出る。
しかし今のステータスの動きを確認するいい機会でもあるので思考を直ぐに切り替えた。
ステータスはパワー以外の他のステータスの伸びも異常だ。これらの数値でいきなり戦闘に入った場合に以前の感覚と懸け離れてしまっているはずだ。
そうなれば失敗を繰り返す事になる。上手く自分の思い通りに動けずにもしかすれば自殺してしまう様な行動を起こしかねない。
一回レベルが上がるごとにステータスの上り幅を逐一確認して師匠にこうして手合わせして貰うのが一番安全で確実だろう。
こうして僕は師匠と打ち合い稽古を始めるのだった。




